ウィリアム・シェイクスピアの『から騒ぎ』を原作に、舞台を1950年代のアメリカのハイスクールに置き換えて描く1985年月組初演作品は、ロック・サウンド&50年代ファッションが楽しい青春物語。主人公ビリーを演じるのは、これが宝塚バウホール公演初主演の縣千。若手中心のメンバーが、シェイクスピアの世界に果敢に挑戦。
 誠実で温かみのある芝居を見せる縣。第二幕での、マーガレット役の妃華ゆきのとのポンポンとはずむ掛け合いが、シェイクスピアらしい台詞の応酬になっていた。オープニングからいかにも高校生らしいキュートさが光っていた妃華は、このシーンでコメディエンヌぶりを大いに発揮してみせた。シンディー役の夢白あやは張り切りぶりは大いに伝わってきたが、雪組育ちの縣もほんわかした男役であることだし、芝居やドレスさばきに、愛すみれや妃華が見せているような雪組娘役らしいふんわり感が欲しいところ。
 校長先生役の奏乃はるとの超越したおとぼけぶりに、何だか、『ロッキー・ホラー・ショー』のナレーターを連想し。袖からくるくる回転しながら登場し、客席&ライブ配信視聴者にツッコミを入れた愛すみれも、自分の世界に入りすぎの先生をほっこりとした風情で見せ、芸人ぶりでも魅了。ロッキー役の眞ノ宮るいの受け芝居も良し。ロバート役の彩海せらも誠実な芝居で、歌の高音がキュートなメアリー役の音彩唯とのカップルもかわいらしい。そして、ミリー役の華純沙那のしっとりした芝居がとてもいい。
 フィナーレの黒燕尾服シーンで、赤いバラをもって登場した縣。入団7年目にしてすでに男役として魅せる黒燕尾の踊りを展開できることが素晴らしい。そして、バックの男役陣も見事揃っていた! 若手の頑張りに、今後の雪組公演が大いに楽しみに。
2022-01-26 23:48 この記事だけ表示
 フィナーレの黒燕尾シーン、すごかった!
2022-01-25 23:54 この記事だけ表示
 ノリノリのオープニングに手拍子〜。娘役たちの50年代ファッションがかわいい。先生役の愛すみれに爆笑。
2022-01-25 15:47 この記事だけ表示
 雪組宝塚バウホール公演『Sweet Little Rock ’n’ Roll』千秋楽ライブ配信観ます。
2022-01-25 14:21 この記事だけ表示
 見応えのある作品が多く、戯曲が掲載されている雑誌「ル・サンク」を購入することの多かった2021年の宝塚歌劇。ベストは、上田久美子作・演出の月組『桜嵐記』。上田は二作続けてトップスターの退団作を担当したが、雪組『f f f−フォルティッシッシモ−〜歓喜に歌え!〜』も優れた作品だった。ショー・ジャンルのベストは、野口幸作が作・演出を担当した宙組『Délicieux!−甘美なる巴里−』。この作品でパリのスイーツをモチーフにしたスイートにかわいらしい衣装の数々を手がけた加藤真美は、続いての雪組『CITY HUNTER−盗まれたXYZ−』では80年代ファッションを今のセンスで見事舞台衣装に落とし込む手腕を発揮、スタッフ賞を贈りたい。
 2021年新人賞は二人。まずは、宙組トップ娘役に就任した潤花――雪組時代、『ハリウッド・ゴシップ』(2019)のヒロインを演じて胆力を見せたときから、授賞は時間の問題だと思っていた。声に魅力があり、大人っぽい芝居のできる人である。そして、きわめて素の女に近いギリギリのところで娘役を成立させている。…そこまでやって大丈夫なのか〜?! とドキドキするときもあるのだけれども、でも、芸の力でやはり娘役として見せているところは見事という他なく、そのドキドキのスリルが観る楽しみをさらに高めている。そして、前へ前へとひるまずぐいぐい攻めてくるその姿勢が、組に大いに活気をもたらしている――もちろん、そのすべてをドーンと受け止めている宙組トップスター真風涼帆の度量あってのことなのだけれども。ちょっと今までに観たことのないタイプの娘役なので、どこをどう伸ばしていったら舞台人としてさらに上に行けるのか、これから発見していくのが非常に楽しみ。2022年も破壊力満点の舞台を!
 二人目は、雪組の縣千。『CITY HUNTER−盗まれたXYZ−』『Fire Fever!』での大活躍で若手エースとして大いにアピールしてみせた。新人公演世代ながら男のやせ我慢を体現できるところがいい。今年退団した専科の轟悠の代表作にして最後の大劇場主演作『凱旋門』(2018)で新人公演主演を務めた経験も、今後ますます生きてくるのだろうと思う。
 続々と魅力的なトップコンビが誕生した2021年のMVPは、相手役スライドを乗り越え、主演を務めたすべての作品で当たり役を連発した宙組トップスター真風涼帆!
