藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
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宝塚
福岡サンパレスホテル&ホールにて観劇。
『花の業平〜忍ぶの乱れ〜』(作=柴田侑宏、演出=大野拓史)は、2001年に星組によって初演された作品の23年ぶりの再演。2001年と言えば、現在の東京宝塚劇場が竣工した年。同じ年、月組の真琴つばさ、星組の稔幸、二人のトップスターが東京宝塚劇場公演ではなく宝塚大劇場公演を最後に退団。その稔が退団公演の一つ前の宝塚大劇場公演で、そして稔の後任となった香寿たつきがトップお披露目の東京宝塚劇場公演でこの『花の業平』に主演した。香寿はその翌年の中日劇場公演でもこの作品に主演しており、今回はそれ以来の再演となる。鳳月杏の在原業平、天紫珠李の藤原高子、風間柚乃の藤原基経というキャスティングだが、3人は月組で2023年に上演した『応天の門』でもそれぞれ同じ役を演じている。鳳月の業平と天紫の高子は、共に社会や家の“規範”から外れたアウトサイダーであるが故に激しく恋に落ちる姿をくっきり描き出す。香寿が業平、渚あきが高子を演じた2001年の東京宝塚劇場公演では、高子が「帝よりずっと年上」と自嘲するセリフ、そして、権力を欲しいとは思っていなかったけれども、恋しい女を帝に嫁がせたくない、ずっと共にいたいと願う今は権力が欲しいと業平が吐露する場面が印象的だった。今回の上演では、高子に逢いたいと願う業平の狂気にも似た思いや、己の心に忠実に生きようとする高子の凛とした強さが心に残り、たとえ高子が帝に嫁ぎ、離れ離れとなってもこの恋を貫き通そうというラストシーンが清々しい決意に満ちたものとして映った。風間の基経も権力欲に取りつかれた人物の哀しさを表現。高貴な生まれながら今は京の市を仕切る頭領である梅若役の礼華はるが、貴公子ぶりを漂わせつつ市井に生きる者の気概を感じさせる。安倍清行役の夢奈瑠音は業平への友情に篤いところを見せた。藤原良房の妹で太皇太后の順子役の梨花ますみが、同じ悲しみを味わった女性として高子への共感を示す様がしっとり魅力的。作品の奥深さを感じられる舞台で、劇作家が在原業平という存在に託したものに改めて思いを馳せた。
『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』(作・演出=野口幸作)は宝塚大劇場&東京宝塚劇場公演から新たな場面も加わっての続演。風間(愛称「おだちん」)がインド・ボリウッド映画界のスーパー・スター、ヒゲ面もりりしいオダチン・カーンに扮し、ジャンル違いの5本の新作映画の撮影に同時進行で挑む場面は、東京宝塚劇場公演では終始幸せに笑いながら観ていたが、今回は何だか口をあんぐり開けてその細かな歌い分け、踊り分けの技術に聞き入り、見入っており。古代歴史アクション、ディスコ・ミュージカル、近未来SF、学園ミュージカル、王道ボリウッド・ロマン、オダチン・カーンはどの作品でも魅力的だけれども、一番心ひかれるのは近未来SFかも。ロボット・ダンスを踊りながら「♪恋のプログラムアップデート中」と歌う姿を見るだけで、ロボットのせつない恋物語の想像がふくらむ。またいつかオダチン・カーンに逢いたい! 鳳月と礼華がチャイナ服でタンゴを踊るNEO SHANGHAIの場面は、上海航路が就航していた長崎港、そして台湾や大連への国際航路や欧州航路の寄港地として栄えた門司港が近い福岡の地で観るとその魅力をひときわ身近に感じられるところがあり。<FLIGHT REFLECTION−愛の飛翔−>では、東京宝塚劇場公演に引き続き、鳳月が月組生と共にエネルギッシュに盛り上がり、「今を楽しもう!」というメッセージを歌い上げる。天紫は気合の入ったスカートさばきに月組のトップ娘役らしい魅力を感じさせ、彩みちる、桃歌雪も月組娘役らしい威勢のよい躍動。礼華の成長、活躍が目を引いた。鳳月と天紫のデュエットダンスでは、彩海せらが思いのこもったカゲソロで盛り上げた。
散歩がてら、天神から劇場まで歩き、帰りも違う道を天神まで20分ほど歩いたのだけれども、その帰り道、インドカレー屋を発見。スーパー・スターのオダチン・カーンは屋台ラーメンをお忍びで食べに行くとアドリブを飛ばしていましたが、あひるはオダチン・カーンに敬意を表し、ヒゲ面の人々がノリノリで踊るビデオを見ながらインドカレーを食べました。観たら毎回エスニック料理を食べずにはいられない、『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』はそんなレヴュー。
