…何としてでもいい作品にしたい! との、舞空瞳の舞台人としての胆力に感服した。炎のようなその気迫に、観ているこちらも焼き尽くされるようで、…ライブ配信視聴後、床に崩れ落ちてしばし泥のように眠り。
 敵国の将軍ラダメス(礼真琴)への愛。祖国エチオピアへの愛。父王アモナスロ(輝咲玲央)への娘としての愛。さまざまな愛ゆえの葛藤に我が身を引き裂かれ、しかしながら、「♪戦いは新たな戦いを生むだけ」との信念を固く胸に宿し、最終的には女性としてラダメスへの愛に殉じる舞空のアイーダ――そのけなげな一途さ、気高さ。獄中のラダメスのもとへとやってくる姿はまさに一条の光だった。
 そんな舞空アイーダを、悠真倫のファラオ、白妙なつのファトマ、天寿光希のネセルがバックアップ。そして、アモナスロ役の輝咲玲央がとてもいい――『柳生忍法帖』のエロ殿様役ですっかり演技開眼した感あり。アモナスロと言えば、初演からこの役を演じてきた一樹千尋の狂気を大いにはらんだ怪演が記憶にあまりにあざやかなところ。しかしながら輝咲は、渋みと風格を感じさせるヒゲ面で、狂気と不気味さを異なるベクトルで成立させ、権力欲に取りつかれた人間の哀しさをニヒルに描き出してみせた。焦土の祖国で本当の狂気を見せる際の人間存在へのシニカルな視線も圧巻。…こんなにいい役者だったのか…と心打たれる好演で、今後の活躍も楽しみである。エチオピアの女たちの奮闘も心に残る。
 ラダメス役の礼真琴も、二幕に入ってからの歌声には説得力あり。名曲『月の満ちるころ』での舞空アイーダとのデュエットは、二人ならではの思いがすっと重なって。獄中での二人の歌唱もよかった。フィナーレでは、娘役を引き連れて踊る舞空の艶やかさが光った。そしてデュエット・ダンス、リフトする礼へと飛び乗る舞空の華麗なジャンプと美しいポジション、GOE満点。
 明日の千秋楽はみんなENJOY!
2022-02-26 23:59 この記事だけ表示
 ヴェルディのオペラ『アイーダ』が原作。今の世界情勢をも胸に留めつつ、「♪戦いは新たな戦いを生むだけ」と絶唱するアイーダ役舞空瞳の痛切な心情に感涙――神々しさを感じた。
2022-02-26 17:17 この記事だけ表示
 星組御園座公演『王家に捧ぐ歌』ライブ配信観ます。
2022-02-26 15:03 この記事だけ表示
 『元禄バロックロック』、夫と泣き笑いしながら視聴!
2022-02-06 15:07 この記事だけ表示
 東京宝塚劇場の本公演は観ることができなかったが、昨年12月13日の宝塚大劇場公演千秋楽ライブ配信、そして今年1月3日にNHK BSプレミアムで放送された『The Fascination!』(12月の宝塚大劇場公演の収録)は観ることができた。
 “忠臣蔵ファンタジー”なる角書の『元禄バロックロック』(作・演出:谷貴矢)は、我々が知るところの江戸とは異なり、鎖国をせず独自発展を遂げた国際都市エドを舞台に展開される作品。『忠臣蔵』の物語に、ウィリアム・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』や『十二夜』、井上ひさしの『ムサシ』等のエッセンスが取り入れられている。いきなり種明かしをするけれども、この物語において、赤穂浪士による仇討ちは果たされない。討ち入りの途中で、天正遣欧少年使節を彷彿とさせる姿の少年将軍ツナヨシ(娘役の音くり寿が怪演)によって、赤穂方とコウズケノスケ(水美舞斗)は和解させられ、ラストでいきなり登場するタクミノカミそっくりのその弟(聖乃あすかが、“思念体”として舞台に登場してナレーター的役割を果たすタクミノカミと二役で演じる)を中心とした赤穂藩の再興が認められることとなる。作中、…お侍さんたち、復讐するんじゃなかったのか…という町人のツッコミに対し、「もしかしたら、そうなる筋もあったかもね。でもあたしはこの結末も好きだよ」なるセリフまでちゃんと用意されている。巧みなのは、これは“ファンタジー”であり、我々が知るところの江戸とは異なるエドで展開される物語であるという設定がなされているところである。そのような設定をした上で、『忠臣蔵』について改めて考えてみようとの試み。谷貴矢、チャレンジャーである。そして、花組新トップコンビ柚香光と星風まどかが演じるのは、赤穂藩の時計職人クロノスケと、コウズケノスケの隠し子キラで、『ロミオとジュリエット』の如く敵同士で恋に落ちる。キーアイテムとなっているのが、赤穂藩主にして天才科学者でもあったタクミノカミが研究を重ねて設計図を残した、時を巻き戻せる時計。この時計を使い、同じ一年を何度も何度もやり直して、討ち入りして果てるクロノスケの運命を変えようとあがくキラ――最終的には、その運命は、時計の力なしに変わるわけだが。ぶっ飛んでいて、けれども宝塚らしい華やかさもあり。タイトルの『元禄バロックロック』からして“クロック”の語が入っており、口で何度も転がしてみると響きが楽しく。谷貴矢の今後の奇想天外に期待。
