最近、まひろ(吉高由里子)父の藤原為時(岸谷五朗)の情けない演技がちょっとツボ。
 まひろ、父を職につけてくれと兼家(段田安則)に直訴! しかしまひろを正論でいなす段田兼家の声のよさ。やりたい放題息子たちを出世させる兼家――段田兼家を観ていると、そこまでして権力に執着する人間の哀しさみたいなものが感じられて。
 今夜会いたいとまひろに伝えてくれと言う道長に、いい加減にしてくださいと、まひろの従者の乙丸(矢部太郎)、言い返した! 乙丸と、道長の従者の百舌彦(本多力)と、二人いい味出してます。結局は道長とまひろの逢瀬、実現――ギターがせつなくむせび泣き。この回の音楽遣いも素敵――。しかし、道長の、北の方は無理だがそれでも妻になってくれとの頼みをまひろは受け入れられない。先週の、一緒に逃げてくれも無理、これも無理、「勝手なことばかり言うな」と怒って帰っていく道長を止めたくて、思わず「行っちゃう〜!」と声が出てしまったあひるであった。
 いかにして、まひろは物を書く人・紫式部となっていくのか。それを探究する物語は、その物語を書く人の、物書きとしての覚悟と決意を伝える物語でもあって。
 陰謀について家族に告げる兼家(段田安則)の声のいいこと。言っていることはひどいのだけれども、聞きほれる。陰謀がうまく行っての笑いもすごい。
 道長(柄本佑)からの平仮名の和歌の手紙に、漢字だらけの漢詩で返すまひろ(吉高由里子)が好き。そんなまひろを「女なのに」とは思わない道長も。
 月夜の逢瀬で、一緒に逃げようとまひろに言う道長。『ロミオとジュリエット』でジュリエットがロミオに言うようなことを、道長がまひろに言うような感じでもあり。柄本佑の演技がせつなくてとてもよく、……まひろ、一緒に逃げればいいのに……と思うあひる。
 この回の音楽、とてもよかった。ひときわ心に響いた。
 家族は信じられないけれども、まひろ(吉高由里子)や直秀(毎熊克哉)は信じている道長(柄本佑)の孤独。直秀や散楽の仲間たちの亡骸を弔うシーン、……道長が自分の心を何とか保とうとする様に、涙。
 実は目覚めていたけれども目覚めていないふりをしていた兼家(段田安則)、その力強い声!
 まひろ(吉高由里子)に広い世界について語る直秀(毎熊克哉)の声が聴いていて心地よい。そして藤原兼家役の段田安則は、前々から思っていたのだけれども声の震わせ方が絶妙。兼家が倒れ、対策を練る兄の道隆(井浦新)に詮子(吉田羊)がピシッと意見を言うのが小気味いい。
 家を訪ねてきた藤原道兼(玉置玲央)に琵琶を弾いて聞かせるまひろ、その音色から伝わるもの。
 『源氏物語』の有名なエピソード、<帚木の巻>の“雨夜の品定め”(光源氏や頭中将たちが女性の品定めをする場面)につながるのであろうシーンが登場。イギリス公演もあった彩の国シェイクスピア・シリーズ第25弾『シンベリン』(2012)の第一幕第五場、さまざまな国の男たちがそれぞれの国の女性自慢をするシーンを、蜷川幸雄がこの“雨夜の品定め”の場面の『源氏物語絵巻』を背景に登場させて演出したことも思い出し、現存する世界最古の長編小説とされるこの作品を日本女性である紫式部が書いたこと、そして彼女の生に改めて思いを馳せた。
 まひろ(吉高由里子)に漢詩で思いを伝える藤原道長(柄本佑)、せつない。
 開き直った詮子(吉田羊)、強い。
 栗田一也役の山本耕史と本人役で登場の八嶋智人の共演を観るのは、個人的には、レキシの楽曲を用いたミュージカル<愛のレキシアター>『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』(2019、原案・演出・上演台本:河原雅彦)以来(第1話のゲスト菅原永二も、作・三谷幸喜、演出:河原雅彦の2022年作品『VAMP SHOW』で活躍)。ミュージカル・シーンで「セクシャル・ハラスメント・No.1」(桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」オマージュかと)を歌う山本耕史の歌唱力! 「♪ラブとハラは紙一重」のラストの「え〜」の発声がツボ。そして八嶋智人大活躍の回。
 第1話から、……同じくらいの年回りだよね……と思っていたのですが、この回ではっきりした。小川市郎(阿部サダヲ)は昭和10年生まれ、故蜷川幸雄氏と同い年でした。
 倒れたまひろ(吉高由里子)の祈祷のためにやって来たうさんくさい僧(植本純米)はまだ出てきたりするのかしらん。
 まひろの父、藤原為時(岸谷五朗)には父の苦悩あり。しかし、父の意図に抗うまひろは、幼き日に母を殺したのが藤原道兼(玉置玲央)であることをその弟の道長(柄本佑)に告白する。真相を知って自分の家の業を受け止め、兄に食ってかかる柄本道長の演技が心に響いたのですが、その有様を見ても平然と悪い段田安則の藤原兼家! 段田安則、悪の演技をENJOY中――その高笑い、思わず真似してみた。あまりに悪いので、接した子供たちが「……大人、汚い……」みたいにしゅんとなってしまっていますが、それが後々、「こういう振る舞いは嫌だ」との覚悟で超えるべき大きな壁として立ちはだかってきたりするのかなと想像してみたり。段田兼家、前半での柄本道長への言葉では、自分たちの命は家を盛り立てるものとしてあるという一種の諦念を感じさせたのも何だかすごかった。
 そんな段田兼家の、帝の子を呪詛しろとの頼みを一度は突っぱねる安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)。先日、「令和6年国立劇場初春歌舞伎公演」で、安倍晴明の母は葛の葉という白狐だったという“安倍晴明伝説”が取り入れられた『芦屋道満大内鑑−葛の葉−』を観ていたので、生臭い中に巻き込まれているこちらの晴明が興味深く。
 まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)、せつない展開。
 父・藤原兼家(段田安則)に敢然と食ってかかる詮子(吉田羊)、いい! と思いきや、「お疲れ様でした」な感じでしらじらしく流す段田兼家、強い。
 源倫子(黒木華)の性格がいまいち読めないところがおもしろく。