多くの少女たち(今は大人になった少女たちも含む)を支え、励ます少女漫画ってすごいな、そしてそんな少女漫画を具現化してしまう宝塚歌劇ってすごいな……と。先日観劇したときより深まっていて、2幕はそれぞれの登場人物のせつなさに胸が締めつけられてかなりずっと涙。笑ったり泣いたり、観ていても感情がジェットコースターみたいになる作品、ケンカ・シーン&コメディ演技も多い、道明寺司役の暁千星(クライマックスすごかった)&牧野つくし役の詩ちづる(飛び蹴り、心に効く!)の星組トップコンビをはじめ、演じる側は大変そうな。快演怪演の嵐で、星組生&専科生たちの個性、キラキラ輝いて。宝塚全体大いに盛り上がっている中、今一度、宝塚歌劇の強みをじっくり考えてみたいと感じていたところ、さまざまな示唆をもらえた舞台でした。花沢類役の天飛華音の演技を観ていて漫画版を最後まで読み通してから書きたいなと途中で方針転換したので(&原稿の山)、気長にお待ちください。
 胸キュンと笑撃の波状攻撃〜! 少女漫画のキャラクターが三次元になってそこにいるのを観る不思議。
 15時半から星組御園座公演『花より男子II』ライブ配信観ます。さきほど出張から帰京、サッカー・ワールドカップ「日本対スウェーデン」は東北新幹線の中で途切れ途切れにしか観られていません(隣の席の人も観ていました)。
 『三国志演義』をベースにした『RYOFU』(作・演出/栗田優香)。月組生たちの熱演と中華ムードを楽しむ。主人公呂布役鳳月杏の大きく堂々たる武将姿。雪蓮役天紫珠李のきりっとしたいじらしさ。董卓役風間柚乃の重厚感ある悪役演技。李粛役礼華はるの狂信的な忠臣ぶり。呂布の母役の桃歌雪の歌唱が印象的。ショー『水晶宮殿(クリスタルパレス)』(作・演出/齋藤吉正)は、キラキラ、ポップな作品世界を楽しんで演じている感のある鳳月の軽やかなキュートさ&コミカルさが堪能でき、天紫のほっこりとしたかわいらしさも引き出されて、流れるような展開で体感時間5分くらいの感覚。デビル・フリーザー役風間の豊かな歌声が響き渡る心地よさ。礼華の男役としての成長の目覚ましさ。<第4楽章 恋のデリバリー・ロード>の場面は、阪神タイガースのオフィシャル・グッズ「トラのてカチューシャ」(購入検討中)を装着して混ざって踊りたい! と思うわちゃわちゃ楽しかわいい場面。中詰の一乃凜、桃歌の歌唱◎。そしてクイーン・クリスタル役梨花ますみの麗しのラスボス感。鳳月の正統派黒燕尾服姿に花組での経験が生かされていると感じた。大階段の傾斜を違えての背景的使用もおもしろい。色とりどりの電飾キラキラの下、ゴージャス大羽根を背負って立つ鳳月を真ん中に月組生が並ぶラストは、「宝塚、観た〜!!!」という満足感いっぱいに。
 大河ドラマ『光る君へ』と月組『桜嵐記』の影響が感じられる『蒼月抄』。5月9日に観劇した際、主人公平知盛(永久輝せあ)から生き残って平家の物語を語り継ぐことを託された知盛妻明子役の星空美咲の演技を興味深く感じた。行軍していく戦士たち。自決に向かう女たち(<和布刈神社>の場面)。――何だか、壮絶な戦いの果てに散っていくこの物語に、また異なる戦いの物語が重なって見えるようだった。『桜嵐記』も、コロナ禍で公演日程が変更されて大千秋楽が2021年8月15日(終戦記念日)となり、楠木正成の遺児、楠木正行を主人公とする物語に異なる角度から焦点が当たったことを思い出した(<8月15日の『桜嵐記』>http://daisy.stablo.jp/article/485005312.html?1780144158)。明子の父、藤原忠雅役の紫門ゆりやは、立身出世のため娘明子を平家に差し出し、その平家の衰退を見て娘を取り返そうとする姿に、打算と親心とを品よくにじませる演技がいい。平教経役の極美慎の演技の勢いと説得力。知盛の息子平知章役の美空真瑠、熱演。
 『EL DESEO』は中詰あたりで若干勢いが失われるように感じられるが、永久輝が男役陣を率いて踊りまくるフィナーレ等、非常に見応えがある。ANJU振付場面での永久輝のスーツ姿にはストイシズムがあるのだが、孤高に虚空を漂う風ではない。それは、星空とのトップコンビの関係性あってのことなのかもしれないとも感じた。聖乃あすかがもっと個性を解き放ってはじける姿を観たい。
 2月下旬、所用で久しぶりに九州に行く機会があり、その際、何度も訪れている門司港に一泊した。夫と夜の門司港の街を散歩していて、ふと気づいたら和布刈神社の近くの関門トンネル人道の入り口まで来ていた。本当に偶然なのだが、同じ日の日中に弟が研修旅行で門司港を訪れ、そのトンネルも渡ったと聞いたので、姉弟で時間差で渡ってみるのもおもしろいと思い、海底を780メートル歩いて下関側へ。