 『The Fascination!』(作・演出:中村一徳)は花組誕生100周年を記念したショーで、花組が過去に上演した名作群へのオマージュ・シーンも。2月7日付で専科に異動する高翔みずきをはじめ、美風舞良、和海しょう、羽立光来といった歌える面々が銀橋を渡っての歌唱の場面を与えられていたのが聴き応えあり。柚香光と星風まどか、踊れるトップコンビのデュエット・ダンスは共に薄い緑色の衣装で、星風のドレスの裾のフリルがリフトの際にも非常に綺麗に映えて。そして、二人とも、花組カラーのピンクがよく似合う。コンビのこれからが大いに楽しみである。
 トップ娘役としてのキャリアも豊富な星風が組替えしてきたことによって娘役陣が一層活性化した感があり、『元禄バロックロック』ではクラノスケ(永久輝せあ)の妻リクを終始仏頂面で演じた華雅りりかも強い印象を残した。そして、芝居、ショー共、星空美咲の活躍が光った。

 鞠花ゆめは、まだまだ花組の舞台で活躍を見せてくれる人だと思っていただけに、退団が本当に残念である。『元禄バロックロック』で演じる町人のアヤメは、先に引用したセリフも含め、作者の思いがかなりストレートに託されていると感じられる言葉を話す役どころで、艶やかな魅力を見せていた。時を巻き戻せる時計の力の描写として、クロノスケがスリを捕まえるシーンがたびたび登場するのだが、このときいつもスラレている女性、その名もスラレを演じたのが真鳳つぐみ。『The Fascination!』では柚香と水美のダンスに歌唱で花を添えた。最近、男役としていい仕事をしているなと思うことの多かった優波慧も退団である。『元禄バロックロック』ではヨシヤス役で落ち着いた演技を見せた。
2022-02-06 00:16 この記事だけ表示
 楽しさが加速していく感のあるショー! ジャズのスタンダード・ナンバーで綴る中詰が見応えあり。作・演出の三木章雄の月組でのヒット作『ジャズマニア』を思い出していたら、その主題歌も飛び出したのでした。
2022-01-31 23:42 この記事だけ表示
 月組のカラフルな個性はじける作品で、月城かなと&海乃美月の月組新トップコンビ、華麗にお披露目! 二人がしっとり紡ぎ上げる物語の結末が、いろいろな意味で胸に痛い…。さまざまな映画&宝塚作品のパロディが大変楽しく。鳳月杏扮する二枚目映画スターが撮影中の映画のミュージカル・シーンに大爆笑。
2022-01-31 14:46 この記事だけ表示
 月組宝塚大劇場公演『今夜、ロマンス劇場で』『FULL SWING!』千秋楽ライブ配信観ます。観終わってしみじみ泣いてしまった『鎌倉殿の13人』についてはちょっと寝かせます。
2022-01-30 23:33 この記事だけ表示
 ウィリアム・シェイクスピアの『から騒ぎ』を原作に、舞台を1950年代のアメリカのハイスクールに置き換えて描く1985年月組初演作品は、ロック・サウンド&50年代ファッションが楽しい青春物語。主人公ビリーを演じるのは、これが宝塚バウホール公演初主演の縣千。若手中心のメンバーが、シェイクスピアの世界に果敢に挑戦。
 誠実で温かみのある芝居を見せる縣。第二幕での、マーガレット役の妃華ゆきのとのポンポンとはずむ掛け合いが、シェイクスピアらしい台詞の応酬になっていた。オープニングからいかにも高校生らしいキュートさが光っていた妃華は、このシーンでコメディエンヌぶりを大いに発揮してみせた。シンディー役の夢白あやは張り切りぶりは大いに伝わってきたが、雪組育ちの縣もほんわかした男役であることだし、芝居やドレスさばきに、愛すみれや妃華が見せているような雪組娘役らしいふんわり感が欲しいところ。
 校長先生役の奏乃はるとの超越したおとぼけぶりに、何だか、『ロッキー・ホラー・ショー』のナレーターを連想し。袖からくるくる回転しながら登場し、客席&ライブ配信視聴者にツッコミを入れた愛すみれも、自分の世界に入りすぎの先生をほっこりとした風情で見せ、芸人ぶりでも魅了。ロッキー役の眞ノ宮るいの受け芝居も良し。ロバート役の彩海せらも誠実な芝居で、歌の高音がキュートなメアリー役の音彩唯とのカップルもかわいらしい。そして、ミリー役の華純沙那のしっとりした芝居がとてもいい。
 フィナーレの黒燕尾服シーンで、赤いバラをもって登場した縣。入団7年目にしてすでに男役として魅せる黒燕尾の踊りを展開できることが素晴らしい。そして、バックの男役陣も見事揃っていた! 若手の頑張りに、今後の雪組公演が大いに楽しみに。
2022-01-26 23:48 この記事だけ表示
 フィナーレの黒燕尾シーン、すごかった!
2022-01-25 23:54 この記事だけ表示