 攻めている作品が続くな…と、その意欲的な姿勢につくづく感じ入ることの多い宝塚歌劇団が、2022年も日本中の観客を楽しませてくれることを確信して。月組博多座公演『川霧の橋』『Dream Chaser−新たな夢へ−』(配信)、宙組東京建物 Brillia HALL公演『プロミセス、プロミセス』、宙組全国ツアー公演『バロンの末裔』『アクアヴィーテ!!〜生命の水〜』(配信)については年明けゆっくり書きます。
2021-12-29 23:29 この記事だけ表示
 楠木正成の遺児、楠木正行を主人公に据えた『桜嵐記』――月組東京宝塚劇場公演の千秋楽は本来2月14日だったが、コロナ禍で公演日程の見直しがあったため、8月15日となった。その前夜、作品についての文章を書きながら、さまざまな読み取り方のできる深い物語であると感じていた。そのときは、この公演をもって退団する月組トップスター珠城りょうへの餞として、宝塚歌劇団とそこに生きる人々の闘いに焦点を絞って書いた。
 そして、8月15日の千秋楽。
 ライブ配信を夫と観ていて、…何だかどうも、空気が、物語が、違う…と二人して感じていた。自分の内からではない、外から来る何らかの力から、…今日の焦点は別のところにある…と、目線を強制的に合わされていくような。
 そして、暁千星演じる後村上天皇が登場した。南朝の行く手に先のないことを知りつつも、戦をやめられない後村上天皇。
――!!!
 焦点がぐわんとそこに合わされるのを感じた。
「…今日、終戦記念日だったよね…」
 隣で夫がつぶやいた。本当に申し訳ないことだが、珠城りょうの退団に対する思いとコロナ感染状況に対する大きな不安とで、日付の意味が頭の中からすっかり抜け落ちていた。8月15日――1945年、昭和天皇による玉音放送によって、日本の歴史上、大きな意味をもつこととなった日。そして、楠木正成といえば、明治以降、戦前・戦中の日本において、忠臣の鑑として崇められた人物である。
 2021年8月15日――後半生を鎮魂に捧げた人の魂を思った。
2021-12-29 23:25 この記事だけ表示
 山田風太郎といえば、まだ少女のころに読んだ、橋本治の手によるその追悼文が心に残っている。また、『戦中派不戦日記』を原作とする勝田文の漫画『風太郎不戦日記』が今年の夏まで「週刊モーニング」に連載されていたのを読んでいて、空襲の描写や彼の戦争観、死生観、そして戦争の中を生き抜く人々のありように心打たれるものがあった。その山田風太郎の代表作の一つ『柳生忍法帖』が、大野拓史の手により宝塚の舞台に登場。悪の限りを尽くす会津藩主加藤明成(輝咲玲央)と、その子飼いの家来「会津七本槍」に復讐を誓う、堀一族の女たち。あくまで女たちだけで復讐すべし…との千姫(白妙なつ)の命を受けた沢庵和尚(天寿光希)により、柳生十兵衛(礼真琴)が女たちの指南役を務めることとなる。明成は芦名銅伯(愛月ひかる)なる謎めいた人物に操られており、銅伯の娘ゆら(舞空瞳)を愛妾としていた。女たちの復讐や、成るか――。宝塚化にあたってエロ要素はかなり抑えられているとのことだが、それでも、操られているとはいえ明成のどうしようもない女好きが物語の発端となっているわけで、そんなエロ殿様を、シリアスとギャグのギリギリの線で宝塚の舞台に見事成立させた輝咲玲央の演技にまずは拍手を送りたい。そして、女たちの復讐をバックアップする千姫に扮した白妙なつの実に堂々かつ毅然とした演技が、演出家が物語に託した想いをきっちり引き出す。戦うのは女だけ、男は手出ししてはいけない、あくまで「先生」と呼ばれる指南役を務めるだけ――と来れば、これは、女性だけですべての役を演じる宝塚歌劇団の美における闘いに「先生」なる立場で参画する男性演出家が、主人公・柳生十兵衛に己の理想を重ねて観客に贈る、決意の弁とも言える。飄々と生きてきた十兵衛が、壮絶な決意を秘めた女たちに出逢い、彼女たちを鍛え、決死の闘いへと送り込む。音波みのり、紫月音寧、夢妃杏瑠、紫りら、音咲いつき、澪乃桜季、小桜ほのか、堀一族の女たちが、恐れを忘れて精鋭「会津七本槍」と対峙し、一人、また一人と倒していく様が観る者の心を激しく打つのは、――演出家がこれまでのキャリアにおいて向き合ってきたすべてのタカラジェンヌたちのヒリヒリするような真剣な眼差しと姿勢とが、そこに重ねて描かれているからなのだろうと想像する。そして私は、そんな女たちの闘いの様に涙を落としながら、山田風太郎が第二次世界大戦下、生と死の狭間の極限で感じたであろうヒリヒリするような想いをもどこか感じていたのだった。
