先日の観劇があまりに楽しかったので、愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』を二度目の観劇、ラストでは夫と共に稲穂を振ってきました(13時、赤坂ACTシアター)。好きなシーンはいっぱいありますが、一番心ときめくのはやはり、長年引きこもりニートだった主人公(山本耕史)が恋を知り、自分を変えようとし――それが、恋が人にもたらす一番の効用である――、ちょっと「SEIMEI」の羽生結弦を思わせる衣装を着て、白馬(人間二人による)に乗って己の内の“魔物”と対峙しに行こうとする「キラキラ武士」のキラッキラの場面――一体全体どうしてそんな展開になるのかは、赤坂ACTシアター&オリックス劇場でお確かめを(作品について詳しくは後日必ず書きます)。ハイテンションのカンパニーによる大盛り上がりの舞台に大興奮、そして、山本耕史のキレッキレの芸と美により心の中の男性美の基準がますます高くなった状態で、フィギュアスケート観戦。以下、放映順。

 ミハル・ブレジナ。クイーンの「リヴ・フォーエヴァー」の音楽を体現しようという気持ちが伝わってきて、よかった。

 田中刑事。
 すべてをさらけ出した、強い男がそこにいた。
 確固たる思い。稲妻に貫かれるような気持ちで、その様を見ていた――めちゃめちゃかっこよかった! フリーも思いっきりはじけちゃって!!!(昨晩、あひるの頭の中で突然、「ウィリアム・テル序曲」が高らかに鳴り出して、しばし止まず)

 マッテオ・リッツォ。
 「ヴォラーレ」のしっとりピアノ・アレンジに乗って、心に染み入るような演技を披露。コーヒーにクリームを注いで、カップの中で漆黒と白とが静かに交じり合っていく様を見守るような、そんな余韻を残して。

 オレクシイ・ビチェンコ。ベテランらしい味わい深い演技。スピンの音の取り方が◎。ステップにも引き込まれた。

 羽生結弦。
 リンクで無事な姿を観られて、まずはホッ。――ああ、この世にこんなに美しいものがあるんだ――と、しみじみ思える瞬間もあり、重ねてホッ。今日の演技、私は好きかも。率直で。人と素直に向き合おうとしていて。何より、スケートを愛していて。その気持ちがあれば、いつか自然と世界は広がってゆくのでは? ちなみに、私自身が若き日、人とふれあって生きていくことの大切さを教えてもらったのは、橋本治の名著「恋愛論」。

 宇野昌磨。
 …たぎりすぎ。前半と後半とで気持ち相反〜。落ち着いて〜〜〜。――人の心を惑わすという、今宵の満月のせいか。しかし。これまでになかった、ゾクッとさせるような男っぽい表情が見られたことは、自信の表れとして◎。

ジェイソン・ブラウン。
完成された世界観。初めて、彼に男性としての魅力を感じた――これまではどちらかというと、キュートで親しみやすい印象だったので。
日本の社会のすべてがいいとは決して言いません。克服すべき問題も多い。けれども、ある面においては寛容なところもあり、自由で暮らしやすい部分もあると思っています。私の母国を愛してくれて、ありがとう。理想は、差別のない世界です。

 話を山本耕史に戻して。
 ただただ己を恃みに芸を磨き上げて、ここぞというときにその芸をカーンと発揮している姿が美しかった。彼が、舞台に立つことを愛していて、その場、そのとき、人生の時間を分かち合っている観客に、自分のすべてを見せたいと励む姿が美しかった。もちろん、フィギュアスケートは勝ち負けのある競技ではあるけれども、でも、その根本は、舞台と変わらないのでは?
 本日、東京では桜の開花宣言がありました。大好きな季節。美しい季節。スケーターの皆さん、関係者の皆さんも、日本の美しさを堪能していってください。
2019-03-21 23:36 この記事だけ表示
 放映順。

 ニコル・ショット。演技前半、羽ばたくような腕の動きが、白い衣装の裾と背中にあしらわれたフリルにマッチして。

 イベット・トース。半身に大胆な柄が施されたド派手衣装! 後半のアップテンポなところは観ていて気持ち良し。

 アレイン・チャートランド。ダイナミックで迫力あり。音の捉え方がツボ。

 エリスカ・ブレジノワ。大人の女性の情感あり。

 ガブリエル・デールマン。赤い花を一輪口にくわえて迫り来る様が見えるような、色っぽく情熱的なカルメン!

