「G7広島サミット2023」を思いながら観る、厳島神社が舞台の『宮島のだんまり』。
 東大寺の「お水取り(修二会)」を題材にした『春をよぶ二月堂お水取り 達陀』では、僧侶たちが繰り広げるド迫力の舞踊に高揚!
 夜の部ラストは河竹黙阿弥の『梅雨小袖昔八丈』(明治6年=1873年初演)。気迫みなぎる舞台で、日本語の美しさにところどころ陶然。2023年を生きる私たちは、1873年から今日に至るまでの歴史を知っているけれども、1873年にこの作品を書いたとき、黙阿弥がその後の歴史を知る由もなかったことに思いを馳せながら観ており。

(5月25日16時の部、歌舞伎座)
 『不死鳥よ 波濤を越えて―平家物語異聞―』は、大ヒット作『ベルサイユのばら』(1974年初演)を手がけたことで知られる宝塚歌劇団の座付き作家植田紳爾が先代の市川猿之助(現・市川猿翁)の依頼で書き、1979年に初演された作品で、今回が44年ぶりの再演となる。市川猿之助休演により、主人公・平知盛を演じるのは市川團子。全体、引き締まっていて、物語にぐっと引き込まれる舞台だった。二幕の展開がとりわけ宝塚を感じさせ、『ベルサイユのばら』のシーンやキャラクターを連想する箇所も(加えて『エリザベート』風場面もあり)。初演時の取り組みが後の「スーパー歌舞伎」につながっていったとのことで、歌舞伎と宝塚歌劇の相互影響について大いに示唆に富む時間。夜の部『御贔屓繫馬』でも中村米吉が“男装の麗人”を演じて非常に魅力的なので、併せて観るとますます興味深く。

(21日11時半の部、明治座)
 併せて観たら発見があるかも……と昼の部が楽しみになる『御贔屓繫馬』。

(5月15日16時の部、明治座)
 セリフが身体に心地よく響く『寿曽我対面』。
 市川團十郎演じる織田上総之介信長の孤独と哀しみが心をしめつける『若き日の信長』。
 童心に帰って楽しめる『音菊眞秀若武者』。

(11時の部、歌舞伎座)
 チーム・スピリットを感じた『新・陰陽師 滝夜叉姫』の舞台(原作は夢枕獏の小説『陰陽師 瀧夜叉姫』)。

(11時の部、歌舞伎座)
 陰惨な刃傷シーンに思わず「あっ!」と声を出してしまうほど物語の展開に引き込まれた、通し狂言『絵本合法衢』の舞台。

(16時の部、明治座)
 “武士たる者”に対する作者・河竹黙阿弥のまなざしが心に不思議なざらつきを残す、『大杯觴酒戦強者』(1881年=明治14年初演)の舞台。

(11時の部、明治座)
 16時の部観劇(歌舞伎座)。与三郎(片岡仁左衛門)とお富(坂東玉三郎)、二人の問答無用の“恋”が描き出される『与話情浮名横櫛』。長唄も間狂言も楽しい『連獅子』。
 昨日の項で書いた文章の二行目を改めてかみしめる『髑髏尼』。はらはらと涙を流す『夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋』。

(3月8日、歌舞伎座)
 作品について知っているのが「いつか終わる夢」という曲のみという状態で『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』観劇(前編:3月6日、後編:3月7日、IHIステージアラウンド東京)。“異界”や“召喚”等、劇場という空間と親和性の高い物語であると感じた。豊洲の回る劇場での公演は4月12日まで。