壇ノ浦、夜〜花組東京宝塚劇場公演『蒼月抄−平家終焉の契り−』番外編[宝塚]
 2月下旬、所用で久しぶりに九州に行く機会があり、その際、何度も訪れている門司港に一泊した。夫と夜の門司港の街を散歩していて、ふと気づいたら和布刈神社の近くの関門トンネル人道の入り口まで来ていた。本当に偶然なのだが、同じ日の日中に弟が研修旅行で門司港を訪れ、そのトンネルも渡ったと聞いたので、姉弟で時間差で渡ってみるのもおもしろいと思い、海底を780メートル歩いて下関側へ。
 途中に県境もある長いトンネルを抜けると壇ノ浦であった(←もちろん川端康成『雪国』冒頭のもじり)。
 知らなかった。門司港レトロクルーズで関門海峡をめぐるとき、船の上から壇ノ浦があのあたりというのは教えてもらえるのだけれども、トンネルが壇ノ浦の下を通っているとは。昨年になってやっと父の出身地である山口県に対するわだかまりを払拭できたところで(http://daisy.stablo.jp/article/519579712.html?1780129284)、それまで関門トンネルを渡りたいという気持ちにまったくならなかったというのもある。
 そのあたり一帯は公園になっていて、古戦場跡には源義経と平知盛の像が立っていた。安徳帝御入水之処碑もある。そして、幕末の下関戦争の際の長州藩の砲台跡でもあるということで、長州砲のレプリカも5台置かれていた。長崎を訪れた際、原爆投下地であり、鎖国時代に海外へと開いた扉だった出島があり、日本の歴史の最重要事項が凝縮して存在する街であると感じたのだけれども、関門海峡あたりも、壇ノ浦の戦いがあり、下関戦争があり、宮本武蔵と佐々木小次郎が戦った巌流島があり、興味深い地であると感じた。
 月夜だった。かつて多くの人々の命を飲み込んでいった海、波、その暗さを見ていて、……そう言えば、一週間ほど前に、宝塚大劇場で平知盛が主人公の花組公演『蒼月抄−平家終焉の契り−』が始まったんだった……と気づいた。地霊に呼ばれた気がした。公演を観た今となっては、尚更。