 イム・ウンス。裾に淡いブルーがあしらわれた白の衣装が、彼女の可憐さを引き立てて。スケールの大きさを感じさせる、引き込まれるような演技。

 マライア・ベル。雲一つない青空に一人颯爽と向かい、風に吹かれているような、そしてそのままどこまでも飛んでゆくような、そんな清々しさ、爽快感に、涙。スケート大好き! の気持ちが伝わって。日本に滑りに来てくれて、ありがとう!

 エリザベート・トゥルシンバエワ。正確無比。

 坂本花織。
高校卒業おめでとう! 一段とすっきりきれいな大人の女性に。メイク◎◎!
 自分でもよくわからない感情が心にあふれてきて、途中からもう、しゃくり上げて嗚咽。
 …何だか。18歳ごろの自分を思い出すと、…うわあああ〜〜〜と恥ずかしくなって、人生の先輩みたいにいろいろ書いていいのか、悩むくらいで…。坂本選手だけじゃなくて、選手みんな、本当に立派である。若くして、スケートに、自分に、きちんと向き合っている。47年生きてきたけれども、でもやはり、いつまで経っても、生きることに慣れることはないように思う。日々悩んだり、笑ったりの繰り返し。そんな私の目から見て、坂本花織が一歩一歩、いろいろな事柄をまっすぐ受け止めて生きて、その心模様を滑っていっているのが、とても魅力的に映る。

 宮原知子。
 思い切ってENJOY!!!

 エフゲニア・メドベージェワ。ミスはなかったけれども…。今の彼女のモチベーションや如何。

 紀平梨花。
 筋肉同様、心もいい感じにほぐせる術が見つかりますように! 緊張がほどけすぎない程度にくすっと笑えるジョークを思い出すようにするとか。
トリプルルッツもレイバックスピンも美しかった。せっかくの初めての世界選手権、楽しんでほしい。私の心の中では、美しいトリプルアクセルが見えています。

 アリーナ・ザギトワ。
 貴女の強靭な精神力に、限りない敬意をこめて。
 私は会場にはいません。テレビの前で観ています。そして、貴女のことを――貴女のことも、考えています(「Think of Me」!)。人の心は決して縛れません。自由です。人間はロボットではないのだから。私は、人間になろうとしている貴女の演技が好きになってきています。そして、心から、あらん限りの声援を送ります。すぐでなくてもいい。貴女に、私の言葉が伝わりますように。心の悲鳴を、叫びを、芸術家たちは、美へと昇華してきたのです。
2019-03-20 23:43 この記事だけ表示
 諸事情により予定を変更してお送りいたします。
 放映順。

 友野一希。曲は『リバーダンス』。
 …今夜、ミュージカル『キューティー・ブロンド』のゲネプロを観にシアタークリエに行っていた(その開始時間が押しましたばい)。劇中、『リバーダンス』のパロディのダンスを、樹里咲穂が中心となって踊る場面があった――パロディが成立するほど、有名ということである。おかしかった。涙が出るほど笑った。――そのとき、友野一希のことも、考えていた。
 …最近、スケートを楽しめているのかなと、フリーの演技を観てもそのことがとても気になる。私は、友野一希が氷上に描き出す世界が好きである。それは、彼にしか可能とはならない世界である。あせらず、待っている。スピンは美しさが増したと思う。

 田中刑事。
 4回転サルコーがきれいに決まった! ふわっと腕を動かすときの浮遊感も爽快。スケートを心から楽しんでいるから、観ているこちらも楽しい。
 考えてみたら、ウィリアム・テルも、息子の頭の上においた林檎を矢で撃ち抜いたとき、まったく怖くなかったと言ったら嘘になるんじゃないかなと…。英雄だって、人間なのだからして。でも、「自分は、できる」と思って、その通り実行した。氷上での存在感が増した結果、何だかとてもゴージャスなスケーターなんだな…と思わせる田中刑事の姿に、そんなことをふと思った。

