花組東京宝塚劇場公演『蒼月抄−平家終焉の契り−』『EL DESEO』その2[宝塚]
 大河ドラマ『光る君へ』と月組『桜嵐記』の影響が感じられる『蒼月抄』。5月9日に観劇した際、主人公平知盛(永久輝せあ)から生き残って平家の物語を語り継ぐことを託された知盛妻明子役の星空美咲の演技を興味深く感じた。行軍していく戦士たち。自決に向かう女たち(<和布刈神社>の場面)。――何だか、壮絶な戦いの果てに散っていくこの物語に、また異なる戦いの物語が重なって見えるようだった。『桜嵐記』も、コロナ禍で公演日程が変更されて大千秋楽が2021年8月15日(終戦記念日)となり、楠木正成の遺児、楠木正行を主人公とする物語に異なる角度から焦点が当たったことを思い出した(<8月15日の『桜嵐記』>http://daisy.stablo.jp/article/485005312.html?1780144158)。明子の父、藤原忠雅役の紫門ゆりやは、立身出世のため娘明子を平家に差し出し、その平家の衰退を見て娘を取り返そうとする姿に、打算と親心とを品よくにじませる演技がいい。平教経役の極美慎の演技の勢いと説得力。知盛の息子平知章役の美空真瑠、熱演。
 『EL DESEO』は中詰あたりで若干勢いが失われるように感じられるが、永久輝が男役陣を率いて踊りまくるフィナーレ等、非常に見応えがある。ANJU振付場面での永久輝のスーツ姿にはストイシズムがあるのだが、孤高に虚空を漂う風ではない。それは、星空とのトップコンビの関係性あってのことなのかもしれないとも感じた。聖乃あすかがもっと個性を解き放ってはじける姿を観たい。