『花の業平〜忍ぶの乱れ〜』(作=柴田侑宏、演出=大野拓史)は、2001年に星組によって初演された作品の23年ぶりの再演。2001年と言えば、現在の東京宝塚劇場が竣工した年。同じ年、月組の真琴つばさ、星組の稔幸、二人のトップスターが東京宝塚劇場公演ではなく宝塚大劇場公演を最後に退団。その稔が退団公演の一つ前の宝塚大劇場公演で、そして稔の後任となった香寿たつきがトップお披露目の東京宝塚劇場公演でこの『花の業平』に主演した。香寿はその翌年の中日劇場公演でもこの作品に主演しており、今回はそれ以来の再演となる。鳳月杏の在原業平、天紫珠李の藤原高子、風間柚乃の藤原基経というキャスティングだが、3人は月組で2023年に上演した『応天の門』でもそれぞれ同じ役を演じている。鳳月の業平と天紫の高子は、共に社会や家の“規範”から外れたアウトサイダーであるが故に激しく恋に落ちる姿をくっきり描き出す。香寿が業平、渚あきが高子を演じた2001年の東京宝塚劇場公演では、高子が「帝よりずっと年上」と自嘲するセリフ、そして、権力を欲しいとは思っていなかったけれども、恋しい女を帝に嫁がせたくない、ずっと共にいたいと願う今は権力が欲しいと業平が吐露する場面が印象的だった。今回の上演では、高子に逢いたいと願う業平の狂気にも似た思いや、己の心に忠実に生きようとする高子の凛とした強さが心に残り、たとえ高子が帝に嫁ぎ、離れ離れとなってもこの恋を貫き通そうというラストシーンが清々しい決意に満ちたものとして映った。風間の基経も権力欲に取りつかれた人物の哀しさを表現。高貴な生まれながら今は京の市を仕切る頭領である梅若役の礼華はるが、貴公子ぶりを漂わせつつ市井に生きる者の気概を感じさせる。安倍清行役の夢奈瑠音は業平への友情に篤いところを見せた。藤原良房の妹で太皇太后の順子役の梨花ますみが、同じ悲しみを味わった女性として高子への共感を示す様がしっとり魅力的。作品の奥深さを感じられる舞台で、劇作家が在原業平という存在に託したものに改めて思いを馳せた。
『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』(作・演出=野口幸作)は宝塚大劇場&東京宝塚劇場公演から新たな場面も加わっての続演。風間(愛称「おだちん」)がインド・ボリウッド映画界のスーパー・スター、ヒゲ面もりりしいオダチン・カーンに扮し、ジャンル違いの5本の新作映画の撮影に同時進行で挑む場面は、東京宝塚劇場公演では終始幸せに笑いながら観ていたが、今回は何だか口をあんぐり開けてその細かな歌い分け、踊り分けの技術に聞き入り、見入っており。古代歴史アクション、ディスコ・ミュージカル、近未来SF、学園ミュージカル、王道ボリウッド・ロマン、オダチン・カーンはどの作品でも魅力的だけれども、一番心ひかれるのは近未来SFかも。ロボット・ダンスを踊りながら「♪恋のプログラムアップデート中」と歌う姿を見るだけで、ロボットのせつない恋物語の想像がふくらむ。またいつかオダチン・カーンに逢いたい! 鳳月と礼華がチャイナ服でタンゴを踊るNEO SHANGHAIの場面は、上海航路が就航していた長崎港、そして台湾や大連への国際航路や欧州航路の寄港地として栄えた門司港が近い福岡の地で観るとその魅力をひときわ身近に感じられるところがあり。<FLIGHT REFLECTION−愛の飛翔−>では、東京宝塚劇場公演に引き続き、鳳月が月組生と共にエネルギッシュに盛り上がり、「今を楽しもう!」というメッセージを歌い上げる。天紫は気合の入ったスカートさばきに月組のトップ娘役らしい魅力を感じさせ、彩みちる、桃歌雪も月組娘役らしい威勢のよい躍動。礼華の成長、活躍が目を引いた。鳳月と天紫のデュエットダンスでは、彩海せらが思いのこもったカゲソロで盛り上げた。
散歩がてら、天神から劇場まで歩き、帰りも違う道を天神まで20分ほど歩いたのだけれども、その帰り道、インドカレー屋を発見。スーパー・スターのオダチン・カーンは屋台ラーメンをお忍びで食べに行くとアドリブを飛ばしていましたが、あひるはオダチン・カーンに敬意を表し、ヒゲ面の人々がノリノリで踊るビデオを見ながらインドカレーを食べました。観たら毎回エスニック料理を食べずにはいられない、『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』はそんなレヴュー。
雪組新トップコンビ朝美絢&夢白あやのお披露目公演。『ROBIN THE HERO』(脚本・演出:齋藤吉正)では二人の魂が入れ替わるという、宝塚の男役/娘役にとってトリッキーな趣向があるが、難なくこなすを超えてそれぞれ役者としての個性を発揮したところが頼もしい。アニメ風味もある作品の中、二人の姿に、アニメの画が実人物化したような、はたまた洋画の日本語吹き替え版を観ているような、そんな思いにとらわれる瞬間も。ベテラン座付作家がチャレンジングなところを見せる『オーヴァチュア!』(作・演出:三木章雄)でも魅力輝き、宝塚の新たな地平を拓いていくことが期待されているコンビなのだなと感じた。専科を経て雪組入りした星組出身の瀬央ゆりあもよい刺激となり、雪組の個性派たちも大暴れ〜。