 宇野昌磨。演技に入る前の、目の異様な鋭さ。
 ――そして彼は、自分が生涯をかけてきたスケートに、一つの明確な答えを出した。その答えを、私はとても美しい、と思った――。
 私も、観ること、書くことが、生きることです。そして、言葉とフィギュアスケートを通じて、宇野昌磨という人と出逢えたことを、人生の幸せに思います。
 月光は、地上の風景、人々を、あまねく照らす。その月光を映す人の心が、静かだったり、激しく揺れ動いたり、変わるだけである。その様はまるで、たゆたう水面にも似て――。宇野昌磨が滑るベートーヴェンの『月光』に、私が聴いたヴィジョン。
 表彰台の一番高いところで『君が代』を歌っている、その世にも真剣な表情にも、惚れ直しました! 最近男前度めきめきアップ。そして。「無理せずに無理する」と言っている人に敢えて、何度でも。
 無理禁物!

 キーガン・メッシングは、楽しいときはもっと楽しいのだけど…。ジャンプのキレ優先だったのかしらん。

 明日じゃなくて今日は頑張って起きてエキシビション!&『いだてん』〜。『いだてん』観ない日曜は何だか歯を磨かないで寝るみたいで気持ち悪いのですが、今宵のあひる(&夫)は限界なり〜。
2019-02-11 01:14 この記事だけ表示
 放映順に。

 三原舞依。
 微笑みながら舞う彼女は、光に照らし出されたようで、それはキラキラしていた…。しなやかな強さ。
 最近になって、彼女が昨年、「ヘアドネーション」をしていたのを知った――小児がん等、病気で頭髪の悩みを抱える人たちが着けるウィッグのために、自分の毛髪を寄付する行為である――彼女自身、病気との闘いを知る人である。愛を発揮できる、優しい心の持ち主。
 ――私もときどき、愛を吸われるばっかりなんじゃあ…と、愕然として疲れ果てるときがある――世界がときに、吸血鬼のように愛を吸ってやまない場所に思えることもある。けれども。愛はいつか、必ず廻り回って自分のところに戻ってくる。それが、自分が思い望むような形で帰ってくるかはわからない。でも、戻ってくる。長年生きてきたからこそ、そう思う。
 そのためにも。Enjoy your life!

 紀平梨花。
 トリプルアクセルがぴしっと決まると、気持ちいい!
 昨年から、彼女のことを考えていて、こんな歌を思い出していた。

「People, you can never change the way they feel
 Better let them do just what they will, for they will
 If you let them steal your heart from you

 人がどう感じるか、変えることは決してできない
 やりたいようにやらせておくしかない、隙あらば
 心だって盗み出しかねないけれどもね」 George Michael “Kissing A Fool”

 一昨年のクリスマス、53歳の若さで亡くなったジョージ・マイケル。この曲を収めたアルバム『Faith』を発表したのは24歳のときで、有名人として長年、どんな心の葛藤を抱えていたのだろう…と思うと、今の方がこの曲に込められた思いがわかる気がする――。
 さて。人生、生きてみなきゃわかりません。ある程度は決められていて、でも、ある時点から先はその人の生き方によってどんどん変わっていく、運命とはそんなもののように私には思います。それから、自由とは、常に闘いによって勝ち取っていくものです。大変です。私も最近、人生の大先輩――30歳年上――に訊いたばかりです。「年を重ねると、どんどん自由になれるの?」と。そしたら先輩は肩を叩いて笑って言った。「もう怖いものがないんだよ!」――無論、すべての人が言えることではない。その人が自由であろうと闘い続けているから、自由。私自身が大切にしているのは、常に自分がしていることを好きでいること。好きがすり減ってきたように感じるときは、疲れているだけだから、休む。
 私だってわからないことばかりです。一緒に答えを見つけていきましょう。

 坂本花織。
 …ま、そういうときもあらあね。でも、自分を一番信じられるのは、自分自身だから。
 人生、生きてみなきゃわかりません――重ね重ねになるけれども。私には、初めから全部わかっている筋書きを、天が人間にやらせているようには到底思えないので。

 明日は夜に観劇が入ったので(先週自分で書いたスケジュール守れず〜)、男子は11日にゆっくり観ます! わくわく。
2019-02-10 01:29 この記事だけ表示
 印象に残った演技を放映順に。

 友野一希。たゆたうような、スピン時の手の動き。波のように、寄せては返す、想い。――追憶。少しあせりがあったようにも。落ち着いて〜(と言う自分も落ち着くようにします)。

 田中刑事。魂のステップ・シークエンス! 気持ちがめちゃめちゃ攻めているのが伝わってくる。ねっちり糸を引くような動きが、音楽とマッチ。リンク上でのどっしりとした存在感も自己ベスト更新。かっこいいぞ〜!

