あひるに近代建築趣味を教えてくれた弟が、先月、実家でぽつり。
「和田堀にある『普門館』が今度取り壊しになるんだけど、一回行ってみたいんだよね」
 ああ、うちからバスですぐのあそこね。夜にふと見ると、ライトアップされた姿に、モスクワのクレムリンに来たかといつも思ってしまう、立正佼成会の大聖堂。その向かい側に建っている、あの巨大円形建築「普門館」。信者じゃないから縁のない建物だと思い込んでいたけれども、調べてみれば、カラヤンにパリ・オペラ座バレエ、ボリショイ・バレエも公演したという歴史のあるホール。どうして一度も観劇しに行かなかったんだろう…と嘆いてみても始まらず、取り壊し前の一般公開初日(11月5日)に馳せ参じ。開館時間の少し前に着いたら、並ぶ人がいて開館が早まったということで、思い思いに楽器を吹く音がもうすでに聞こえてきていて。「全国吹奏楽コンクール」の会場だったことから、“吹奏楽の甲子園”として有名なこのホール、今回の公開も、吹奏楽関係者に思う存分このステージで吹いてほしいという趣旨のイベント。長年取材で携わってきた「ブラスト!」の関係者や観客も来ていたりするのかな…と、ステージに足を踏み入れて思う。
 でかっ!
 なんせ5000人級のホールである。宗教的モチーフをあしらったきらびやかな天井の下、三階席まで舞台をぐるっと客席が取り囲んでいる。しかし。あれは何ですか? 左右、二階客席あたりから、両花道につながっているエスカレーターがある(それとは別に、花道の出入り口もある)。あんな舞台機構、見たことない! 早速、ホールの方に質問〜。と、昇降切り替えられて、宗教的行事の際などに人々がそこから登場したりしていたという。
「…ここで宝塚を上演したとして、ラインダンスのとき、あそこから人がどんどこ登場してきたら、すごいな…」
 …いつしか、舞台中央に立ち、客席に向かって、エアシャンシャンを手に、何とはなしに「♪FOREVER TAKARAZUKA FOREVER」と心の中で歌うあひる。…それ、劇場、違うから。しかし。これだけ多くの人に見つめられるということは、すごいことですな…と、改めて。耐震基準を満たさないという理由で、本当に多くの建築がこの世から姿を消していっていて…。こんなユニークな建物、もうなかなか建つまい。カラヤンが作らせたという反響板にメッセージが書けるようになっていて、残念ですと書き入れ、劇場空間を堪能して帰ってきたのですが、ホールの方に熱く質問する姿が動画ニュースに映り込んでいました(笑)。「普門館」一般公開は11日まで!
2018-11-08 22:57 この記事だけ表示
 10月27日・28日の週末は、大阪で“イケフェス”に参加していました。イケメンフェスティバルではありませぬ(実際そういう催しもあるそうですが)。「生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪」なり。10月28日夜中のブログ、「中継が長すぎやねん!」の語尾がさりげない行き先ヒントでした。近代建築好きとして前々からぜひ参加したいと思っていたこの日本最大級の建築イベントに、今回晴れて初参加〜。
 まずは公式ガイドブックを取り寄せ、抽選があるプログラムに事前申し込みをし、当日回るルートを入念に決め…と、やることはいろいろある。なのに。これまで、通りからそっと憧れの眼差しを送っていた素敵な建物の数々が、「おいでおいで」「好きに中に入って来ていいよ」と言ってくれている! …と思っただけで動悸が激しくなり、溜息をついてはガイドブックを閉じることしばし。どれだけ近代建築好きやねん(ちなみにあひるは明治から昭和戦前期までの建築に猛烈にときめくタイプ)。高鳴る胸を抑えてようやっとプログラム申し込みをしたのですが、「日本銀行大阪支店」「大阪倶楽部」「大阪府庁本館」「綿業会館」「中央電気倶楽部」と、すべて外れ…。