宝塚歌劇百十周年紀念奉舞『宝塚110年の恋のうた』(作・演出:大野拓史)の主人公、芹香斗亜演じる藤原定家は、想い人である式子内親王(春乃さくら)を失い、和歌が詠めなくなってしまう。そんな定家の前に、桜木みなと演じる俳優(わざおぎ)の八千代が現れ、百十年もの間、恋の歌を歌ってきた世界(=宝塚歌劇)を共に旅することで、定家に再び歌を詠む気力を取り戻させていく。定家、そして式子内親王が宝塚で上演されてきた過去作品をリプライズしていく趣向は、陰陽師の安倍泰成と妖狐の玉藻前が千年にわたって転生を繰り返すという設定の、同じ作者による日本物レヴュー『白鷺の城』(2018)を思い出させるところがある。
宝塚の恋の名曲でつづられていく本作において、恋の歌が歌われなかった時代を伝える意図で、『翼の決戦』の曲が歌われる場面がある。『翼の決戦』は、第二次世界大戦時、政府の決戦非常措置要綱によって1944年3月4日をもって宝塚大劇場が閉鎖されることになった際、雪組によって上演されていた作品の一つで、桜木扮する八千代がその名ちなむところの当時の雪組トップスター春日野八千代が伊勢中尉を演じた作品である。劇場閉鎖が発表され、最後の舞台を観たいと押し寄せた観客の列が大劇場から宝塚南口駅まで連なったという話はよく知られる。宝塚大劇場はこの後、海軍に接収され、敗戦後の1946年に進駐軍から返還されるまで同劇場における宝塚の公演は途絶えた。『翼の決戦』において軍服姿の春日野八千代が軍機の上に立っている写真は宝塚歌劇の歴史をたどる本などでたびたび目にしてきていたが、眼前の舞台での再現に胸を衝かれるものがあった。
宙組トップスター芹香斗亜がこの公演の千秋楽をもって退団する。日本物レヴュー『宝塚110年の恋のうた』では名作からの抜粋場面においてさまざまな扮装姿を見せ、宛書オリジナル作品である『Razzle Dazzle』(作・演出:田渕大輔)では宝塚の男役がよく似合う長身をスーツに包んで登場、フィナーレでも男役として最後の舞を披露した。ブロードウェイ・ミュージカル『プロミセス、プロミセス』(2021)で芹香が主人公チャック・バクスター役を演じた際の表題曲の歌唱は今も心に残っている。それと、作品の根幹をしっかり支えた『El Japón−イスパニアのサムライ−』(2019−2020)のアレハンドロ役の演技も。そのナイーブな魅力がますます花開いていくことを願っている。
宝塚の恋の名曲でつづられていく本作において、恋の歌が歌われなかった時代を伝える意図で、『翼の決戦』の曲が歌われる場面がある。『翼の決戦』は、第二次世界大戦時、政府の決戦非常措置要綱によって1944年3月4日をもって宝塚大劇場が閉鎖されることになった際、雪組によって上演されていた作品の一つで、桜木扮する八千代がその名ちなむところの当時の雪組トップスター春日野八千代が伊勢中尉を演じた作品である。劇場閉鎖が発表され、最後の舞台を観たいと押し寄せた観客の列が大劇場から宝塚南口駅まで連なったという話はよく知られる。宝塚大劇場はこの後、海軍に接収され、敗戦後の1946年に進駐軍から返還されるまで同劇場における宝塚の公演は途絶えた。『翼の決戦』において軍服姿の春日野八千代が軍機の上に立っている写真は宝塚歌劇の歴史をたどる本などでたびたび目にしてきていたが、眼前の舞台での再現に胸を衝かれるものがあった。
宙組トップスター芹香斗亜がこの公演の千秋楽をもって退団する。日本物レヴュー『宝塚110年の恋のうた』では名作からの抜粋場面においてさまざまな扮装姿を見せ、宛書オリジナル作品である『Razzle Dazzle』(作・演出:田渕大輔)では宝塚の男役がよく似合う長身をスーツに包んで登場、フィナーレでも男役として最後の舞を披露した。ブロードウェイ・ミュージカル『プロミセス、プロミセス』(2021)で芹香が主人公チャック・バクスター役を演じた際の表題曲の歌唱は今も心に残っている。それと、作品の根幹をしっかり支えた『El Japón−イスパニアのサムライ−』(2019−2020)のアレハンドロ役の演技も。そのナイーブな魅力がますます花開いていくことを願っている。