 宇野昌磨。決して万全の調子ではない中で、後半にかけてどんどん音と一つになっていく、その心意気に惚れました! きーんと後頭部を引っ張られているみたいな高揚感。
 ただし。無理禁物!

 ヴィンセント・ゾウのジャンプはすごかった。

 マライア・ベル。スピードに伸び伸びと乗って、拓かれていくような演技がよかった。

 紀平梨花。月の光の移ろいを思わせるような、滑らかな滑りが◎。

 坂本花織。すらっとした姿が、リンクにますます映えて。
 スピードがある。なのに、そのことだけをクローズアップさせて感じさせないのは、演技のすべてが、そのスピードも含め、一体として流れを創り出しているからだと思う。ジャンプもスピンも、その、流れるような様が美しくて、「ほわっ」とか「はうっ」といった、言葉にならない擬音を発していた。力の入れ方、抜き方が観ていて実に気持ちいい。

 三原舞依。
 Enjoy!
2019-02-08 23:59 この記事だけ表示
 ちょっと時間が経ってしまいましたが、やっと落ち着いて観られました。

 川畑和愛。演技に流れがあり、音楽の高まりと共に、観ているこちらも気持ちが高まって。

 壺井達也。雄大な世界が広がってゆく演技。美しいスピンが、釣り竿のリールを思わせる。その回転に、心ががーっと巻き込まれ、巻き取られてゆくような。

 島田高志郎。曲は「ADIOS」。「あばよ!」的な、シャープな腕の動き。

 横井ゆは菜。すべてを捧げて、しっとり、大きな世界を表現しようとする意志を感じさせて。

 友野一希。この日はちゃんと演技を楽しんで滑っているのが感じられて、安心した。

 三原舞依。
 大人の女性同士、強く、たくましく、2019年も共に頑張っていきましょう!

 宮原知子。曲は「キュリオス」。『キュリオス』のマジカルに楽しい舞台が眼前に浮かぶような、コケティッシュで楽しい演技。
 アンコールは「小雀に捧げる歌」。――誓い。昇華された気持ちは、美!

 田中刑事。「ジョジョの奇妙な冒険」。彼の演技に、“ジョジョ立ち”を学ぶあひる。リーゼントもばっちり決まり、長い手が氷上に映える。ノリノリの演技が、水を得た魚のよう。
 アンコールは「ウィリアム・テル序曲」。ステップで見せる浮遊感に、高揚。――年末年始、考えていたのだけれども、スイスを独立に導いた伝説の英雄を描いたロッシーニのこの曲は、今の彼にぴったりではないかと。己が為すべきことを知った人間は、内なる光で美しく照らされる。今の田中刑事は、その覚醒の光で輝いている。

 紀平梨花。
 私は、彼女の美しいスケートが、大好きである。
 アンコールの「A Beautiful Storm」は、世界を清めんと舞う巫女を思わせて。

 高橋大輔。
 …彼がどうして、気配になったり、空気になったり、空間を歪ませたりするのか、この日の演技でちょっとわかりかけてきたような。
 世界の誰でもない、自分自身と、自分のスケートを強く信じて!
 アンコールの「マンボ」は大変楽しく。

 坂本花織。演技を観るたび、氷上の彼女はますます大きく見えるようになってゆく。風格。音楽と共に弾む、その心。アンコールは「ピアノ・レッスン」。――私の目に映っているのは、海辺の孤独な少女なのか、その少女が見ている鳥なのか、それとも、その少女の心の風景なのか――。そう思ったら、やっぱりまた泣いていた。