 父銅伯の手先として生きてきたゆらは、これまでの人生で会ったことのないタイプの男性である十兵衛に想いを寄せ、彼をかばって命を落とす。ラスト、女たちの復讐は成り、一人旅に出る十兵衛。主題歌「覚悟」を歌いながら銀橋を渡る十兵衛のバックに、ゆらが浮かび上がる。十兵衛のセリフ。
「もう一人、俺だけが弔ってやれる女がいる」
 ――男は、女が旅に出るのではないかと思った。女は、男が旅に出るのではないかと思った。向き合う二人は、数多の愛眠る宝の塚を見つめている。女が男に抱く想い、それもまた愛と名付け得るものなのだと、私は思う。
 主人公・柳生十兵衛を演じる星組トップスター礼真琴は、宝塚の男役であることを楽しめるようになってきており、こうなってくると、歌と踊りの力が大いに生きてくる。大野&太田健の作詞作曲コンビによる主題歌を響かせる様が心地よい。妖術で人を操るゆらは、宝塚のヒロインとしてはなかなかに珍しい役どころだと思うが、娘役トップスター舞空瞳がさすがの芸の力できりっと造形、妖しい物語の宝塚化に大いに貢献した。己の内に芽生えた不思議な思い、これが、恋…? と気づいた後の心の揺らぎの表現もせつなく魅力的。復讐心に燃える堀一族の女たちの一人、お圭を演じる音波みのりは、宝塚の娘役ならではのかわいらしさを大いに発揮。戦闘シーンでの凛とした魅力も光る。堀主水役の美稀千種がきっちり脇を固め、沢庵和尚役の天寿光希に軽妙な味わい。吉田修理役の大輝真琴も重厚な演技を見せた。
 『モアー・ダンディズム!』の作・演出は岡田敬二。“ダンディズム”シリーズ第三弾で、過去作の人気場面も登場するのは懐かしくもちろんうれしいのだが、それと同時に他作品からの引用も多く、最近の岡田作品は何だか“岡田敬二名場面集”になっている印象が…。舞空がダンスで大活躍を見せる。謝珠栄の振付の新場面「ミッション」では、腕を美しく大きく遣って物語を表現する様が印象的。名場面「キャリオカ」では、裾に羽根のついたたっぷりとしたドレスの裾をさばく様があまりにかわいく美しく、布になって揺らされたいような不思議な願望すら芽生え。「キャリオカ」では、音波のドレスさばき、そして、クイックイッとわずかに動かす肩の動きの可憐さも見物である――少女のかわいさをぎゅっと凝縮したような。礼は歌唱が印象的で、とりわけ、「ハードボイルド」の場面で歌う名ナンバー「PARADISO」での男のやせ我慢が心にしみた。確かな力のあるトップコンビなので、共に高め合ってさらに上を目指していって欲しい。男役陣が男役を楽しめるようになり、娘役陣も前へと攻めてくる印象が深まって、星組の2022年は明るい。

 愛月ひかるの舞台で印象に残っているのは、はじけまくって楽しさを発揮した『TOP HAT』のアルベルト・べディーニ、そして、怪演を見せた『神々の土地』 のラスプーチン。退団公演においては、自身の持ち味についてどこか迷いながら舞台を務めているような印象を受けたのがもったいないな…と。とはいえ、男役の所作についてはさすが入団15年目と思わせるところがあり、彼女が星組で過ごした間に男役陣が多くのものを学んだと信じたい。『柳生忍法帖』の堀一族の女たちを演じ、けなげな闘いぶりで観客の涙を誘った紫月音寧と夢妃杏瑠、そして、「会津七本槍」の一人としてふてぶてしい敵役に徹した漣レイラも卒業である。漣は『モアー・ダンディズム!』でも星組男役としてはっちゃけた魅力を発揮していた。
2021-12-26 00:56 この記事だけ表示
 観終わった後、気づいた。文楽公演『仮名手本忠臣蔵』を観に行く明日12月14日がまさに討ち入りの日であることに。
 年明けの東京公演、楽しみにしています!
2021-12-13 23:39 この記事だけ表示
 『忠臣蔵』とシェイクスピアを足したみたいなスペース・コメディ・ファンタジーに、大笑いしたり、口あんぐりしたり、そして最後は、幸せになって泣いており。
2021-12-13 14:34 この記事だけ表示
 花組宝塚大劇場公演『元禄バロックロック』『The Fascination!』千秋楽ライブ配信観ます。
2021-12-12 23:29 この記事だけ表示