2007年の月組初演以来の上演となった『マジシャンの憂鬱』(作・演出:正塚晴彦)は、透視能力があるという設定で事件を解決し、寵児となったマジシャンのシャンドール(永久輝せあ)が主人公。己の披露するマジックについて軽妙なメロディで「♪命をかけたりしません」と歌う主人公は難事件に巻き込まれるが、その過程で出逢ったヴェロニカ(星空美咲)は「命をかけてお守りします」とりりしく宣言する女性で、やがて二人は心を通わせていく。正塚は昨年月組で上演された『Eternal Voice 消え残る想い』で透視能力をもつ主人公とヒロインを登場させており、“不思議な力”への関心が本作に遡ることを興味深く思った。また、ヴェロニカが仕えていた皇太子妃マレーク(美羽愛)は愛読書としてシェイクスピアを残しているのだが、本作にはどこかシェイクスピアの『ハムレット』(墓場、ドクロ、正気をなくした女性)や『冬物語』(エンディング)のエッセンスが流れているように感じられるのをおもしろく観た。永久輝は、作品のタイトル通り、憂鬱をまとったマジシャンの、どこか何か一枚隔てたところで人と接している風なのが、ヴェロニカと出逢って何とはなしに変化していく様を演じて魅力的。星空も、一途で頑なささえ感じさせる女性が永久輝シャンドールと出逢って心がほどけ、肩の荷が降りていく様子を演じて、けなげなヒロイン役に強いところを見せた。ラスト近くでシャンドールが口にする「好きですよ、あなた」は、印象的なセリフとして初演時から話題にのぼるものだったと記憶しているが、このセリフに、演出家が考える宝塚の男役の美学がにじんでいるように感じた。専科の高翔みず希と凛城きらが、墓守のシュトルムフェルド役とその妻で墓守のアデルハイド役で出演。二人のセリフの絶妙な間合いが、掛詞をはじめ言葉遊びの趣向が効かせてある本作の肝を強力に支える。司祭シャラモン役の紫門ゆりや、シャンドールの仲間の一人で探偵ラースロ役の羽立光来のとぼけた味わいが、作品のほっこりムードに貢献。
レヴュー『Jubilee』(作・演出:稲葉太地)は宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演からの続演。全体的に熱気が増し、花組らしい上品さと熱さとが感じられる作品に仕上がった。永久輝にトップとしての頼もしさが増し、組のまとまりも感じられて、男役の黒燕尾服のダンス場面も見応えあり。星空のきりっキビキビッとした所作も心地よい。聖乃あすかが芯になっての<Liberation(花は枯れた)>の場面も熱い展開。芝居もレヴューも、何だか東京宝塚劇場で観劇しているように感じる瞬間があり、博多座公演で醸し出されるホーム感を楽しく思った。
レヴュー『Jubilee』(作・演出:稲葉太地)は宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演からの続演。全体的に熱気が増し、花組らしい上品さと熱さとが感じられる作品に仕上がった。永久輝にトップとしての頼もしさが増し、組のまとまりも感じられて、男役の黒燕尾服のダンス場面も見応えあり。星空のきりっキビキビッとした所作も心地よい。聖乃あすかが芯になっての<Liberation(花は枯れた)>の場面も熱い展開。芝居もレヴューも、何だか東京宝塚劇場で観劇しているように感じる瞬間があり、博多座公演で醸し出されるホーム感を楽しく思った。
“宝塚歌劇百十周年紀念奉舞”の角書がつけられた『宝塚110年の恋のうた』の作・演出は大野拓史、月組『ゴールデン・リバティ』に引き続いての登板である。今回の作品は宝塚歌劇の数々の日本物作品から選んだ恋にまつわる名曲でつづるストーリー仕立ての日本物レヴューで、“八千代”という名の「俳優(わざおぎ)」(“宝塚の至宝”と謳われた大スター春日野八千代にちなんでいる)を、宝塚歌劇の舞台を彩ってきたタカラジェンヌの象徴的存在として登場させた構成が巧い。曲替わりの場面で本日歌われたのは『心中・恋の大和路』から「この世にただひとつ」。雪の中でのラスト・シーンが心に残る作品なので、本日の東京の雪景色にマッチしていて。『Razzle Dazzle』(作・演出:田渕大輔)は宙組生の前向きな頑張りが非常に印象的な作品。
16世紀のポーランド王国における民主主義政治システム「黄金の自由」にちなんだタイトルの『ゴールデン・リバティ』(作・演出:大野拓史)。演出家がこれまでのキャリアで発表してきた作品群を総括し、さらなる地平を目指すような作品に仕上がっている。
列車強盗団“ワイルドバンチ”の最後の生き残りだったジェシー(鳳月杏)は、保安官ライマン(風間柚乃)から脅され、足を洗った列車強盗稼業に舞い戻ることに。襲った列車には古い外交行嚢を抱えた少年が乗っていた。ひょんなことから二人はサーカス団にもぐりこむが、少年と見えたのは実は女性、名前はアナレア(天紫珠李)。女ガンマンと撃たれ役として人気コンビになる二人だが、アナレアは実はツアナキ島の王女であり、国家的任務を抱えてアメリカにやってきたことが明らかになる――この作品では、かつて存在したとされるが現在は存在しないツアナキ島に王国があるという設定になっている。アナレアのモデルはハワイ王国の王女カイウラニ――。外交行嚢には、かつてリンカーン大統領がツアナキ島に対して発した、交易に応じるなら島の独立は侵さないという外交文書が入っていた。二人を追う人々。自由の女神像の除幕式でアメリカのクリーブランド大統領と対面を果たしたアナレアの決断は――?
