第三十四回『226』。
 1936年2月26日。雪の朝。軍靴の音。――それぞれの朝。先週、書きながら背筋がぞくぞくしてきて、それでタイトル、「〜」一つ多くしたのですが。
それは、ここまで描くからには、「二・二六事件」について正面切って取り組む覚悟を固めたんだな、と思ったから。もちろん、『いだてん』は東京オリンピック、主にスポーツをめぐる物語である。しかしながら当然、時代、社会との関わりをまったく切り離して描くことはできない。その意味で、『いだてん』はこれからますます難しい時代を扱うこととなる。日本が、世界を相手にした戦争へと突き進んでいく、その時代をどう描いていくのか。それは大いに覚悟の要ることだろうと、観て書く側としても大いに覚悟を決めたのですが。そして、このような節目節目の大事件こそ、当時の人々がおかれていた社会的状況をくっきりと描き出す上で、またとない機会だと思うのですが。
 最大の問題点は、今回、「二・二六事件」を語っていた志ん生(ビートたけし)が、黙りこくった後、噺の途中で、サゲずに高座から下りてしまったこと。そして、「この時代の話は笑いにならない」と言う。そうかもしれない。けれども、それをやってしまったら、これからますます笑いにならない話オンパレードの時代であって、いったいどうするのか。戦後の時代、噺として歴史を語っているという作品の構造自体に齟齬が生じてしまうのでは?
 「こんなときにオリンピック?」「こんなときだからオリンピックだ!」の、まーちゃん(阿部サダヲ)と嘉納治五郎(役所広司)の対決も、その肝心の「こんなとき」の描き方が弱いからして…。二人の芝居には凄まじい熱があっただけに、もったいない。高橋是清邸に押し入って彼を殺害し、朝日新聞社に押し入ってまーちゃんにケガを負わせた「二・二六事件」の陸軍青年将校たちも、「オリンピックは若い者のためにやるんです」とまーちゃんが言うときの「若い者」に当然含まれるわけで。しかしながら、当時の日本は大変な不況で、若い娘が身を売らざるを得ないような状況もあったわけで、そんなときに、陸上だ水泳だとスポーツに邁進している、邁進できている若い者の姿は、貧困にあえぐ他の若い者たちにどう映っていたのか。もちろん、彼らの活躍にせめてもの明るい希望を見出していた人々もいただろう。けれども、その一方で、何がオリンピックだ、スポーツだ、そんなの一部の恵まれた奴らの贅沢だ、それどころじゃない…と思っていた人々も当然いるわけで、そちら側の思いをも掬い取って描く上で、「二・二六事件」はまたとないチャンスだったと思うのですが。
 そしてそれは、いつの時代も、芸術なりスポーツなりが問われている問題でもある。現代の日本でも、例えば貧困にあえぐ層がいて、その一方で、芸術やスポーツにもっと公的支援をということも言われていて。そして、貧困をはじめとするさまざまな問題に苦しむ人々から、「美は、スポーツは、人生においていったい何の役に立つんですか」と尋ねられたとき、その分野に関わる一人一人はどのように説得力のある答えを提示できるのか、常に問われている。それがなければ、ただの芸術バカ、スポーツバカになってしまう。『いだてん』は、両ジャンルにまたがって、その答えを提示すべく爆走してきたドラマだと思ってきたのですが。
 今後に強く期待。
 嘉納治五郎(役所広司)とIOC会長アンリ・ド・バイエ=ラトゥール(ヤッペ・クラース)の篤き友情のくだりは非常によかった。ラトゥールに謝りの弁を述べる際、…役所広司に、嘉納治五郎が憑依しているかのようだった。
2019-09-08 23:15 この記事だけ表示
「譲ってもらうっていうのはどうだろう」
 悲願の1940年東京オリンピック実現に向け、イタリアの独裁者ムッソリーニから開催地を譲ってもらおうという奇策を思いついた嘉納治五郎先生(役所広司)。しかし、彼の身に異変が! 前回の終わりで、頭を押さえていたから、脳の方に何か…? と心配しており。…腰痛でした。持病の腰痛再発。ロス五輪でも背負い投げ、バッタバッタしてたものね…。「150歳まで生きるぞ! まだ折り返しだ!」と、担架の上で気焔を吐く嘉納治五郎74歳。ムッソリーニと会うため、ローマへと旅立つこととなった副島道正伯爵(塚本晋也)は「会えるかどうかもわからんのに!」と悲観的。イタリア大使杉村陽太郎の計らいあって、そこは会える、とまーちゃん(阿部サダヲ)――彼は、「田畑! 日本を頼んだぞ!」と、オスロ総会での最終スピーチの予定稿を、治五郎先生から託されていた。東京オリンピック決定の特ダネはうちで独占するぞ、との上司緒方竹虎(リリー・フランキー)の思惑により、まーちゃんのローマ同行、実現〜。
 1935年1月、雪降るローマ。「グラッチェ」とイタリア人のセニョリーナに明るく挨拶するまーちゃん。貴方のような人はどこに行ってもやっていけますな。副島伯爵とまーちゃんに、ムッソリーニは陽気な独裁者だと語る杉村。副島さんは武者震い――第三十三回『仁義なき戦い』。そして、扉が開く。そこには眼光鋭い陽気な独裁者が! 副島さん、その場で倒れる。――肺炎。「回復まで一カ月」の「一カ月」だけ聞き取れたまーちゃん、「余命一カ月ってこと?」と早合点。…笑ってる場合じゃない。でも。まーちゃんの芝居がおもしろすぎて笑ってしまう。
 タイトルバック!
 …あひるは当初、脚本の宮藤官九郎が大河ドラマという一年間のマラソンを走り抜けるのを“沿道”で応援しようと思っていた。それが、応援するうち、…いつの間にか、自分も一緒に走っていた。そして、走り出したら、そこには――そこにも!――本当に多くの仲間がいた。今も、大勢と一緒に走っている。私たちの生まれたこの世界を、国を、次世代へと手渡していくために。そのためにも、歴史から学ぶ。今この瞬間へと至る歴史から学ぶ。私が今年、『いだてん』という大河ドラマに見出しているのは、そんな意義である。今宵のタイトルバックに、そんな想いを新たにし。
 副島が倒れて来られなくなったと杉村が説明すると、ムッソリーニは「サムラ〜イ!!!」と両手を挙げて叫び、去っていく。そのリアクションの意味がいまいち解せない杉村。「ソヘジマタフレル」の電報に、「こうなったら私が行こうかね」とベッドから無理に立ち上がろうとする治五郎先生に、貴方は腰痛じゃなくて脊椎損傷! と告げるお医者さん(松重豊)。その顔、デジャヴ!
 生死の間をさまよった副島さん、何とか外出許可を得られるところまで回復。しかし、許された時間は30分のみ。「土下座も辞さない覚悟で」とまーちゃんにハッパをかけられ、いざ行かん! と思いきや。「(約束の時間まで)まだ15分あります」と杉村。「副島さん30分しかないのに」とまーちゃん←ここがあまりにおもしろすぎて、20時から2回目を観ているとき、やりとりの前から思い出し笑いでフライングで爆笑。笑ってる場合じゃないのですが。いや、塚本晋也演じる副島道正が、あくまで真面目で真剣であればあるほど逆に滑稽で…。コメディの醍醐味。
 日本がオリンピックに選ばれるまで帰らない覚悟です、譲ってくれたら、1944年にローマでオリンピックを開催できるよう、全力を尽くす、とムッソリーニに告げる副島さん。「Will you?」「Will you?」とムッソリーニ。独裁者の説得に成功! 会見、15分で終了〜。「え、早」とまーちゃん。副島さんの“カラータイマー”(ウルトラマンの10倍だ)がもってよかった!
「な、譲ってくれただろう」と、治五郎先生、ベッドの上でご満悦。「そろそろヤツを東京に呼び戻すときかもしれんぞ」と、日本開催に涙ぐまんばかりの可児さん(古舘寛治)に。「ヤツ? まさかスースーハーハー?」と可児さん――重なる金栗四三(中村勘九郎)のランニング姿。「オリンピックといえばあの男、ミスターマラソン、金栗四三!」と治五郎先生。
 ――そのころ四三は、故郷熊本で弟子の小松勝(仲野太賀)と共に走っていた。そして、田園風景の中で、看板を見つける。徐々に見えてくる文字、そこに書かれていたのは。
「カフェ ニューミカワ」
 ミカワ! しかも、ニュー!