 それにしても、「全日本選手権2018」、楽しかったな…。日本全国から集ったフィギュアスケーターたちが、どんな思いでリンクに立っているのか、一人一人の、その熱い心にふれられて。12月17日の時点で年内締切原稿が7本あって、あひるピンチ! と内心かなりあせっていたのだけれども、何とか大晦日まで突っ走ることができ。2019年もどんな演技に出逢えるのか、楽しみ!
2019-01-14 23:25 この記事だけ表示
 …うん、自分でも思うときがある。例えば。この年の瀬の押しつまった今、クリスマス・イヴだというのに、締切も迫っているのに、自分は何をやっているのかと。
 あんまり先を深く考えてはいなかったです。走り続けて、気がついたら、こんなことになっていた。「そういう人だよね」と、夫に言われた。「突撃、驀進していくのが、あひる」と。暴走機関車か、オレは。
 私はどうも、まっすぐ以外に、人との向き合い方を知らない。人間関係も、本音でつきあうか、つきあわないか、自分でもものすごく極端だと思う。おかしいのかもしれない。でも、そうやって生きてきてしまったので。
 …“変節”に見えるのかもしれない。途中で姿勢が変わったと。でも、その上では、貴方の存在も大きい気がする。別に、人のせいにしようとしているわけでは決してないのですが。最初は、美に取り組んでいる人が一人しかいないような気がした。…その当時の自分には、その一人しかわからなかった。けれども、どんどん突き進んでいったら、次々と人が加わってきて、もう、全員一緒でということの方がむしろ素敵だなと、そう感じた次第。それに、だんだんと隠された部分も見えてきたことだし――何も最初から、これはこうなっていくなとすべて見通した上で取り組むわけじゃなし。
 …アホですか、の件。思うに、それこそが、美の入り口なのではないかと。生の根源だから。私だって、どうしていつも同じようなことが起こるのか、と思う。同じ失敗ばかり繰り返していると言われたことも、何も今夜が初めてではない。でも。相手が違えば同じ失敗ではないし、そもそもそれが本当に失敗なのかどうかもわからないし、万が一失敗だったとしても、そこから学べばそれでいいと思っているので。今夜起きたことも、きっと大きな何かへとつながっていくことなのでしょう。
 無理禁物! 今夜の宇野昌磨もかっこよかった! 立ち向かって、闘った! 王者!

 全日本選手権についてはこれにて終了!
2018-12-24 22:59 この記事だけ表示
 笹原景一郎。じわじわ、感涙。とてもよかった。一つ一つのエレメンツに、どれだけ莫大な時間と労力がかけられているんだろう…と、見入らずにはいられなかった…。つらいことも多かっただろうと思う。でも、リンクにいる彼からは、楽しかった! という幸せな思いばかりが伝わってくるのだった。これからは一緒に応援しましょう!

 小林健斗。頭の上から透明な糸でぴんとつられているような、端正さ。

 山田耕新。激しく手を震わせる最初の振りから“山田耕新劇場”をエンジョイ。コミカルな振りも交え、彼だけの確固とした世界がある。社会に出て、社会を知って、その上で表現できるスケートを見られるすばらしさ。

 三宅星南。曲は『レ・ミゼラブル』。「オン・マイ・オウン」では胸締め付けられ、「民衆の歌」では、観ているこちらもどんどんたぎって来て…。大いに見どころあり。

 鈴木潤。ビートルズ・メドレー。…北海道の大地、大空の下にたたずむ一人の男。飄々と…。けれども、曲が「Let It Be」に変わったあたりで、…やせ我慢をして、何食わぬ顔で口笛を吹くその姿が見えて、ぶわあっと涙が出そうに…。スケート文化をますます根付かせていきましょう! 髪型は要検討。

 佐藤洸彬。…こんなに硬派な叫びを秘めたフィギュアスケートを、初めて観た。突き抜けるように壮大な、強固な世界観を、リンクに描き出した。すごいものを観た。しびれた! (内容的には、平昌五輪の羽生結弦のフリースケーティングの演技に近いものがある) ――“亡命”していく、一人の人間。亡命は通常、不自由な国から、自由な国へとなされるものである。貴方のような力強い仲間を待っていました! 共に闘っていきましょう。

 日野龍樹。“私をみんなが見るの”の『ラ・ボエーム』の「ムゼッタ・ワルツ」に乗せて、「見よ!」との堂々たる演技。いざとならば潔く散らんとの、武士のような覚悟を秘めた、美しい心の人。壮絶な生き様を見せる姿に、美男ぶりが際立って。

 山本草太。ブレない上半身が美しい。…スケートを手放してたまるか! と、何度も、何度も強く伝わってきた…。生きていてよかった…と。そんな姿を観られて、こちらも生きていてよかった。涙。人間、ときには泣きたい夜もある。でも、励まし合って、前向きに生きていける。今日の貴方の演技に、励まされました!