公演ポスターから連想するのは西部劇、そして実際途中まではそうなのだが、サーカスの場面あり、自由の女神像内での立ち廻りあり、そして最終的にはトロピカルな南の島、ツアナキ島でタヒチアン風ダンスまで披露されて、レビュー作品の如き趣もあり。オープニング場面は大陸横断鉄道の起点駅にあるレストランで繰り広げられるが、ここで踊られるダンスから想起したのが、宝塚歌劇団が1927年に日本で初めて上演したレビュー作品『モン・パリ』での、衣裳のズボンを汽車の動輪に見立てたラインダンス。今回の振付(平澤智)では手にしたフランスパンで連結棒を連想させるのがおもしろい。宝塚歌劇団の創始者である小林一三が、阪急電鉄の駅に直結したターミナルデパート、阪急百貨店をオープンさせたこと、そこに開業した大食堂のライスカレーが大人気を博したことも思い出したり。列車で大陸を旅して回り、5人の団長を擁してスターを次々と生み出す「ロングロング・サーカス」のモデルは、“地上最大のショー”がキャッチフレーズの「リングリング・サーカス」である。
鳳月杏&天紫珠李にとってはこれが月組トップコンビお披露目作品。入団19年目、すでにトップスターを勤め上げて退団した同期もいる中、最も遅い年次でトップスターに就任した鳳月だが、積み上げてきたキャリアにふさわしい、すばらしい舞台を見せる。男役としての所作が研ぎ澄まされていて、立っているだけで美しい。だからこそ、演出家も、広い劇場の大きな舞台にただ一人立たせるという場面を創ったのだと思う。過去へとときに引き戻され、己の無力感を責め、けれども、アナレアとの出逢いもきっかけに、明日を、未来を目指して進んでいく主人公。宝塚の男役の美学がここにある。
天紫珠李は男役の経験もある娘役だが、アナレアが最初は少年の扮装をしているというところに、演出家の洒落っ気を感じたり。天紫に対しては、キャリアもあるのだから、もっと堂々と舞台をENJOY! と思ったりもするのだけれども、そんな、どこか奥ゆかしさを感じさせるところも、秘密を抱えた王女という役どころにマッチしていた。
理想に燃えるも挫折した過去をもつ男ライマンを演じるのは風間柚乃。自分の悪事を止めてくれとライマンがジェシーに懇願し、決闘する場面で、ピーター・モーガン作『フロスト/ニクソン』の印象的なセリフ、”He wants the wilderness”を思い出した――しかし、ここではジェシーがライマンの望むところの”wilderness”を与えないところがいいのだが。ここでの鳳月と風間、男役同士の対峙が緊迫感に満ち満ちていて、舞台にぐわっと引き込まれる醍醐味があった。
ヒル・バレーの街のサルーンの女将フレンチー役の妃純凛が月組娘役らしくすばらしく威勢がいいのだが、彼女の啖呵をきっかけに街の人々が乱暴者に応戦しようとする場面は、『柳生忍法帖』(2021)で闘う女たちの姿を思い起こさせる。自由の女神像の場面でジェシーを助ける女性の声に、「もしかして自由の女神が助けてくれているの?」と最初思ったのですが、助けてくれたのは女性新聞記者エリザベス(白河りり)だった――その姿に、『記者と皇帝』(2011)を思い出したり。それを言ったら『El Japón−イスパニアのサムライ−』(2019−2020)は史実も取り入れたマカロニ・ウエスタン風味の作品だったな……と、大野拓史の過去作をいろいろ思い起こす楽しいひととき。
サーカスの団長たちの妹アイダ(花妃舞音)が人形遣いで、人形たちに託してずばり本音を語るシーンがおもしろい。今回退団の春海ゆうと朝陽つばさが、少年ジェシーを助けたワイルドバンチのリーダー格ホールデンとボーグナインを演じるのだが、その二人が後半、自由の女神像の除幕式の場面で、クリーブランド大統領とフランス側代表レセップスとして登場、今度はアナレアを助けるというのも気の利いた趣向。
舞台冒頭、「ショー作品?」と思うくらい、ミラーボールが金色にキラキラ光り、回る。作品が終わってみれば、――その輝きは、最終的に勝ち取った自由を祝福しているような、月組の組カラー「黄色」を連想させるような、はたまた作中言及されるツアナキ王国のパイナップルを彷彿とさせるような。ツアナキの人々に幸あれ。
『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』(作・演出:野口幸作)は、鳳月杏の名前にちなみ、PHOENIX、不死鳥、鳳凰をモチーフに、エジプト、インド、上海(NEO SHANGHAI)、タイ、韓国と、さまざまな国と地域をめぐるレヴュー。エスニック・ムード満載で、観るたびにエスニック料理を食べたい欲が刺激され。それはさておき。芝居、レヴューと観て、男役鳳月杏の魅力は、彼女の名前の最初の字「ほ」から始まる「ほんわか」「ほっこり」といった言葉を連想させるな、と感じた。豊富なキャリアゆえの円熟味とみずみずしさが共存しているところもいい。トップスターとしての今後の展開も非常に楽しみである。芝居の終盤で変装して出てくる場面があるのだけれども、あまりのスタイルのよさでわかってしまうのだが、NEO SHANGHAIの場面でチャイナ服姿で礼華はると男役同士でタンゴを踊る際も身体の活かし方が際立っていた。礼華は男役として少々重心が高いように感じられるのだけれども、鳳月から多くを学んでいるといいなと思う。