 ↑ここも、二回目視聴時、先取り思い出し笑い。というか、もはや「美川」と聞くだけで笑ってしまうほど、勝地涼演じる美川秀信はキャラが立ちすぎている! 美川は、鉄道車両を転用したカフェを開いていたのだった。さすが流行りモノ好き(笑)。浅草でブロマイドを売っていて関東大震災に遭遇した美川は、ヤクザの女と大阪に駆け落ち、広島まで逃げ、山形に行き…と、その土地土地で覚えたとおぼしき方言を駆使しながら自分語り――それで『仁義なき戦い』なんですな。美川氏は小松くんに、「君の夢は何だね」と訊く。「オリンピックです!」と熱く語り出す小松くん。メダルを取りたい! …遮る美川。僕が君の夢について聞いたんだから、今度は僕の夢について聞く番! …美川。めんどくさすぎる。じゃあってことで、美川’sターン。夢は、「大陸逃避かな。満州だよ、これからは」だそうです。…美川。いかにも満州に行きそうな…。そして美川の話は「長くなりそう」という理由で音声途中で切れて割愛(笑)。
 ムッソリーニは説得できた。自信満々の杉村は、サングラスを颯爽とかけてオスロ総会に行く気満々だったまーちゃんを、副島さんの看病との名目でローマに居残りさせる。しかし。初めての総会。しかも、ただ一人の東洋人。「まいったな、河童の田畑でもいいから連れてくればよかったよ」と、五りん(神木隆之介)がその心の声、代弁。そこへ、“イタリアの嘉納治五郎”と称されるボナコッサ伯爵、到着。開会〜。
「おい、まだローマ(立候補地に)入ってるよ」(杉村心の声)
 杉村の動揺をよそに、ボナ公(←杉村の呼び方)、「(ローマでの開催に)絶大な自信をもっている」と堂々たるスピーチ。話、通ってないのか? 動揺のあまり、治五郎先生がまーちゃんに託した最終スピーチ予定稿を読むのをやめ、ムッソリーニが譲ってくれたと発言してしまう杉村。一同、ガヤガヤ。スポーツについては政治に口出しさせない! とボナ公。
「TABATA SUGU KOI」
 話が違うじゃないかと焦る杉村は結局、電報でまーちゃんをオスロに呼ぶのであった。責任を感じ、自分がもう一度ムッソリーニに会う! と立ち上がろうとする副島さん←無理です。じゃあ自分が! と、「ムッソリーニいる? 話したいの」と無謀にも押しかけるまーちゃん←無理です。っていうかまーちゃん、相手は陽気と言えども独裁者だから! やはりオスロに飛ぶことに。――一方、オスロの杉村は、イタリア公使ロドロを味方につけ、ボナ公を説得しようとしていた。字幕ばかりじゃなんでしょう、ということで、ここで、吹き替えスタート。ボナ公の声は、金髪のかつらまでかぶった五りんの兄弟子今松(荒川良々)が担当いたしまする〜。開催地に投票するのは委員であって首相じゃない! そんな杉村とボナ公の激論に、ロドロも加わり…と、ロドロの声で師匠志ん生(ビートたけし)登場〜。「地中海に沈めちゃうぞ」…この吹き替えシーン、最高でした。最後に師匠兄弟子五りん、三人そろって頭を下げるのも愛らしく。
 開催地投票日。
 IOC委員になって10年、オリンピックはスポーツマンシップによって支えられていると思ってきたが、もうそうではないようだ、不本意ながら、不本意ながら、イタリアは東京に投票する、と、ボナ公、無念で泣きそうなり。またもや一同、ガヤガヤ。「政治的圧力をIOCは認めるわけにはいかない」とラトゥール会長。杉村、大反論。しかし、かえって反感を買うばかり。「なぜカノーは来ないのか? なぜカノーは来ないのか? 彼が来たならこんな事にはならなかった」とラトゥール。――投票、延期。
 そこへまーちゃんが駆けつける。日本語交じりの英語で、帰り際の委員たちとコミュニケーション。――対比。多言語を駆使する杉村と、言葉はできないながらも何だかんだ言って世界の人たちとコミュニケーションを取るのがうまいまーちゃんと。杉村はまーちゃんに語る。日本への一票は嘉納治五郎への一票だった、と。まーちゃんは知っている。ロス五輪、嘉納治五郎に背負い投げされたい人で、長蛇の列ができる人気ぶりだったことを。「俺はイタリア語も英語もフランス語もできるが人望がない。嘉納治五郎にはなれん」と杉村。「なれんし、ならんでいいでしょう」とまーちゃん。「お前はなるよ」と杉村。「ごめんこうむるよ、あんな迷惑ジジイ」ってまーちゃん失礼だな。嘉納治五郎はお前を買っているからここに送り込んだんだと杉村。自分はただ、日本を頼むと言われたので、とまーちゃん。日本を、お前に? 高らかに笑う杉村。
 ――「投票延期」を告げる新聞記事を目にした治五郎先生は、恐る恐るベッドから立ち上がる。
 熊本。「美川と会いよっとね」と、四三に激怒するスヤ。あんなの友達じゃない、ゴキブリ、居候のろくでなし、貧乏神と、すごい剣幕。「美川が何をした?」と美川。スヤさん、昔は『坊っちゃん』のマドンナのようにさわやかだったのに…。そんな美川に四三さんはウィスキーを所望。スヤについて愚痴り出すからもう酔っぱらったのかと思いきや、飲む前にすでに酔っぱらい状態。そして、「俺は家出する」と――いや、家出って、貴方もう「不惑」の40過ぎですよね? だって治五郎先生から、東京にオリンピックが来るという手紙をもらってるし!
 東京市庁舎。東京市長・牛塚虎太郎は困っていた。――開催地、どうなるの? 私が肺炎になどならなければ! 副島さん、直立不動。貴方、治すために注射を300本も打ったじゃないですかと、かばうまーちゃん。そこへ治五郎先生が杖をついてやってくる。さすがにラこの身でトゥールに会いには行けない。そこで。「また極論なんだがね」「出たよ、治五郎の極論タイム」とまーちゃん。「こないだもこの時間だったよね?」――そうでした、まるで水戸黄門の印籠タイム(笑)。今回の極論は。ラトゥールを東京に呼んだらどうだろう。謝りついでに視察してもらおう。「治五郎っぽい」とまーちゃん。「治五郎っぽいって何だよ、私は治五郎だ」と治五郎先生――何だか、二人の、一筋縄では行かない師弟の如き絆を感じた今回。もうラトゥールに手紙、出しちゃったもんね。「ずうずうしいな」とまーちゃん。しかし、治五郎の手紙はラトゥールの心を動かし、彼は来日することに。「海を越えたジジイ同士の友情は侮れん」と言うまーちゃんに、日本に恩を売ろうというヒトラーの深謀遠慮が裏にあるのでは? と河野一郎代議士(桐谷健太)。オリンピックは盛大な運動会だ、とまーちゃん。いったいいつから、国の威信をかけてやる大事業になったんだろう。田畑さん率いる水泳チームが、ロス五輪でメダルをたくさん取ったからじゃない? とマリーママ(薬師丸ひろ子)。「違う、違うって、俺は」と言うまーちゃんに、いいじゃないか、オリンピックが決まればあと四年は戦争が起こらない、軍部への歯止めになる、と一郎代議士。
 招致委員会正式に発足。その記者会見で、こんな質問が出る。
「オリンピックはお国のためになりますか」
 まーちゃんに、高橋是清(萩原健一)の同じ質問がフラッシュバックする。まーちゃんの答えは同じである。なりません。
「国のためじゃない。若い者のためにやるんです」
 ――熊本。まだ暗いうち、「スヤへ」と書いた書き置きに押し花を載せ、金栗四三は家出しようとしていた。一方、若き日の志ん生こと孝蔵(森山未來)の暮らしもだいぶよくなって、ナメクジが出る長屋から引っ越ししようとしている。時は1936年2月26日。
「2月26日」
「2月26日」
 と、繰り返す志ん生。
 1936年2月26日。雪の朝。――そこに、軍靴の音が聴こえてくるのだった――。
2019-09-01 23:59 この記事だけ表示