 途中に県境もある長いトンネルを抜けると壇ノ浦であった(←もちろん川端康成『雪国』冒頭のもじり)。
 知らなかった。門司港レトロクルーズで関門海峡をめぐるとき、船の上から壇ノ浦があのあたりというのは教えてもらえるのだけれども、トンネルが壇ノ浦の下を通っているとは。昨年になってやっと父の出身地である山口県に対するわだかまりを払拭できたところで(http://daisy.stablo.jp/article/519579712.html?1780129284)、それまで関門トンネルを渡りたいという気持ちにまったくならなかったというのもある。
 そのあたり一帯は公園になっていて、古戦場跡には源義経と平知盛の像が立っていた。安徳帝御入水之処碑もある。そして、幕末の下関戦争の際の長州藩の砲台跡でもあるということで、長州砲のレプリカも5台置かれていた。長崎を訪れた際、原爆投下地であり、鎖国時代に海外へと開いた扉だった出島があり、日本の歴史の最重要事項が凝縮して存在する街であると感じたのだけれども、関門海峡あたりも、壇ノ浦の戦いがあり、下関戦争があり、宮本武蔵と佐々木小次郎が戦った巌流島があり、興味深い地であると感じた。
 月夜だった。かつて多くの人々の命を飲み込んでいった海、波、その暗さを見ていて、……そう言えば、一週間ほど前に、宝塚大劇場で平知盛が主人公の花組公演『蒼月抄−平家終焉の契り−』が始まったんだった……と気づいた。地霊に呼ばれた気がした。公演を観た今となっては、尚更。
 『蒼月抄−平家終焉の契り−』、とてもよかった! 物語の時代時代における受容の変化について、示唆に富む舞台だった。『EL DESEO』の着地点もとても大人っぽかった!
 ときにぴよ? となったり、そこはもう少し掘り下げてほしいな……と思うところなきにしもあらずなれど、そんな作品世界の混沌を一身に受け止め、最終的には宝塚作品の主人公らしく“愛”の力で押し切ったサルバドール・ダリ役の瀬央ゆりあの男役としての包容力が光った。優しさあり、弱さもあり、そしてダリ髭&エキセントリックにファッショナブルな衣装が似合う。その妻クイーン・ガラ役の輝月ゆうまは、男役らしく凄んでみせたりする一方でキュートな一面を見せるところもあり、高音も歌い切って、もっと女性役、そして女優姿を観てみたいと思わせる演技だった。ときに対立あれど、二人が演じる夫婦の関係性にほっこりとしたかわいらしさがあるのが、ファンタジックな作品として後味のよさを感じさせて。ダリの愛人アマンダ・リアとヤング・ガラの二役を演じた星沢ありさもまっすぐな演技で今後が楽しみ。かなりひねった設定の作品に雪組生たちが挑む姿◎。ちなみに、ルネ・マグリットと同じベルギーのポール・デルヴォーも、絵の中に入って遊べるから好きなのですが、あるとき横浜美術館でデルヴォーの「階段」の中にひとしきり入った後、隣にあったダリの「ヘレナ・ルビンシュタインのための装飾壁画 幻想的風景」三連作にも入ってみよう! と試みたところ、自分がドリルになってキュインと地を掘り進んでいくみたいな気持ちになったので(デルヴォーの絵には普通に入って歩いたりできる)、……ダリってやっぱり変、と思った記憶あり。
 西香はちの同名漫画が原作(脚本・演出/小柳奈穂子、演出/雑賀ヒカル)。
 物語の舞台は昭和11年〜12年(1936年〜1937年)ごろ、雪組トップスター朝美絢演じる主人公は帝国海軍中尉。劇中の人々がこの先どういう運命を辿ることになるのか考えながら観ていると、胸が痛い。そして展開される、骨太な反戦劇――当時の流行歌や軍歌がふんだんに流れる構成で、その歌と踊りの場面が明るければ明るいほど、そして人々が日々の幸せを追求しようとする姿が描かれれば描かれるほど、何かを声高に謳うことなしに、反戦劇としての凄みが増していく。最終的に朝美が体現した男のやせ我慢の深みと重み――日々の幸せを胸に、その幸せを何とか守らんがために、戦い、命を落としていった数多の人々の思いを背負うような――に胸を衝かれた。男役朝美絢の代表作である。
 主人公の帝国海軍中尉江端瀧昌役の朝美絢の演技の深さに序盤から涙がこぼれていたのですが、新婚旅行の場面でのソロ歌唱で盛大に涙を流していたら隣で観ている夫(このあたりの歴史に詳しい)も泣いていた……。ラブコメ部分はもちろん楽しく。