レヴューで大いに笑いのツボを刺激されたのが、風間扮するボリウッド映画界のスーパースター「オダチン・カーン」(風間の愛称は「おだちん」)が大活躍する場面(振付:三井聡)。濃いヒゲがチャームポイントのオダチン・カーンは、古代歴史アクション、ディスコ・ミュージカル、近未来SF、学園ミュージカル、ボリウッド・ロマンと、バラエティ豊かな作品群で主演。『サタデー・ナイト・フィーバー』風ディスコ・ダンスにロボット・ダンスと、踊り分けがすごい。ヒゲ面で学園ものに主演してしまうのもいい。オダチン・カーンを観ていると幸せになって、笑ってしまう。ヒゲ面で大いに発揮されるその魅力、当たりキャラの予感。
列車強盗団“ワイルドバンチ”の最後の生き残りだったジェシー(鳳月杏)は、保安官ライマン(風間柚乃)から脅され、足を洗った列車強盗稼業に舞い戻ることに。襲った列車には古い外交行嚢を抱えた少年が乗っていた。ひょんなことから二人はサーカス団にもぐりこむが、少年と見えたのは実は女性、名前はアナレア(天紫珠李)。女ガンマンと撃たれ役として人気コンビになる二人だが、アナレアは実はツアナキ島の王女であり、国家的任務を抱えてアメリカにやってきたことが明らかになる――この作品では、かつて存在したとされるが現在は存在しないツアナキ島に王国があるという設定になっている。アナレアのモデルはハワイ王国の王女カイウラニ――。外交行嚢には、かつてリンカーン大統領がツアナキ島に対して発した、交易に応じるなら島の独立は侵さないという外交文書が入っていた。二人を追う人々。自由の女神像の除幕式でアメリカのクリーブランド大統領と対面を果たしたアナレアの決断は――?
公演ポスターから連想するのは西部劇、そして実際途中まではそうなのだが、サーカスの場面あり、自由の女神像内での立ち廻りあり、そして最終的にはトロピカルな南の島、ツアナキ島でタヒチアン風ダンスまで披露されて、レビュー作品の如き趣もあり。オープニング場面は大陸横断鉄道の起点駅にあるレストランで繰り広げられるが、ここで踊られるダンスから想起したのが、宝塚歌劇団が1927年に日本で初めて上演したレビュー作品『モン・パリ』での、衣裳のズボンを汽車の動輪に見立てたラインダンス。今回の振付(平澤智)では手にしたフランスパンで連結棒を連想させるのがおもしろい。宝塚歌劇団の創始者である小林一三が、阪急電鉄の駅に直結したターミナルデパート、阪急百貨店をオープンさせたこと、そこに開業した大食堂のライスカレーが大人気を博したことも思い出したり。列車で大陸を旅して回り、5人の団長を擁してスターを次々と生み出す「ロングロング・サーカス」のモデルは、“地上最大のショー”がキャッチフレーズの「リングリング・サーカス」である。
鳳月杏&天紫珠李にとってはこれが月組トップコンビお披露目作品。入団19年目、すでにトップスターを勤め上げて退団した同期もいる中、最も遅い年次でトップスターに就任した鳳月だが、積み上げてきたキャリアにふさわしい、すばらしい舞台を見せる。男役としての所作が研ぎ澄まされていて、立っているだけで美しい。だからこそ、演出家も、広い劇場の大きな舞台にただ一人立たせるという場面を創ったのだと思う。過去へとときに引き戻され、己の無力感を責め、けれども、アナレアとの出逢いもきっかけに、明日を、未来を目指して進んでいく主人公。宝塚の男役の美学がここにある。
天紫珠李は男役の経験もある娘役だが、アナレアが最初は少年の扮装をしているというところに、演出家の洒落っ気を感じたり。天紫に対しては、キャリアもあるのだから、もっと堂々と舞台をENJOY! と思ったりもするのだけれども、そんな、どこか奥ゆかしさを感じさせるところも、秘密を抱えた王女という役どころにマッチしていた。
理想に燃えるも挫折した過去をもつ男ライマンを演じるのは風間柚乃。自分の悪事を止めてくれとライマンがジェシーに懇願し、決闘する場面で、ピーター・モーガン作『フロスト/ニクソン』の印象的なセリフ、”He wants the wilderness”を思い出した――しかし、ここではジェシーがライマンの望むところの”wilderness”を与えないところがいいのだが。ここでの鳳月と風間、男役同士の対峙が緊迫感に満ち満ちていて、舞台にぐわっと引き込まれる醍醐味があった。
ヒル・バレーの街のサルーンの女将フレンチー役の妃純凛が月組娘役らしくすばらしく威勢がいいのだが、彼女の啖呵をきっかけに街の人々が乱暴者に応戦しようとする場面は、『柳生忍法帖』(2021)で闘う女たちの姿を思い起こさせる。自由の女神像の場面でジェシーを助ける女性の声に、「もしかして自由の女神が助けてくれているの?」と最初思ったのですが、助けてくれたのは女性新聞記者エリザベス(白河りり)だった――その姿に、『記者と皇帝』(2011)を思い出したり。それを言ったら『El Japón−イスパニアのサムライ−』(2019−2020)は史実も取り入れたマカロニ・ウエスタン風味の作品だったな……と、大野拓史の過去作をいろいろ思い起こす楽しいひととき。
サーカスの団長たちの妹アイダ(花妃舞音)が人形遣いで、人形たちに託してずばり本音を語るシーンがおもしろい。今回退団の春海ゆうと朝陽つばさが、少年ジェシーを助けたワイルドバンチのリーダー格ホールデンとボーグナインを演じるのだが、その二人が後半、自由の女神像の除幕式の場面で、クリーブランド大統領とフランス側代表レセップスとして登場、今度はアナレアを助けるというのも気の利いた趣向。