 「高円寺阿波おどり」のお囃子が聞こえてくる中、18時からのNHKBSプレミアムの放映を視聴、そして「阿波おどり」へ。20時、今年の「阿波おどり」終了の瞬間――最高に盛り上がる瞬間――を踊り手、観客で分かち合ってから、50メートルくらい家まで“いだてん”ダッシュして再び視聴〜。思った。阿波おどりも、オリンピックと同じようなお祭りである! というわけで今宵は、街にいまだ阿波おどりの熱気残る高円寺よりお届けしております。阿波おどり、惜しくも見逃しちゃった方は、歌舞伎座で27日まで上演中の『八月納涼歌舞伎』第二部「東海道中膝栗毛」へどうぞ。松本幸四郎と市川猿之助が演じる名コンビ“弥次さん喜多さん”が、とろろまみれになりながら、阿波おどり、踊っちゃってます(なぜ、とろろかは、観てのお楽しみ!)。金栗四三(中村勘九郎)ならぬ女アスリート「金栗お三四」(おみよ、演じるは弟・中村七之助!)も登場、『いだてん』オープニングテーマに乗って花道を走り抜けちゃいますぞ〜。
 第三十二回『独裁者』。
 ロサンゼルス・オリンピックで大活躍した日本の水泳チーム。しかし、永田秀次郎東京市長(イッセー尾形)は、銀メダルを獲得した前畑秀子(上白石萌歌)に、「なぜ金メダルを取って来なかったんだね」と声をかけるのだった。「だったらあんたが泳いでみればいい!」とまーちゃん(阿部サダヲ)。…あひるもホントそう思う。そして、「これは選手を讃える会じゃないのか」と、岸清一(岩松了)も食ってかかる。国を背負って闘っている者は、選手も、我々役員も命がけなんだよ! いつになく熱い岸会長。永田市長のことを、延びたうどんみたいな顔だの、それじゃうどんに失礼だ、さっさと引退して縁側で俳句を詠めだの、言いたい放題。珍しく、まーちゃんの方が止める展開に。「申し訳なかった」と永田市長。期待していたのは自分だけじゃなく、全国民だ、と。悪気はないんだよな…。その言葉通り、秀子さんのもとには日本中から、四年後の捲土重来を期す手紙が寄せられ。「わからへん」と秀子さん。四年後には自分は22歳、そんな歳まで泳いでいる女なんていない、それじゃあ河童の秀ちゃんだ、と。そんな秀子を案じ、夢枕に、死んでしまった父と母が立つのだった――このあたりのシュールともいえる展開が、ツボ。「うち、悔しいん?」「そんなに金メダルが欲しいん?」と両親に尋ねる秀子さん。やり始めたことを途中でやめたらあかん、とお母さん。銀メダルって途中? 途中よ。プールサイドに立つ秀子さんを、まーちゃんが叱咤激励し、秀子さんは浴衣を脱いで水着姿になって泳ぎ始める。――夢。がばと起きた秀子さんは、夢の中同様、浴衣を脱いで水着姿になり、「悔しい! 悔しい! 悔しい! 勝つんだ! 勝つんだ! 勝つんだ! 金メダル!!!」と泳ぎ始める。こうして、四年後に向けた秀子さんの闘い、早速スタート。…いや、「前畑ガンバレ」に至るまでに、こんな物語があったなんて。事実の断片として知っている歴史、その流れを知ることができる楽しさ。これぞ、歴史を扱う大河ドラマの醍醐味じゃんね!
 ロサンゼルス・オリンピックの余韻にいまだ浸るまーちゃんは、体協理事のポストになおも消極的。ロスに行けなかった野口源三郎(永山絢斗)はそんなまーちゃんに不満をぶつける。ピンポンボールとセリフを同時にラリーする二人。「お留守番ピック」ってまーちゃん、貴方は口から生まれてきたようなお方。日本人がスポーツに関心をもち、熱狂してくれるのはいいことだ、しかし、と、何だか違和感を覚えているまーちゃん。そこへ、岸会長。ロサンゼルス・オリンピックの報告と、東京への招致について、天皇陛下に御進講してきたのだった。天皇陛下に会えた喜びを語る岸さん。
 しかし。ドイツの首相になったヒトラーは、ゲッベルスの助言を受け、1936年にベルリンでオリンピックを開催することに。1936年の開催地がローマに行って、1940年は東京に来る…との当ては外れた。しかも、招致推進派の永田市長は、部下の汚職の責任をとって辞職。「いいオリンピックにしてください」との言葉をまーちゃんに残して。そんなまーちゃんの前に、「Stupid kappa」なんて英語でしゃべるキザな男、現る。「表へ出ろ!」と言うも背負い投げを食らうまーちゃん。キザ男の正体は。元国際連盟事務次長で、日本の国際連盟脱退により失職した杉村陽太郎(加藤雅也)。柔道六段で、嘉納治五郎先生(役所広司)の弟子。そして流れで招致委員にされるまーちゃん。すっかり治五郎先生にかわいがられてます。
 新聞社でもオリンピックの思い出話ばかりのまーちゃんに、上司の緒方竹虎(リリー・フランキー)は、回顧録を書け、ただしそれは夜、昼は仕事しろ、と。まーちゃん、上司の言うこと半分くらいしか聞いてない(笑)。「また行きたいなー」と回顧録を執筆するまーちゃんに、菊枝さん(麻生久美子)、毎夜おいしい夜食を差し入れ。さすがに菊枝さんが気になってきたまーちゃん、バーのママ、マリーに打ち明け話。俺は、水泳に夢中になったように、あの女に夢中になれるのか。「酒井菊枝、地味な女」の発語が実にリズミカルで聞いていて心地よい、菊枝さんには大変失礼な言葉なれど。マリーの占いは、お見合い相手とその人、どちらとも結ばれないわ。しかし、ママの占いはいつも逆に的中、ということは、どちらとも結ばれる!? 「気になっている人がいますので」と、露骨に菊枝さんを見ながら竹虎さんからの見合い話を断るまーちゃん。残念だけど…と、菊枝さんにお断りの話をする竹虎さん。あれ? と、やっとちゃんと見合い写真を見るまーちゃん。菊枝さんこそ竹虎さん紹介の見合い相手でした!  って、おいおい(笑)。「結婚しよう!」とまーちゃん、即座にプロポーズ。菊枝さん、うれしそう。ということで、めでたく二人は結婚〜。レースのあしらわれたブラウス、そしてウェディングドレスにヘッドドレス、菊枝さんのレトロな装いがシックで素敵! そして、「口が悪いということは、心は口ほど悪くないということですから」と、日ごろ無口なれどぼそっと口にする言葉が、深い。新聞社での結婚式の余興には、「古今亭志ん馬」と名乗る若き日の志ん生こと孝蔵(森山未來)も登場、まーちゃんと悪口の応酬〜。孝蔵役の森山未來、顔にますます凄みが出てきた。ラジオ出演などで何とか食いつないでいる孝蔵、その噺を、金栗四三のいる熊本の池部家でもラジオで聞いており。そこには、四三の著書『ランニング』を読んで感銘を受け、九州一周マラソンをしようと、小松勝(仲野太賀)なる青年の姿が。彼の両脚をいきなりしげしげと検分、運動足袋をプレゼントする四三さん。二人して「ヒャー」と水浴びし、42歳の四三さんも共に九州一周へ。…そして、熱を出して高座を休んでいた五りんも、「死んだ親父の言いつけなんで」と水浴び。…ということは?
 新市長牛塚虎太郎(きたろう)のもと、東京は「悲願」としてオリンピック招致を目指すことに。しかし、岸さんは入院。そして、東京への招致を夢見つつ、「きれいな花だ」の一言を遺し、急逝。死去の報せを帰国の船上で知った治五郎先生は、涙も出ない、男泣きは君の専売特許だったもんね、と。その遺影に、まーちゃんも、体協理事となり、オリンピック招致に尽力することを誓う。シニカルに見えて、実は感激屋、熱い篤い男だった岸清一会長――演じる岩松了の新たな魅力を知ることのできた役柄でした。ちなみに、岩松了作・演出の最新作『二度目の夏』は今週、名古屋と神奈川にて公演。ラスト十分くらいでのあっ! と驚く展開、お見逃しなく。ご本人も、犬好きの近所の電気屋役でいい味出してます。
 さて。アテネでのIOC総会から帰国した治五郎先生は、いつになく悲観的だった。このままじゃローマには勝てん。「独裁者がいると仕事が早いね」と、牛塚市長。君も自分の意見を言え! と言われ、まーちゃんは弁舌を奮う。掲げたテーゼ。
…誰のための、何のための、オリンピックか。
ただのお祭りですよ。走って泳いで、それでおしまい。オリンピックに何を期待してるの?
