つかこうへいの『蒲田行進曲』を原作にした『銀ちゃんの恋』。宝塚では1996年に久世星佳主演で初演され、2008年と2010年には大空祐飛主演で再演。水美舞斗主演でのこのたびの上演は三度目となる。潤色・演出は石田昌也。3月に月組で上演された『幽霊刑事〜サヨナラする、その前に〜』でも、歌舞伎ネタや最近の宝塚ネタまで入れ込んだ軽妙な脚本・演出が冴え渡っていたが、今回の舞台もパロディ満載で笑いを誘う。
 スター俳優の銀ちゃん。その子分である大学出の大部屋俳優ヤス。そして、銀ちゃんの子を身ごもるも、ヤスに押し付けられる女優の小夏。三人が織り成す、愛と嫉妬と卑屈に彩られた奇妙なトライアングル。今回、改めて、初演当時の状況、そして、演出家がそのトライアングルに込めた想いに心を馳せ。
 ヒロイン小夏に扮した星空美咲の演技は、初代ヒロイン風花舞、二代目ヒロイン野々すみ花の影響下にあるが、その取り入れ方にセンスと芝居心を感じる。早口でのセリフの応酬でも演技のキャッチボールを心がけようとしているところが◎。入団三年目ながら、落ち目の女優の悲哀や、情感、昭和感を感じさせ、ヤスに対し包容力をも発揮してみせる瞬間があった。ヤスの母を演じて女の業のかわいさと母の愛の凄みを見せた京三紗とのやりとりも見応えあり。専科のベテランの演技に学んでさらに高みを目指したいとの姿勢が頼もしく、この人の芝居をもっと観てみたいと思わせる娘役である。カンパニー全体、今回の作品での経験を次の舞台での飛躍へとつなげていって欲しい。
2021-09-10 23:40 この記事だけ表示
 小夏役の星空美咲、奮闘中!
2021-09-10 14:29 この記事だけ表示
 花組梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演『銀ちゃんの恋』千秋楽ライブ配信観ます。出かける寸前のぎっくり腰で、KAAT神奈川芸術劇場公演は観られず…(幸い軽かったので数日で回復しましたが)。
2021-09-09 23:59 この記事だけ表示
 楽しすぎて…観終わった後、今、生きている現実とのギャップが激しすぎて…泣いてしまった。と同時に、これまでだってみんなで乗り越えてきたのだから、これからだってみんなで乗り越えられる…という希望の光も遠くに感じて。真風涼帆率いる宙組が与えてくれた恵みのような幸せな時間の余韻に、しばらく浸ります。
 新トップ娘役潤花に早くも女王感あり。もっと自分出してGO!
2021-08-25 23:35 この記事だけ表示
 よい楽でした。本日の『桜嵐記』は、終戦記念日にふさわしい、鎮魂の物語でした。――不思議な話である。本来の千秋楽は2月14日。コロナ禍で公演日程の見直しがなかったならば、この作品が8月15日に上演されることはなかったのだから。
 暁千星は今日の感覚を忘れぬよう。舞台人として、大きな一歩を踏み出した。
2021-08-15 23:14 この記事だけ表示
 …作品が、一段と深いところに行くのを観ていた。
 今日が「8月15日」であることを、しみじみかみしめていた。
2021-08-15 15:14 この記事だけ表示
 月組東京宝塚劇場公演千秋楽『桜嵐記』ライブ配信観ます!
2021-08-15 01:27 この記事だけ表示
 よく頑張った!