舞台冒頭、「ショー作品?」と思うくらい、ミラーボールが金色にキラキラ光り、回る。作品が終わってみれば、――その輝きは、最終的に勝ち取った自由を祝福しているような、月組の組カラー「黄色」を連想させるような、はたまた作中言及されるツアナキ王国のパイナップルを彷彿とさせるような。ツアナキの人々に幸あれ。
『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』(作・演出:野口幸作)は、鳳月杏の名前にちなみ、PHOENIX、不死鳥、鳳凰をモチーフに、エジプト、インド、上海(NEO SHANGHAI)、タイ、韓国と、さまざまな国と地域をめぐるレヴュー。エスニック・ムード満載で、観るたびにエスニック料理を食べたい欲が刺激され。それはさておき。芝居、レヴューと観て、男役鳳月杏の魅力は、彼女の名前の最初の字「ほ」から始まる「ほんわか」「ほっこり」といった言葉を連想させるな、と感じた。豊富なキャリアゆえの円熟味とみずみずしさが共存しているところもいい。トップスターとしての今後の展開も非常に楽しみである。芝居の終盤で変装して出てくる場面があるのだけれども、あまりのスタイルのよさでわかってしまうのだが、NEO SHANGHAIの場面でチャイナ服姿で礼華はると男役同士でタンゴを踊る際も身体の活かし方が際立っていた。礼華は男役として少々重心が高いように感じられるのだけれども、鳳月から多くを学んでいるといいなと思う。
レヴューで大いに笑いのツボを刺激されたのが、風間扮するボリウッド映画界のスーパースター「オダチン・カーン」(風間の愛称は「おだちん」)が大活躍する場面(振付:三井聡)。濃いヒゲがチャームポイントのオダチン・カーンは、古代歴史アクション、ディスコ・ミュージカル、近未来SF、学園ミュージカル、ボリウッド・ロマンと、バラエティ豊かな作品群で主演。『サタデー・ナイト・フィーバー』風ディスコ・ダンスにロボット・ダンスと、踊り分けがすごい。ヒゲ面で学園ものに主演してしまうのもいい。オダチン・カーンを観ていると幸せになって、笑ってしまう。ヒゲ面で大いに発揮されるその魅力、当たりキャラの予感。
過去を背負った男と、秘密の国家的任務を背負った女が出逢い、冒険が始まる――。『ゴールデン・リバティ』(作・演出=大野拓史)は、公式HPに掲載された作品紹介文からして作者が大いに乗っていることがうかがえる意欲作。物語が進むにつれ、身近な話から世界的歴史的に普遍な問題へ、クローズアップから鳥瞰へと視点がぱあっと変わっていくような広がりあり。何より、これがお披露目公演となる月組新トップコンビ鳳月杏&天紫珠李、そして風間柚乃をはじめとする組子の個性を生かし、宝塚の男役娘役ならではの美学を大いに追求している作品であるところがすばらしい。スピーディにいろいろ盛りだくさんなので、観劇前にあらすじを読んでおくことをお勧めします&冒頭にキラキラ光るミラーボール(実は示唆に富む)にご注目〜。『PHOENIX RISING−IN THE MOONLIGHT−』(作・演出=野口幸作)は、アジアのさまざまな国々に初詣に行ったようなめでたい気分になれる、景気よくスタイリッシュなアジアン・レヴューで、こちらも寿ぎのムード満載。鳳月&天紫&風間のトリデンテはもう何年もこの体制だったかのような安定感。超絶スタイルで立っているだけで絵になる男役・鳳月杏、そのスター感、魅力が実に興味深く。新生月組、ロケットスタート!
いたずらが過ぎ、嘘をつく能力を奪われて天界から人間界へと落とされた悪ガキ天使アザゼル(永久輝せあ)が、トレジャーハンターのエンジェルシーフ、その実は……のエレナ(星空美咲)と出逢い、人間について学んでいく『エンジェリックライ』(作・演出=谷貴矢)。舞台や映像作品を観ていてときどき、……こんな演技や表情ができるということは、この人は、人の世の醜さを一つ知ってしまったということなのだな……と胸を衝かれるときがある。そんなときの心の痛み、この世界から一つ無垢が失われたことへの哀しみを思い出す瞬間が、“ファンタジー・ホラロマン”なる角書を掲げるこの作品にはあった。と言いながらも楽しい作品、ラストも、……え、これってアザゼルとエレナは別れるしかないじゃない? うわあ、そんなさみしい作品、トップコンビお披露目公演じゃなくて退団公演とかの方が合ってるんじゃ〜と思っていたら、……見事に騙されました(笑)。悪魔フラウロス(聖乃あすか)をエンジェルシーフということにして突き出しちゃうというくだりは、『THE SCARLET PIMPERNEL』でショーヴランをスカーレット・ピンパーネルということにして突き出しちゃうオチのオマージュかと。他にも、『BADDY』や小池修一郎オリジナル作品を思わせるテイストあり。天界の最高権威である天帝役の紫門ゆりやが、すべて見抜いているような大いにとぼけた味を発揮して魅了する。
『Jubilee』(作・演出=稲葉太地)は、トップお披露目の祝祭ムードあり、退団者への餞のシーンありと、すっきりまとまっている作品。もっと組全体のパワー、一人一人の個性を感じたかった。全員がもっとフルパワーで行っても、新トップコンビ永久輝せあ&星空美咲なら大丈夫!