 簡単に考えましょうよ。このままではローマに勝てない。逆らわずして勝つの嘉納さん、どうする? と聞かれ、治五郎先生、一言。
「譲ってもらうのはどうだろう」
 …誰に? 何を?
 ムッソリーニに、オリンピックを。直接会って譲ってくださいって頼んだら、案外譲ってくれるかも。
 …仰天。意表を突かれた。そして爆笑!!!
“お得意の開き直り発言”と、作中描写されていましたが。譲ってくださいって! そういうもんなの、開催地って?
「よし、譲ってもらおう!」
 こうと決めたら治五郎先生、早い。日本の魅力を伝える資料を作れ、写真集がいいと、まーちゃんに命じ。いや、もう、演じる役所広司がフルスロットルで加速して、オリンピックに取り憑かれた男のある種の狂気を体現。そんな役所広司が、愛おしい。譲ってもらおうって…。譲ってもらおうって…。今も、思い出し笑いが止まらない。
 見事、治五郎先生も絶賛の写真集『日本』を作成したまーちゃん――阿部サダヲの目にも、次第に、オリンピックに取り憑かれた男のある種の狂気がきらめくのを感じた今回。しかし。写真集を手に、海外を説得しに回ろうと立ち上がった治五郎先生の身に、異変が――?
 『いだてん紀行』。出ましたね、ジャパン・オリンピック・スポーツ・スクエアの岸清一の銅像。子孫の方も、銅像の姿に似ていたのでした。
2019-08-25 23:29 この記事だけ表示
 ええ回やった…(笑)。タイトルバックまでに泣いちゃったじゃんね〜、二回観て二回とも。
 久々登場の金栗四三(中村勘九郎)。養子に入った池部の家で仕事に励み、じゃなかった、押し花に興じ。あひるの記憶が確かならば、押し花しているときの四三さんは、あかん。そんな四三さん、ロサンゼルス・オリンピック、女子200メートル平泳ぎ決勝、前畑秀子の実感放送が始まると聞き、大急ぎでラジオの前に。
 レース前、相変わらずまーちゃん(阿部サダヲ)のテンション、高っ。そして、秀子さん(上白石萌歌)も落ち着かない。そんな彼女を、チームメートは励まして言う。緊張したら、まーちゃんの顔を見て、きゅうりを食べているところを想像してみて、と。というわけで秀子さん、タバコをくわえるまーちゃんを、きゅうりをかじるまーちゃんに、幻視。神様に祈る。どうか、2着、3着に入りますように――。
 泳ぐ姿が、気持ちよさそうだな…と思った。
 ここでタイトルバック!
 第三十一回『トップ・オブ・ザ・ワールド』。
 レース中、またもや係員に、プールサイドに近づきすぎないよう止められるまーちゃん←おなじみの光景(笑)。日本食レストランで、日本人が西洋人に勝てるわけがないとまーちゃんに言った日系人のウェイトレス、ナオミ(織田梨沙)も、まーちゃんにもらったチケットで前畑の泳ぎを観にやってくる。白熱したレースに、次第に声援を送り始めるナオミ。ゴールの瞬間−−無音ですべてが展開して、前畑秀子が耳に入った水を抜いた瞬間、うわあっと歓声が聞こえる演出がいい。僅差で、2位! これが日本女子初の水泳種目でのメダル。「よく頑張ったぞ、前畑くん」と、まーちゃんも素直にねぎらう。「神様が助けてくださったのです」と、実感放送で秀子さん。闘争心がなさそうなのに、あっけらかんと実力を発揮してしまう感じが、いいなと。うれしそうにラジオを聞き、ラジオをなでて秀子さんをねぎらう四三さん。
 死角と思われていた男子100メートル背泳ぎで、日本は金銀銅を独占! 泣いてすがってしまい、嘉納治五郎先生(役所広司)に「しっかりしろ」と言われる岸清一(岩松了)。客席の日系人の間から、自然流れ出す「君が代」の合唱。日本人選手の活躍に、IOCのラトゥール会長もびっくり。そんな彼に、治五郎先生は言う。日本は急に強くなったのではない。日本には400年の伝統をもつ古式泳法がある、これは人と競うためにではなく、水と一体となるためにあるものであると。観てみたいというラトゥールに、お見せしましょうと治五郎先生。そういうわけで、エキシビション、決定〜。「駅舎美人?」とまーちゃん。…カタカナに弱いタイプ? 鶴さん(皆川猿時)以下、水泳チームが乗り気な中、いまいちやる気のないまーちゃんに、「泳げんのとちゃいます?」と、”河童と呼ばれている割にまーちゃん泳げないかもしれない疑惑”をぶつけるノンプレイングキャプテン高石勝男(斎藤工)。
 続く男子1500メートル自由形でも日本は金銀メダルを獲得。そして、200メートル平泳ぎ決勝前夜。寝られず、鶴田義行(大東駿介)にしりとりしようと持ちかける小池礼三(前田旺志郎)。「寝ろ」と言われ、「ロサンゼルス」と、先輩の語尾に勝手にしりとり。そんなこんなで決勝〜。鶴田は高石に言っていた。今回は来るんじゃなかったと。小池の練習台として来たけれども、ついて行けず、かえって気を遣わせていると。けれども、彼は決意する。やるか、老体にムチ打って、と。
−−抜かれなかった。抜かせなかった。小池に。鶴田1着。アムステルダム・オリンピックに続き、二大会連続金メダル! …自分の役目は小池くんに一位を取らせることだったけれども、実は、一日一本だけ勝つ気で本気で泳いでいた。でも、いつも勝てなかった。今日は、彼は年寄りに気を遣ってくれたのだと思う−−と鶴田先輩。そう語るときの、大東の表情がとてもいい。人との勝負ではなく、己との闘いに勝った人間の清々しさ。そして、レースの描写、泳ぎの描写が、とても美しかった。スポーツに躍動する人間の心身、その美しさをしみじみと感じた――。
 お待ちかね、エキシビション〜。まーちゃんもふんどし姿で参加! 手と足を後ろで縛ってそのまま泳ぐ「手足からみ」に始まり、「いな飛び」、「大抜手」「一重伸し」等々、…懐かしい。小中学生のとき、学校でのデモンストレーションで見たあれあれ〜。同じ学校出身で、やはり日本泳法になじみのある母は、テレビの画面を見ながら昔覚えた型を実演しており。そしてまーちゃん、泳げたよ。河童の如くスイスイと日本泳法を。最後はみんなで、立ち泳ぎしながら文字を書く「水書」を披露〜。痛快痛快! これぞ、理想的なエキシビション。勝者が、その競技について、己の信じるところ、思うところを表明する場としての。その表明によって、その表明が与える感銘によって、その競技はますます発展していく。エキサイトした海外選手も次々とプールに飛び込み、花火も上がり、これぞ平和の祭典なり!