 その一言を、今は贈りたい。
 珠城りょうのトップ時代、月組には、『All for One』、『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−』、『BADDY−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』、そして『桜嵐記』と、バラエティに富んだ傑作が生まれた。一番心に残る代表作としては、サラリーマンの役どころをまっすぐな魅力で見せた『カンパニー』を挙げたい。「愛している」という代わりに、「月がきれいですね」と言う、日本の男。その無骨な魅力は、愛する女に甘い言葉を与えることのない男、愛を「愛」以外の言葉で表現する男、『桜嵐記』で演じた楠木正行にもつながって。
 『Dream Chaser』のラストで、珠城りょうは、飾りのない黒燕尾服姿で踊り続ける。男役陣を率いて。美園さくらとのデュエットダンス。次いで、月城かなとら、後を継ぐ者たちにエールを送るように踊り、そして、ソロ。その姿に、私は、元月組トップスター霧矢大夢の黒燕尾服の踊りをはっきりと思い出したのである。――継承されていた、と思った。継承されていく、と思った。そのことが、心からうれしかった。
 愛希れいか、美園さくら、二人の超個性的な娘役を相手にして、本当によく頑張った!
 宝塚大劇場の千秋楽のライブ配信を観て、…このまま退団してしまうのでは悲しい…
と思った。彼女が積み重ねてきたことを自分自身で信じられなくなっているのが淋しかった。しかし。珠城りょうは、宝塚への愛ゆえに、踏ん張った。『All for One』の戯曲を自分自身で読み解いたときのように、その愛は舞台であざやかにはじけた。だからこそ、座付き作家上田久美子が去り行く彼女に贈った『桜嵐記』は、傑作として人々の心に残り続ける。
 月組を守ってくれて、ありがとう。
 今日一日、そして人生の第二幕の幸せを、心から祈っています。
2021-08-15 01:27 この記事だけ表示
 …正直、もっと宝塚での舞台を観たかったなという気持ちと。外に出た方がさらに伸び伸び活躍できるかもしれないな…という気持ちと。美園さくら退団にあたっての今の心境は、アンビバレントである。
 3月に配信された美園さくらミュージック・サロン『FROM SAKURA』。構成・演出の齋藤吉正の猛アシストもあり、美園さくらはハイテンションに全開だった。彼女は、その存在に、いい意味での毒っぽさが感じられるところが個性であり、魅力である。その毒っぽさが婀娜っぽさにもつながる。そして、とんでもないパワーの持ち主である。『エリザベート』の「私だけに」を歌ったけれども、日本人ではあまり観たことのない、実にストロングなシシィ。相当強いトートとゾフィーでないと、対峙できまい。このミュージック・サロンには暁千星も出演、「私が踊る時」ではトートを歌っていたが、美園のやりたいようにやらせる男役としての包容力が光った。美園のフルパワーをどこまでも受け止めることに徹して、男役芸が伸びたとも言える。
 そのとき、美園さくらのパワーに、社会を変革しそうな、新しい未来を切り拓きそうな勢いを感じたのである。そのパワーで、頭の古い世代をねじ伏せて欲しい。…今の女性ってこんなことを考えてるんだ…と、衝撃を与えて欲しい。そんな新たな夢が生まれた。ただ。
 のっけから全開で来たら、衝撃受け止める前に、普通はビビっちゃうって! 相手との呼吸を忘れずに。まずは若干油断? させてから、徐々にパワーを上げて行った方が、毒っぽさ、婀娜っぽさもますます有効に発揮できるのではないか…などと、老婆心を発揮してみたりして。
 息の長い女優になれる人だと思う。宝塚を卒業しても、修行は続く。これからのいい女修行も観られることを願って。
 美園さくららしく、元気に卒業していって!