 でもでも、見学できる建物は他にもいっぱいある。…と思ったら、今度は、イケフェス前夜、興奮しすぎて寝られない。その夜、大阪松竹座で観た「十月大歌舞伎」千穐楽、『雙生隅田川』での四代目市川猿之助の狂気の表現に、『ハムレット』のオフィーリア的な狂気と『欲望という名の電車』のブランチ的な狂気との違いを思ったり、そもそも歌舞伎の世界からすると『蝶々夫人』の自害ってどうなんだろう…等々、気づかされることが多く、あれこれ考えていたらますます寝られなくなってきて、ほとんどまんじりともせず。それでも27日、朝8時半には起きて出発〜。あちこち訪れ3万歩も歩いて、さあ、「スケートカナダ」を観るぞとホテルに帰ってきたら、まだ終わっていなかった日本シリーズの中継をそこから延々と観る羽目になり…。最後、疲れでちょっと吐き気がしそうになりながら、気力を振り絞って書いておりました。それでも翌朝、9時半には起きてまた出発〜。
 今回、100近くの建築が公開されていて、そのすべては観られないので、教会建築を最優先。というのも、先だって「愛の場所<http://daisy.stablo.jp/article/460305871.html>」を記した際、神の愛の器としての教会建築に興味が湧いた故。ヴォーリズ設計及び指導の「日本基督教団大阪教会」「日本基督教団浪花教会」も温かみがあって包み込まれるような空間でしたが、早世したクリスチャン建築家、中村鎮の「日本基督教団天満教会」「日本基督教団島之内教会」も、しみじみよかった。27日最初に訪れたのが天満教会で、しかも10時のオープンちょうどに一番乗りしたのですが、ぱっと見、教会とは思えないような四角い外観。その中に、楕円アーチが印象的な、シンプルな美しさのある空間があって、そこに、オルガンの音色が広がっていって…。島之内教会の方は、飲み屋も多い繁華街の中に峻厳と立つ白い外観に、建築家自身の信仰心が感じられるようで、こちらの背筋も思わず伸び。
 曾祖父が勤務していた荘厳な「三井住友銀行大阪本店ビル」、豊臣秀吉ゆかりの千成瓢箪が激しくあしらわれた照明器具に大ウケした「ミライザ大阪城(旧陸軍第四師団司令部庁舎)」等々、2日間で30近く回った中で印象に残る建物は多々あれど、今回、入れて本当によかった! と感動したのが、南船場の安堂寺橋通にある「原田産業株式会社大阪本社ビル」。正面に大きなガラス窓があるのですが、中に入ると二階まで吹き抜けになっていて、狭いけれども典雅な階段が回っていて。そこを人々が昇ったり降りたりする様子が、よくよく見れば外からもわかることに、自分が実際階段を昇り降りしてみて初めて気づき、なんて心憎い演出! と。人間もそうだけれども、外から見ているだけではわからない美しい内面に気づく幸せ。
 28日夕方にはフィナーレ的に、今月11日に開館100年を迎える「大阪市中央公会堂」へ。ここで社交ダンスを踊ったら楽しそうだな…と思わせる、広々と華麗な中集会室。“蘭陵王”の仮面が舞台正面に飾られた大集会室では、かぶりモノ劇団「ギンギラ太陽’s」のミニ公演を観て、ここで観劇したい! という夢も叶い(その昔、宝塚の公演も行なわれていたとか)。
 この日も2万5千歩歩いて、夜には神戸に移動。大好きなハーバーランド&メリケンパークの夜景を観て、翌日はのんびりしようと思っていたのに、…あ、相楽園で「旧ハッサム邸」公開してる〜、そこまで行ったら「兵庫県公館」にも足を延ばしちゃえ! と、結局神戸でも近代建築三昧のあひるであった。そして、そこまで歩いた割に体脂肪率しか減っていないのは、途中ちょこちょこ買い食いしてしまったからかしら。それにしても、建物のオーナーさんのお話を聞けたり、ある建物で会った方と別のところで再会して情報交換したり、宝塚ファンともお話ししたり、とても楽しいイベントでした。他の都市でもこういったイベントがあるといいな。
2018-11-01 23:00 この記事だけ表示