「オリンピック最高!」「帰りたくねえなあ」と、まーちゃん。そんな彼に、選手村の黒人守衛デイブは聞く。ここに貼ってある「一種目モ失フナ」って、どういう意味? 「所詮戯言さ」とまーちゃん。目標を剥がした下にあったのは。「オリンピックで大切なのは、勝つことではなく参加することである」との、有名なクーベルタンの言葉――。
 ロサンゼルスを旅立つ水泳チームのバスを、日系人もアメリカ人も、日の丸を振って讃える。そして、バスを止めた日系人のおじいちゃん曰く。自分は今日初めて、白人から話しかけられた。日本の水泳選手はすばらしいと。−−日系人はそれほどまでに、白人社会に受け入れられていなかった。ナオミも、「ミスター・カッパ」とまーちゃんに呼びかける。日本人と言うだけで、どんなに肩身の狭い思いをしてきたことか。でも、祖国を見直したと。己のルーツに誇りを持てた人々は、往来で叫び出す。「俺は日本人だ!」「I am Japanese American!」と。その声に、周りの人々も、誇りをこめて、「I am Irish American!」等々、己のルーツを叫び出す――観ていて、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の、祈りのように美しいナンバー「サムホエア」を思い出した。人種を越えて、人々が分かり合い、共に生きることのできる”どこか”−−。「俺も日本人だ!」と叫び、帽子を飛ばすまーちゃん。「私も日本人だ!」と、そこに現れた治五郎先生も。まーちゃんより高い場所に昇って、東京にオリンピックを呼べたら、皆さんを招待します! と宣言。出た! 治五郎先生の大きく出たなシリーズ! 「知らないぞ〜」と岸清一の見せる何とも微妙な表情が好き。それにしても治五郎先生、いつもいいところで登場していいところを持っていくな(笑)。
 前畑秀子さんの活躍に刺激を受け、奇声を上げての四三さんの冷水浴、ひさびさ復活〜。再び走り始めて。
 新聞社に戻って来たまーちゃん。誰もいない職場で、お土産の板チョコをそれは無造作に配る姿を、一人、菊枝嬢(麻生久美子)は見ていた。その前で、大横田勉(林遣都)に金メダルを取らせられなかったことを悔やみ、床に手をついて涙ぐむまーちゃん。俺が牛鍋を食べさせていなかったら…。一生悔やむのだろうな。田畑のバカヤロメ。…メダルの鬼が、人間に戻った瞬間。それを見ていた菊枝嬢は言う。「全部取らなくてよかったと思います、私は」←これが、『いだてん』での菊枝嬢の第一声! これからの目標がなくなってしまうし、一つ残したのは、田畑さんの品格かと。って、いいこと言ってくれてるのに、「変な声」ってまーちゃん、そりゃないぜ。早速、「品格です」と他の人に菊枝嬢の言葉を引用するまーちゃん調子のいいお方。そして、事件が。東京市長永田秀次郎(イッセー尾形)が、「なぜ金メダルを取って来なかったんだね」と前畑秀子に。はたしてまーちゃん、どう出る? …というところで次回のお楽しみ〜。来週の土日は「高円寺阿波おどり」だよ!
2019-08-18 23:59 この記事だけ表示
 クーラーによる冷えに大苦戦しておりますが、多少の夏バテは『いだてん』で吹っ飛ばすぞ〜。
 1932年、ロサンゼルス・オリンピック開幕! 参加国は37か国…に、思う。オリンピックはまだまだ、一部の余裕のある国々にとっての祭典でしかなかったのだと。「始まったら終わる」「ずっといたいよ」と、選手村にてオリンピック堪能中のまーちゃん(阿部サダヲ)。…気の短い人間ってこういう考え方しますよね。あひるも、「コップに水がまだ半分残っている」ではなく、「コップに水がもう半分しかない」と思うタイプ。と、そこに響き渡る音。なんと、嘉納治五郎先生(役所広司)が柔道のパフォーマンス中〜。“ファン・ミーティング”と称し、希望者をバッタバッタと背負い投げ。そんな治五郎先生にまーちゃんは尋ねる。なぜオリンピックで柔道をやらないの? と。まだ機は熟していない、と治五郎先生。普及活動を行ない、満を持して正式種目にする、そのころ自分は100歳だ! そんな治五郎先生に、「150まで生きるぞ」とつぶやくまーちゃん。役所広司が心から楽しんでこの役を演じているのが伝わってきて、いいじゃんね〜。
 そこへ現れたNHKの河西アナ(トータス松本)&松内アナ(ノゾエ征爾)。実況放送を禁じられた二人に、まーちゃんは、臨場感を伴う再現放送を提案。名づけて、実感放送〜。アナウンサーが競技を観戦し、夜、スタジオにて、選手を招き、実感をこめて伝える。松内アナ役のノゾエ征爾、飄々といい味出してます。昨年は三島由紀夫の『命売ります』脚本・演出を担当、今年はジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』の脚色を手がけ、肩の力の抜けたユーモアセンスで文学作品と客席とを軽やかにつなぐ手腕を発揮しています。松内アナ、実感こめすぎるあまり、10秒くらいの競技を1分かけてしゃべっちゃった(笑)。そして、8月7日、水泳競技開幕〜。と、ここでタイトルバック! あざやかな入りで痛快、痛快。今宵はどこが変わったかな? とチェックするのが楽しみな、凝りに凝ったタイトルバックですが、手がけるは上田大樹。舞台では、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品でのすばらしい手腕にも毎回唸らされており。
 第三十回『黄金狂時代』。
 水泳最初の種目、100メートル自由形。応援に力が入るあまり、プールサイドに近づきすぎて係に止められていたまーちゃん。実感放送では、臨場感を出すため、バケツに水を入れて持ってきて、手でバチャバチャ、効果音。見事、金銀メダル獲得〜。リトルトーキョーでの祝賀会はまーちゃんのおごりだ! よっ、太っ腹! 牛鍋を豪勢におごるまーちゃん、前言通り、口も出すが金も出す。そこへ、IOC総会に出席してきた治五郎先生&岸清一(岩松了)が。1940年オリンピックには、東京より前にすでに9都市が立候補。なかでも力が入っているのは、独裁者ムッソリーニが招致に熱心なイタリアのローマ。ドイツのヒトラーが政権を取り、かねてからの“オリンピック無用論”通り1936年ベルリン・オリンピックを返上してくれれば、1936年の開催地がローマに回って、1940年に東京に呼べるかも…とのまーちゃんの思惑に、「ユダヤ人を公然と差別する男だぞ!」と激する治五郎先生。「スポーツが政治に屈するようなことはならん!」「平和なのは選手村の内側、だけじゃいかん」と、熱く持論を展開。あひるも熱く支持!
 女子選手の姿、自分には刺激が強すぎる〜、スポーツで発散できないもやもやもあるんです〜と、平泳ぎの小池礼三(前田旺志郎)、青年の主張。落ち着け! と思ったら、同じ種目の先輩鶴田義行(大東駿介)が代わりに「落ち着け」突っ込んでくれました。そして、寝不足でバテ気味の鶴さん(皆川猿時)のもとへ、開会式の入場行進のころから腹痛に苦しんでいた大横田勉(林遣都)が、腹が痛い〜とやって来るのであった。やばい! 俺牛鍋食わせちゃった! とあせるまーちゃん。せっかく鶴さんが食事の管理をしていたのに。…腹が痛い〜と、志ん生(ビートたけし)も。いやいや、それは、「疝気の虫」の稽古。と、ロサンゼルス・オリンピック水泳種目と、落語の噺が絡み合い始め。若き日。質に入った着物が流れないようにと、友人万朝(柄本時生)が自分の代わりに質屋に毎月お金を入れているのを知った孝蔵(森山未來)は、妻おりん(夏帆)と万朝の「疝気の虫」を聞きに行く。楽しげに聞いている妻に、孝蔵、何か言いたげ。大横田の腹痛は何とか治ったが、今度は前畑秀子(上白石萌歌)が腹痛…って、願掛けでおみくじを飲んだから。これもあんた? と鶴さんに疑われるまーちゃん(笑)。万朝の見事な「疝気の虫」に、自身を情けなく思い、「弟子にしてくれ!」と頭を下げる孝蔵。「高座下りたら人間のクズなんです!」と、おりんも。…いや、俺は二つ目であんたは真打ちじゃん、そうだったわ、とのとぼけたやりとりが絶妙なり。ということで、お金を貸してもらって着物を質から出し、万ちゃんのとりなしで師匠にも詫びを入れ、孝蔵、噺家として再スタート〜。着物を羽織る孝蔵、その照れくさそうな表情に、噺にしか生きられない、落語が好きなくせに素直に好きとは言えない、そんな不器用な人間の色気が見えて。
 大横田は胃腸カタルだった。800メートルリレー、どうする。休ませる鶴さん、温情あるな…と思っていたら、ノンプレイングキャプテン高石勝男(斎藤工)を推す鶴田やまーちゃんに、勝っちゃんでは勝てん、横山で行く、タイムがすべてです、とシビアな面も見せて。「全種目制覇して、日本を明るくするんでしょ」「奇跡なんてそんな眠たいことを総監督が言ってどうする」と厳しい鶴さんに、いつになく素直に謝るまーちゃん。鶴さんの英断が功を奏し、大差&世界新記録で金メダル〜!