2021-08-15 01:26 この記事だけ表示
 配役を知らずに宝塚大劇場公演千秋楽『桜嵐記』のライブ配信を観ていて、一瞬、…演じているのは誰だろう…と思い、わかって驚いた。それくらい新境地を拓いたのが、高師直役の紫門ゆりや、そして後村上天皇役の暁千星である。この美しい作品における対立軸の一端として設定された高師直を演じる紫門は、目の吊り上がり様と言い、人の良さが薫るいつもの人相まで変わったかのようなヒールぶり。好色さをストレートに発する「裸身をさらしてみよ」のセリフは、何度聞いても心にズドン。その師直の手先となる公家の仲子に扮する白雪さち花の演技がまた、人のいやらしさを凝縮したかのようで…。白雪は3月のバウホール公演『幽霊刑事〜サヨナラする、その前に〜』では、酒で喉を焼いたようなおっさんの如き声でおばちゃんスリを快演、娘役のみならず男役も追求するかの勢い。
 後村上天皇役の暁千星には、…こういうしっとりした演技もできるようになったんだな…と。自らの選択を誤りと半ば知りつつも、亡き父、後醍醐天皇の言葉に縛られ続ける、そのせつなさ。彼の肩にもまた、桜の花がはかなく降りかかるかのよう。後醍醐天皇の亡霊に扮した一樹千尋のありようはもう、かつてこの世にあった人間を演じるというより、その人間が遺した呪縛、怨念そのものと化しているかのような凄まじさ。自分のために戦って死んだ者たちを次々と呼び、その者たちがまた倒れ死んでいく様に、慄然。
 月組トップスター珠城りょうが演じる主人公楠木正行が楠の若木を感じさせるならば、その父楠木正成を演じる輝月ゆうまには大樹の悠然さがある。三兄弟に大きな影響を与え、近隣に生きる人々に今も慕われ続ける正成。後醍醐天皇の亡霊が後世の人々の人生を縛るものならば、作中、人々の記憶の中に登場する正成は、後の世の人々が生きる上で良きよすがとなっている存在である。正行の討ち死にシーンで、花道に立ち、「楠木音頭」を一人アカペラで歌い出す。正成のその歌声が、正行の生き様、死に様を肯定し、包み込んでいく。
 正行の弟正儀を演じた月城かなとは、コミックリリーフ的意味合いをももつ役どころを演じて安定した舞台を披露。かっこよさとおかしさと、そして凄絶なせつなさとがないまぜになった、正行のもう一人の弟正時に扮した鳳月杏には、宝塚中を見渡してもこの人にしか出せない味わいの深さがしみじみ光る。
 南北朝の争いを、民衆の代表の一人として見守るジンベエ役の千海華蘭の軽妙さ。そして、光月るうと夏月都、月組組長&副組長が追憶の情をこめてしっとり演じる、老いた正儀と弁内侍。芝居の月組、ここにあり。

 『Dream Chaser』は月組らしいエネルギーがほとばしるショー。こちらの作品でも、暁の男役の美学を追求する姿勢が光る。スパニッシュの場面では、鳳月と火花を散らし、美園さくらをめぐって踊り、争う。男役としての見せ方に秀でた鳳月に対し、立ち向かっていく様に見応えあり。ミロンガの場面でもスーツ姿で魅せる。キュートなベイビーフェイスの持ち主が、濃厚な色気も手に入れたら鬼に金棒。
 次期トップスター月城かなとが若手6人を引き連れ、K-POP「I’ll be back」を歌い踊るシーンでは、それぞれが個性を発揮しようとしている様が感じられ、これからの月組男役陣の展開が非常に楽しみに。月城は次期トップ娘役海乃美月とすでに2作品で組んでいて、安定した舞台が期待できる。欲を言えば、二人とも、自分の芸を信じてもっともっとはじけて良し。

 組のバロメーター的存在として、月組の舞台をほっこり盛り上げてきた紫門ゆりや。大きな体躯で女役までキュートにこなしてきた輝月ゆうま。二人は今回の公演を最後に専科へと異動になる。芝居の月組のスピリットをぜひ広く伝えていって欲しい。
 『桜嵐記』で楠木家のゴッドマザー、正成の妻久子を演じた香咲蘭。後村上天皇の生母阿野廉子を演じた楓ゆき。この公演をもって宝塚を去り行く二人がそれぞれ発揮した気丈さに、月組娘役の心意気を見た。
2021-08-15 01:22 この記事だけ表示