専科の凪七瑠海と綺城ひか理が本日の千秋楽をもって宝塚を去る。凪七が演じるのは、悪魔にそそのかされるも最終的には改心する大宝石商フェデリコ役。若き日のロマンスの場面も含め、最後の作品で男役としての見せ場が多く与えられていた。凪七は89期の首席入団で、初舞台の『シニョール ドン・ファン』(2003)のロケットでは一人弓矢を射る振りが与えられていたのだが、『Jubilee』でそれと同じ振りがあって、22年前を懐かしく思い出した。『エリザベート』(2009)のタイトルロールをはじめ、ショー作品でもたびたび女役を務めてきていて、……もし娘役に転向していたら……と思わないでもなかったけれども、男役を貫き通した宝塚人生だった。
『エンジェリックライ』の綺城ひか理は、長身に金髪の麗しの大天使ラファエル役。“同期”の永久輝アザゼル(永久輝と綺城は実際に入団同期)と反発しながらも騒動を解決に導く役どころで、大らかな魅力を発揮していた。
『Jubilee』(作・演出=稲葉太地)は、トップお披露目の祝祭ムードあり、退団者への餞のシーンありと、すっきりまとまっている作品。もっと組全体のパワー、一人一人の個性を感じたかった。全員がもっとフルパワーで行っても、新トップコンビ永久輝せあ&星空美咲なら大丈夫!
専科の凪七瑠海と綺城ひか理が本日の千秋楽をもって宝塚を去る。凪七が演じるのは、悪魔にそそのかされるも最終的には改心する大宝石商フェデリコ役。若き日のロマンスの場面も含め、最後の作品で男役としての見せ場が多く与えられていた。凪七は89期の首席入団で、初舞台の『シニョール ドン・ファン』(2003)のロケットでは一人弓矢を射る振りが与えられていたのだが、『Jubilee』でそれと同じ振りがあって、22年前を懐かしく思い出した。『エリザベート』(2009)のタイトルロールをはじめ、ショー作品でもたびたび女役を務めてきていて、……もし娘役に転向していたら……と思わないでもなかったけれども、男役を貫き通した宝塚人生だった。
『エンジェリックライ』の綺城ひか理は、長身に金髪の麗しの大天使ラファエル役。“同期”の永久輝アザゼル(永久輝と綺城は実際に入団同期)と反発しながらも騒動を解決に導く役どころで、大らかな魅力を発揮していた。
総合演出・ステージ制作=大田高彰(インターグルーヴプロダクションズ)、構成・演出=竹田悠一郎。8月に宝塚退団を控えた星組トップスター礼真琴による日本武道館でのコンサート。男役としては高い音域も軽々歌いこなす礼の歌唱力を改めて体感する110分。トロッコに乗って会場を移動しつつ歌いながらサインボールを投げまくるという盛りだくさんな場面も。映像やレーザービーム照明、観客が身に着けた連動型ブレスレットライト等が一体となったド派手な演出あり。宝塚の歌のコーナーでは、礼が演じてきた役柄を思わせる扮装をした他の出演者と一緒にその役柄の歌を歌うという趣向。そこから、演じた中で悪役をはじめダークな感じの役どころの歌が連なったコーナーへと続き、武道館で歌われる『THE SCARLET PIMPERNEL』の「マダム・ギロチン」の迫力にドキッ(怖い)。『エリザベート』の「最後のダンス」や『THE SCARLET PIMPERNEL』の「栄光の日々」といった名曲を日本武道館という大空間で聴けたのも得難い経験。礼が同期のひろ香祐と紫りらと3人で歌ったDREAMS COME TRUEの「何度でも」が心に沁み。暁千星はUruの「あなたがいることで」ソロ・パートで感涙ものの歌唱を聴かせた。小桜ほのかがキューティーな魅力を発揮。武道館内は少々寒かったけれど、ステージはホット。大学の入学式、ジョージ・マイケルの来日コンサートに加え、武道館での楽しい思い出が増え。
(1月18日17時、日本武道館)
(1月18日17時、日本武道館)
これが東上公演初主演となった縣千のセンター力、同じ劇場での『海辺のストルーエンセ』(2023)の不倫する王妃役でも確かな力を示した音彩唯のヒロイン力を楽しむ。フィナーレの二人のデュエットダンス、踊りがキレキレだった。薄井香菜の衣装が魅力的。
(1月9日15時の部、KAAT神奈川芸術劇場)
(1月9日15時の部、KAAT神奈川芸術劇場)