 翌日、400メートル自由形。大横田は序盤ふるわず。横山じゃなくて勝っちゃんをリレーに出して、400メートルに横山を出せばよかった…と今さら悩む鶴さんをなだめるまーちゃん。追い上げる大横田。しかし。オリンピック・レコードは出したものの、勝てず。それでも銅メダル、見事なものなのですが。実感放送の場、コメントを求められ、自分は期待に応えられなかった…と謝りながら次第に泣き崩れそうになる大横田を、もうしゃべるな! と抱きしめる勝っちゃん。漢(と書いて「おとこ」と読む)。
 まーちゃんの予定稿の「金」に、「同」を書き加えて「銅」にする朝日新聞速記係の酒井菊枝(麻生久美子)。ここまで一言も発していない彼女の第一声が楽しみなり。
 女子200メートル平泳ぎ。葉巻みたいにきゅうりをくわえるまーちゃんが見守る中、いよいよ前畑秀子、登場! というところでの五りん(神木隆之介)の「今日はここまで」に、寄席の客も、テレビの前のあひるも、ガクッ。早く来週になあれ〜!
2019-08-12 00:46 この記事だけ表示
 …観終わって、しみじみ来て、涙してしまった…。18時からの回と20時からの回の二回とも…って、毎週泣いてるじゃんね〜。と、本編に入る前に、先週の続き。
 前回ふれましたが、7月30日、日本青年館ホールにて、専科の轟悠主演の宝塚月組公演『チェ・ゲバラ』、始まりました。あひるはその初日を観劇〜。舞台は中南米、ということで、チェ・ゲバラのみならず、あちらこちらでヒゲ祭り。濃い。しかも。チェ・ゲバラは、若いころはヒゲが生えていなかった。もみあげは立派なれど。その後、口ヒゲの段階を経て、万人知るところのあの容貌になっていた。ヒゲに歴史あり。それにしても、轟悠は、ヒゲも、そして若い役も、いつまでも似合いますな。
 世界をよき場所にしようと理想に燃えた熱い人々のドラマを堪能し、日本青年館を出て千駄ヶ谷駅方面に歩き出せば。隣に、「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」のビルが建っており、その真ん前に、岸清一の像が! …似てる。『いだてん』の、岩松了に。続いてクーベルタン男爵の像も発見。…え、これは、『いだてん』のクーベルタン男爵(ニコル・ルンブレラス)をそのまま像にしましたよね? と思うくらい、酷似。嘉納治五郎先生の像もありました〜。そして、全員、ヒゲ。思いもかけず、神宮ヒゲ祭り。以上、あひるの『いだてん』ヒゲ紀行でした〜。
 第二十九回『夢のカリフォルニア』。
 五りん(神木隆之介)は二つ目に昇進〜。そんな彼をじとーっと見ている二つ目居残りの兄弟子今松(荒川良々)の心境や如何。
 1932年、オリンピックが開催されるアメリカ・ロサンゼルスに旅立った日本水泳チーム。カリフォルニアの明るい日差し。世界各国から選手村に集まった人々。「これ、理想郷じゃんね!」と喜ぶまーちゃん(阿部サダヲ)、選手団を率いて華麗にダンシング! おお、ミュージカル仕立て。まーちゃんセンターの決めポーズも決まった! 先週の5・15事件のようなシリアスな芝居から、今回のようなミュージカル風まで、毎週まるで違う作品を観ているみたいで、幅の広さが、いい! 「オリンピック最高〜!」と、普段からテンションが高いまーちゃん、さらにハイテンション。「誰か止めて〜」と、鶴さん(皆川猿時)。
 しかし。当時のアメリカでは日系人排斥の動きが高まっており、プールに入れば、日本人と一緒の水に入りたくないとアメリカ選手が引き上げる始末。「貸し切りだ!」と、あくまで前向きなまーちゃん。日本語でケンカを売りに行ったり、得意の肯定⇔否定コロコロも「違う! ノー! イエス!」と日本語とブロークンな英語が混ざったり。そんなまーちゃん率いる日本水泳陣を、昨年の日米対抗戦の雪辱を期すアメリカチームのキッパス以下は分析、研究していたのだった。
 アントワープのときは日本泳法でバカにされたのに、研究されるまでになるとはすごいじゃないか! と、日本の嘉納治五郎先生(役所広司)も大得意。1940年オリンピック開催地として立候補するために、ロサンゼルスに渡ることに。ここで、あひるの疑問が解ける瞬間が。あんなにオリンピックに行きたがっていた可児さんこと可児徳(古舘寛治)は、はたして一回くらいオリンピックに行ったのかどうか。ここで、「一度も行っていない」発言が本人の口から。いや、ずっと気になっていたのでした。
 選手村で、盆踊りめいた踊りを踊ってみせたり、インドの人々とボリウッド風なダンシングを繰り広げたり、まーちゃん、どこに行ってもマイペースで楽しそうなり。しかし、選手起用をめぐって、水泳チーム内ではさざ波が。オリンピック出場経験のあるベテランの高石勝男(斎藤工)と鶴田義行(大東駿介)は、若い選手たちの台頭に心穏やかではない。ノンプレイングキャプテンって何だよ! と荒れる高石。
 「ディスイズ何の天ぷら?」、まーちゃんの珍妙英語、おもしろすぎ。食べてみたらおいしくて、「キューカンバーの天ぷら、アゲイン」。いや、まーちゃんみたいな人は、たとえ言葉ができなくても、どこに行ってもやっていけますな。「やってみないとわからんからおもしろい!」と、日本チームの勝利を高らかに宣言。そんなまーちゃんが貼り出した目標「一種目モ失フナ」の紙をたびたび破り捨てていたのは、…なんと、鶴さんだった。「メダル一枚くらいくれてやったっていいじゃないか!」と、まーちゃんに物申す鶴さん。…いや、あひるも、なんでまーちゃんそんなにメダル至上主義者になっちゃったの〜と憂えていた。鶴さん、代弁ありがとう。
そんな鶴さんに、まーちゃんは本心を明かす。満州事変、5・15事件、今の日本は暗いニュースばかりだ。スポーツでニッポンを明るくしたい、と――。そんなまーちゃんの真摯な想いを、高石も聞いており。
 運命の選手選考会。
 必死に泳ぐ高石を、みんなが口々に応援。最初は日本チームにそっけない態度をとるも、彼の夜の秘密の練習を見逃すまでになった黒人のプールの守衛さんまでもが応援だ〜。高石の力泳に心打たれ、しまいにはまーちゃんまで応援。泣くまいとする涙顔で、「ありがとう、お疲れ」と口にするまーちゃん。これぞ、鬼の目にも涙〜。
 ――選ばれなかった。そして、ノンプレイングキャプテンとしての自分の役割を生き始める高石。…“世代交代”と言葉で言うのは簡単だけれども。選手それぞれに人生があり、積み重ねてきた日々があり…。一人一人に注がれる、優しく温かな眼差し。
 そのころ、治五郎先生は英語でスピーチ、東京は正式にオリンピック開催地に立候補。そして、遂に、ロサンゼルス・オリンピック開幕だ〜!