 壷井達也。やはり落ち着いて安定感がある中に、この夜はわくわくする気持ちも伝わってきた。完成されたものを感じさせるけれども、まだ16歳、個性を見つけて、どんどんはじけていけ〜!

 友野一希。リンクに躍動する魂を、茫然と観ていた…。何度でも這い上がって来るとの、不屈の魂。まだまだ遠く、高くに行けるこのプログラム、ぜひ来年へと練り上げていってほしい。

 田中刑事。
 …貴方と、私の思いは同じです! 今年の秋に、気づいた。そのために神様に遣わされたんだろうな…と。それまで、自分でもわからなかった。やり始めてみないとわからないこともある。今夜、貴方の滑りを観ている時間は、とても楽しかった。幸せな時間をありがとう。温和で優しい人だから、その心にときに大きな負荷がかかっているのも、今夜、非常によくわかった。けれどもやはり、貴方のような大きな心の持ち主が、美のために踏ん張るべきときもあるんじゃないかと…。そう、今夜のように! 応援は惜しみませぬ。

 鍵山優真。ジャンプに見惚れる。そして、氷に吸い付くようなスケーティング。キラキラした姿、その躍動感に、未来を感じてわくわくする!

 中村優。ショートも途中までよかったのですが。物語を自分の中で構築し、それを滑る力がある。なかなか素敵なロミオ。

 島田高志郎。曲は「アンダルシアの冬」。シニアに果敢に挑んでいった17歳。――情熱。心に咲いた小さな花を、慈しみ、いとおしむような。
2018-12-24 22:46 この記事だけ表示
 …なぜだろう。最近、坂本花織の演技を観ていると、冒頭から涙がじわっとあふれてくる。そして、自分が彼女と同じ年齢だったときのことを強く思い出す。私、あのころ、何を考えていたのかな…と。
 ずっと気になる存在だった。周りがときとしてこんなに「女」を競い合う競技なのに、天衣無縫と言おうか、無邪気と言おうか…。だから、「化粧!」とお節介も言った。私は宝塚歌劇を見慣れているので、“男役/娘役”という一つの判断基準が自分の中にあるのを否定し得ないのだけれども、それで言うと、坂本花織は性格的に男役トップスター向きの人だということなんだろうな…と、最近になって気づいた。男役トップスターは、一つの組を背負う。組子全員の思いを背負って、舞台に立つ。
 …そして、この夜の坂本花織は、大きなものを背負って立った。滑るうちに、決意を新たにした。包容力を感じた。年下の彼女に、深い敬意の念を感じた。気づいたら嗚咽していた。ずっと、ずっと。
 そうして滑って、坂本花織は、全日本選手権を制した。
 王者にふさわしい滑りだったと、私は思う。
2018-12-24 21:39 この記事だけ表示
 中塩美悠。浮かべ続けた晴れやかな笑顔が実に印象的。…スケートへの思いがあったから続けて来られた! 感謝しかない! と圧巻のラスト。

 十倉日和。彼女のことは、ショートのときから気になっていて、どう書こうか悩んでいた。ぽっちゃり体型である。どうしてもそこに目が行ってしまう。けれども。高いジャンプはド迫力、技術もある。性格もチャーミングな感じ。今後、さらなる個性が見られるのか、気になる存在。

 本田真凛。…ずっと涙を浮かべて観ていた。流れるような滑り。大輪の花が氷上に咲いたような瞬間のあるスピン。スケートと、ひいては自分と向き合う姿勢が真摯なものへとますます変わってきた。18歳、今いろいろなことに気づけてよかった! 未来は明るい。

 竹野比奈。後半、音楽に乗っていて、気持ちが非常に入っていた。ショートのときからちょっと気になっていたのは、もう少しメリハリがつくといいかなと。動きに流れがあるのと、流れていってしまうのとでは異なる。この動作は前の動作からの続きなのか、それともここから次へと続いて行くのか、若干?となるところがあり。

 本郷理華。見えない糸が全編にわたってぴんとはりめぐらされているような、気迫みなぎるプログラム。見入ってしまった。とてもよかった!