2019-08-04 23:59 この記事だけ表示
 …観終わって、ずーんと来て、涙してしまった…。
 第二十八回『走れ大地を』。
 翌年となったロサンゼルス・オリンピックに向け、「メダルガバガバ大作戦」を立てたまーちゃんこと田畑政治(阿部サダヲ)は、その前哨戦として「日米対抗水上競技会」を神宮プールで開催することに。結果は日本の圧勝、なれど満足していないまーちゃん。体協の理事に推されるも、「よけいな看板はまっぴらです」と即座に断る。理事は大っ嫌いだ、ヒゲはやして…と宣うまーちゃん。まるで早口言葉のようにテンポよくリズミカルな阿部サダヲのセリフが心地いい。そんなまーちゃんを、「ヒゲは生やさんでいい!」と嘉納治五郎先生(役所広司)、一喝。…いえ、宝塚歌劇団にも、ヒゲがこの上なく似合う理事、轟悠がいてですね(笑)。『風と共に去りぬ』のレット・バトラーやアブラハム・リンカーンといったヒゲ役を得意として来ましたが、火曜日には新たなヒゲ役に挑む主演作『チェ・ゲバラ』が日本青年館ホールにて開幕〜
 治五郎先生は、永田秀次郎東京市長(イッセー尾形)との会合にまーちゃんを連れていく。「関東大震災から立ち直ったニッポンを世界に見せたい!」と、東京でのオリンピック開催につき、大いに意気投合する市長&治五郎先生――永田市長のセリフに、来年の東京オリンピックに寄せる作者の想いを感じて。渋る体協の岸清一会長(岩松了)を、ストックホルム・オリンピック参加だって私の戯言から始まった話だよ! と熱く説得、見事了解を得てハグする治五郎先生。
 しかし。1931年。満州事変勃発――。
 ここの描き方が実に巧い。30年後の戦後に飛ばして、軍部の自作自演につき、当時はどう報道されていたんですか――と、五りん(神木隆之介)に尋ねさせる。――当時は真実を報道できない。新聞は軍に目をつけられている。ロサンゼルス・オリンピック応援歌募集で頭がいっぱいのまーちゃんは「不謹慎だぞ」と言われる。え、これって、関東軍の仕業なの? とびっくりするまーちゃん――まあ、政治部の記者として、その反応はどうかと思うが。そんなまーちゃんに、新聞はもうだめだ、庶民の暮らしを変えられない、自分は代議士になると告げる河野一郎(桐谷健太)。本気で記者を続けるつもりなら、特ダネでもとってみろと言われ、ノコノコと高橋是清(萩原健一)のところに赴くまーちゃん。アムステルダム・オリンピックのおみやげと称して木靴を渡し、その木靴で頭を叩かれる(笑)。ここのやりとりがもう、役者同士の心の交流そのままがにじみ出ているというか、ショーケンが本当にいい顔して、ニヤッと笑うんですよね…。是清に対してはまーちゃんも、「はい、いや、はい」と、得意の肯定⇔否定コロコロも一応丁寧語。そんなところに犬養毅がやって来て、まーちゃん、犬養内閣成立を見事初スクープ、「田畑の記事で〜す」と得意満面。そんなまーちゃんに、「スポーツが盛んなうちは国は大丈夫だ」と言い残して新聞社を去る河野一郎。
 1932年、満州国独立。これを認めぬ政府に対し、逸る軍部。――記者出身ゆえ気さくに取材に応じたという犬養首相のもとを訪れ、5月15日のロサンゼルス・オリンピック応援歌の発表式典への出席を頼むまーちゃん。満州国を認めるつもりはない、と首相。武力に訴えてはならない。人間同士向き合って話せばわかり合えるんだよ。そして重ねて言う。スポーツはいいな、戦争は勝つ方も負ける方もつらく苦しいけれども、スポーツは勝っても負けてもすがすがしい、と。「勝たなきゃだめです」とまーちゃん。ううむ、個人的には、まーちゃんのメダル偏重主義にはちょっとついていけないのですが。
 神田YMCAプールでの代表選考合宿でも、そんなまーちゃんの態度が波紋を呼ぶ。日本人は情に厚すぎる。ベテランより、若手を! ベテランに対し、平気で「練習台になってくれ」っておいおいおい。でも、確かに、起用とはいと難しき問題なり…。
 一方、期待の星、前畑秀子(上白石萌歌)はスランプ。心配する監督の鶴さんこと松澤一鶴(皆川猿時)に彼女は言う。父母からのプレッシャーが強すぎる、と。ご両親に手紙を書こうか? いえ、彼女のもうご両親は亡くなっているんです。夜な夜な枕元に――って、お化けが出るの〜〜〜? とおびえる鶴さんいと愛おし。しかし。優しく語りかける鶴さんをスルーして、秀子の目は、若い小池禮三の練習台になってくれ――と満州から呼び戻された鶴田義行(大東駿介)に釘付けに。その秀子の目線を追おうとする鶴さんの顔芸いとおかし。鶴田は戻って来たものの、お前は連れては行くが試合には出さないとまーちゃんに言われたキャプテン高石勝男(斎藤工)がブチ切れ。なんなんすかあの人! 自分は泳げるんですか! と癇癪を起こすキャプテンをなだめる鶴さん。――まーちゃんには、何かよくわからない魅力があると。あちらこちらでやらかすまーちゃんの絶妙フォローで、今回、鶴さん大活躍〜。
 ロサンゼルス・オリンピック応援歌、48000通の中から選ばれたのは、「走れ大地を」。5月15日の発表式典のリハーサルで、指揮者がちゃんといるのに自分も指揮の真似事をしてオーケストラと合唱隊にあれこれ指導のまーちゃん。しかし。犬養毅の屋敷に暴漢が闖入。あまりに名高い、「話せばわかる」「問答無用」のやりとり。銃声。――わかっていた。5月15日に何が起こるか。そのとき、「話せばわかる」と首相が言うことも。だから、さきほど、犬養毅がまーちゃんに告げた、「人間同士向き合って話せばわかり合えるんだよ」というセリフから、胸に刺さっていた。銃を持った人間に襲われた際もあくまで対話を試みようとした人間と、そんな人間を「問答無用」の一言で撃つ人間と。そんな両者の間に、対話が成立する日は来るのだろうか――撃たれた人は、それでもなお、今の若い者を呼び戻して来い、話して聞かせることがある、と言うのだった――。
 式典は中止。その夜、犬養毅死去。
 まーちゃんは、照明の消えた夜のプールで、足で水をばしゃばしゃ蹴りながら、「走れ大地を」を一人、歌う――。
 このままでは、新聞が軍の広報になってしまう。しかし、これ以上軍に睨まれたら潰されかねない、と上司の緒方竹虎(リリー・フランキー)。こんなときにオリンピック…と言われたまーちゃんは、「こんなときだからこそオリンピック!」と高らかに宣言する。その思いは、治五郎先生も同じ。壮行会で彼は言う。こんなときだからこそ、と。国際社会で孤立しつつある日本を背負って頑張ってくれ――と。
 …背負わされているものが、大きすぎる。
 それでも、選手たちは旅立っていくのだ。ロサンゼルスの青空のもとへ――。
 何だか。なぜ、自分が今年、毎回『いだてん』について書くことになったのか、どんな使命のもとそんな成り行きになったのか、おぼろながらも見えてきた気がする今回。爆走する『いだてん』と共に、あひるも爆走し続ける所存。
2019-07-28 23:43 この記事だけ表示
 今宵も18時からBSプレミアム&20時からNHK総合で視聴〜。二回観てしみじみかみしめました。
 志ん生(ビートたけし)の思い出話。師匠の着物を質に入れて破門になった孝蔵(森山未來)、長男誕生の際に産婆に払うお金もない。
 一方、バー・ローズのママ(薬師丸ひろ子)に「30歳までしか生きられない」と占われ、次のオリンピックまで生きられない…とますます生き急ぐまーちゃんこと田畑政治(阿部サダヲ)。
 そして、“いだてん”こと金栗四三(中村勘九郎)は38歳。長男正明(演じるは、四三の幼少期を演じた久野倫太郎!)を連れて上京してきた兄の実次(中村獅童)と再会、日本橋で語り合う――橋のたもとに今もまだ残る日本橋野村ビル(設計:安井武雄)は、このころまだ建ったばかり。熊本に帰ってきてほしい、みんな待っている…と語る兄。
 まーちゃんは次のロサンゼルス・オリンピックに向けて目標を掲げる! が、字が汚くて誰も読めない(笑←と書きたいところですが、あひるが観ながら書いたメモの字、自分でも読めないぞ〜!)。監督に推されたのは鶴さんこと松澤一鶴(皆川猿時)。え、みんな俺のこと何だと思ってたの…? とショックを受けるまーちゃんに、「応援団長」「計測員」と率直な意見が。鶴さんがまーちゃんを、監督を監督する総監督に据えて事なきを得る。世界水準のプールを建設したいと直談判しに来たまーちゃんに、岸清一(岩松了)がポケットマネーを提供。よ、太っ腹! まーちゃんと岸さん、認め合う者同士のスリリングな毒舌の応酬。