 大庭雅。魂の入り込みを感じたショートに続き、腕を柔らかく使えているのが◎。ところどころムラはあったものの、観ているこちらに音楽が伝わってくる演技だった。

 長縄和奏。ジャンプ高い! キレがある。「オペラ座の怪人」で、前半、手で仮面をつける振りは、やるならもっと明確に見せていった方が◎。15歳ながら実に堂々としていて、今後が気になる。

 細田采花。トリプルアクセル2本、きれいに決まった! ジャンプがこれだけ飛べて、後は伸びしろしかない。遅咲きスケーター、いいじゃない! 人生設計等いろいろあるだろうから、無責任に続けて! とは言えない。でも、やっぱり、世界でトリプルアクセルを跳ぶ姿が観たい。

 白岩優奈。音楽の変化も明確に表現されていて、緩急ついた演技が◎。

 青木祐奈。スケートに流れがあり、その中にジャンプが組み込まれていた。

 山下真瑚。女性ヴォーカルの『蝶々夫人』の歌声の広がりと共に、観ているこちらの心もふわっと広がっていく、そんな演技。とりわけ後半、ドラマティックでダイナミック。音楽が気持ちよく心に入ってくる。
 彼女については以前、「音になる」と書いた。この表現につき、もっと掘り下げていくべきだと、その演技に教えられる思い。おそらく、私がその音楽を感じるのと、演者がその音楽を感じて表現しているのと、シンクロ率が高いときにそのように感じるのだと思うのだけれども、そのメカニズムを自分でももっと探求していきたい。

 川畑和愛。後半ちょっと疲れてしまったけれども、長い手足を活かした大きな演技が氷上に実に映える。

 横井ゆは菜。音楽を感じようという強い思いと、芸を伸ばそうという貪欲さがうかがえる演技。

 紀平梨花。この日は、彼女本来の美しいスケート(グランプリファイナルのフリーについては、「心がストーム」と書こうかと一瞬思った)。
 美は心から生まれる。すばらしい才能をもっているのだから、その心を安定させないと! 揺れるのはわかる。繊細だから。繊細だからこそ美も表現できるわけで。でも、まずは心の安定。
 演じる場でのやつあたりは本当にお勧めしません。芸が崩れる。そして、その立て直しに時間がかかる。それは、その場が、そうすべき場ではないからなのだろうと思う。私は、職業柄、芸をしていない人には怒る。そして、芸をするんだったら、じゃあ…と、怒りはすぐに消える。しかし。神様に別のお考えがある場合――美は本来、神様に捧げるものとして始まったところもあるわけで――、何が起こるか私にもわからない。

 樋口新葉。フリーじゃなくてショートだったんじゃ…というくらい、あっという間の演技。ひりひりとしたヴィヴァルディの音楽とあいまって、すさまじい緊迫感。シャープに、タイトに、引き締まった演技。貴女は、いろいろ鋭い。これから未来に向けて、大人の女性同士、深い対話をしていきたい。祈、怪我完治〜!

 三原舞依。テーマは“天使”。――ときに、空に舞い上がっていくような演技。
 天使もいろいろあると思う。失敗もするだろう。悪魔と闘わなくてはいけないし、そのためにも強くなくてはならない。例えば、宝塚歌劇のモットー「清く正しく美しく」は揶揄されがちだけれども、しかし、それは、決して「清く正しく美しく」あるばかりではない世界で敢えての「清く正しく美しく」だと私は思うものである。
 この日、演技のラストで彼女が至った境地は、トップ選手でもなかなか到達し得ない次元だと思う。スケートの天使!

 宮原知子。途中でじわっと涙がこみあげた。タンゴと共に解き放たれていく心。超絶美のスピン。彼女は自分で答えを出しつつある。それを一緒に見届けに行く。
2018-12-24 21:37 この記事だけ表示