 「アニキトク」の電報に、故郷へ帰るも、父のとき同様、最期に間に合わなかった四三。実次に言いたい放題だった養母幾江(大竹しのぶ)が、…もう張り合いがない…と見せる乾いた心の表現に、その哀しみの深さを知る。――甦る兄の思い出。思えば、熱苦しさに愛嬌のあるお兄さんでした。弟の才能を信じ、尽くし続けた兄。この人がずっと支えていなければ、いだてん金栗四三は走り続けてはいられなかった。劇場でも思うのだけれども、役者中村獅童は、観る側が安心して心を委ねられる包容力をもった人である。実次役で、その包容力を存分に発揮する姿を観られたのがうれしく。
 家でゴロゴロした果て、納豆売りに転身してみるも、うまく行かない孝蔵。表へ飛び出して行ってしまった妻への思いを率直に語るも、妻、聞いてたよ! そんな彼に、妻(夏帆)は寄席へ出てほしいと頼む。…孝蔵の、人と異なる才能にあふれているからこそ、不器用で生きづらい、そんなせつなさが、何だかだんだん心にしみてきて。
 そのころ、東京市長の永田秀次郎(イッセー尾形)は、皇紀2600年にあたる昭和15年(1940年)に東京にオリンピックを呼ぶことを提案される。「ピックピックピックね」、“オリンピック”が上手く言えない永田の言い間違えや、いとリズミカル。
 ロサンゼルス・オリンピックの前哨戦として「日米対抗戦」を思いついたまーちゃん。日本新記録を出した前畑秀子(上白石萌歌)に興奮し、勢い余って女子ロッカーへ。暴言を吐くまーちゃんの頬を、鶴さんがペチ。いいコンビなり。そして彼はふと気づく。――30歳までしか生きられないって言われたけど、俺もう32歳じゃん! 忙しくて歳数えるの忘れてたよ! って、何だそりゃ(笑)。早死にして妻子を悲しませたくないから結婚もするまいと思ってたけど、そうと決まれば結婚だ! すばらしい変わり身の早さ(ほめてます)。
 四三は帰郷を告げに、嘉納治五郎先生(役所広司)の元へ。そこで知った真実。父も、兄も、死ぬ前に、嘉納先生に会ったと嘘をついた…と思っていた。けれども、兄は実際、嘉納先生に会っていた。会って、豪快に投げられて、弟が世話になったことのお礼を述べていた。――改めて心にしみる、兄の想い。東京にオリンピックを呼ぶ――と聞いて、四三の心が逸らないわけがない。けれども。
 ここで、金栗四三と田畑政治、主人公同士が初めて二人きりに。三度のオリンピック、一番の思い出は? と、まーちゃん。振り返って、紅茶と甘いお菓子がおいしかったと言う四三に、まーちゃんは「聞くんじゃなかった」と。――それは、四三にしかわからない感慨である。ストックホルム・オリンピック、暑さで意識を失った彼の口に含ませられた、紅茶とお菓子の味。けれども、金栗四三の物語を観ていた私たちは、その思いを分かち合えるところがある――そんな回に、ストックホルム・オリンピック、人生のあの分岐点で彼を惑わせた幼少期の四三を演じた久野倫太郎が顔を見せている、その妙。――まーちゃんには、今はまだわからない。彼のオリンピックの物語は、これからである。
 「聞くんじゃなかった」と毒舌を吐きつつも、初めて世界で闘った日本人、金栗四三のことを認めないわけにはいかない…と、まーちゃんが独り言で珍しく素直な敬意を表明。と思いきや、四三はまだ去ってはいなかった――というオチと、先ほどの孝蔵の妻への想いの吐露のシーンとが、今回のタイトルともなっている落語の『替り目』の内容とも、そしてまた、金栗四三から田畑政治へという主役交代の替り目とも見事重なって。粋な限り。
2019-07-14 23:47 この記事だけ表示
 今日は外出していて、20時からのNHK総合での放映にしか間に合わない、はずが。ラッキーにラッキーが重なり、無事に18時からのBSプレミアムでの放映を視聴。…すばらしい回! 18時から観るよう、呼ばれたんだな…と思った。あんまりすばらしかったので20時からもまた観た!
 『明日なき暴走』。日本人初の女性オリンピアンにしてメダリスト、人見絹枝の物語。
 ありがとう、宮藤官九郎!
 関東大震災で行方不明になってしまったシマちゃん先生(杉咲花)が、かつて岡山で出会い、スカウトした人見絹枝(菅原小春)。当時としては大柄だった彼女が陸上競技に励む姿に、「化け物」だの「バッタ」だの「六尺さん」だの、心ないヤジが飛ぶ。…今から30年ほど前。言われたことがありました。正確には、後に夫となる人間に向けられた言葉ですが、「自分と偏差値同じか、もしかしたら上かもしれない女に、よく欲情するね」と。…思い出して、古傷が傷んだ。でも、私より前の世代は、遡れば遡るほどさらにひどいことを言われていたかもしれず…。私が今こうして存在するのも、志高い諸先輩方のおかげです。それにしても。東京大学の門戸は戦後になるまで閉ざされていたけれども、東北帝国大学は文部省を押し切って1913年(大正2年)に早くも女子生徒を受け入れているんですな。
 結婚して子供を産むことが女の幸福なら、私は幸福にならなくてもいい…と絹枝さんは言う。…『ベルサイユのばら』のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを思い出した。今年初め、ある外国人の男性演出家が言った。「#MeToo運動のおかげで、あなたも20年前より自分の意見が聞き入れてもらいやすくなったと感じているのではないですか」と。あひるは思った。日本にはオスカル様がいて、というか、実在はしないけれども、日本の女の子の精神的支柱として存在していて、「女にだって意見を述べる権利はある!」と、#MeTooのずっと昔から言っているしな…と。それに、20年前に自分の意見が聞き入れてもらえなかったとしたらそれは自分がまだ未熟だったからだろうとも思うし、私個人としては、日本舞台芸術界で、「お前は女である、だからお前の意見は聞かない」という人と出会ったことがない。もちろん、出会っていないだけかもしれない可能性は排除しないし、#MeToo運動の功績を否定するものでも決してないけれども。っていうか、あなたの国ってまだまだそんなに不自由なんですか? 大丈夫? …とびっくり。その演出家に、今回の『いだてん』を観てほしいものである。
 メダルも結婚もどちらも手にお入れなさい、そして女子スポーツ界に革命を! と、絹枝さんの恩師二階堂トクヨ先生(寺島しのぶ)は言う。あひるも常々そう思ってきた――恋と仕事、どっちを取る? みたいな話、好かん! どうして両方手に入れちゃいけないの? 性別関係なく、正々堂々と闘って、それぞれが自分の欲しいものを手に入れればいい。
 1928年のアムステルダム・オリンピックで、女子陸上競技も正式種目に。しかし。人見絹枝を派遣すべきか、否か。女子スポーツ普及に尽力した金栗四三(中村勘九郎)さえも、…あのプレッシャー、女子には大変過ぎるのでは…と否定的。しかし。まーちゃんこと田畑政治(阿部サダヲ)は、選手一人にプレッシャー負わせないで、監督が何とかしてやれ! と、すばらしい弁舌で人見絹枝出場を半ば強引に決めてしまうのだった。否定してすぐさま肯定する芸風で大いに印象付けた前回ですが、今回、肯定して否定するパターンと、否定して肯定してやっぱり否定するパターン、二種のアレンジ技が出ました。
 シベリア鉄道に乗り、アムステルダムへと向かう絹枝は、“姉御”と呼ばれ、男子選手の洗濯や縫物をし…って何じゃそりゃ! と突っ込もうとしたら、志ん生(ビートたけし)が「ひでえ扱いですな」って代わりにちゃんと突っ込んでくれた!
 東京とアムステルダムの時差は8時間。現地に行けず、新聞社で電信機にモールス信号による通信が入るのを待つまーちゃん。現地アムステルダムでは絹枝にめちゃめちゃメダルへのプレッシャーがかかっている――そして100メートル、決勝進めず。電信に呆然とするまーちゃん。しかし絹枝は、走ったことのない800メートルへの出場を決意する。このままでは日本に帰れない。ここで帰ったら女はダメだと言われる――と。演じる菅原小春は、瞳がとてもいい。どこか憂いの中に凄絶な決意を秘めた、強いまなざし。ドラマ映像に実録フィルムが挿入されて描かれるレースの模様――これは本当に、現実に、起きた出来事である…ということが、より強調されて。
 銀メダル!
 化け物と言われたけれども、世界に出たらそれが当たり前だった…とラジオで語る絹枝さん。「日本の女性が世界へ飛び出す時代がやって来たのです」――メダルを見せられ、恩師トクヨさんも実にいい笑顔。彼女に「ご幸福ですか」と問われ、絹枝は答える。「はい」と。――でも、絹枝さんは、レースのあった日からちょうど3年後の同じ日、亡くなってしまう。彼女に、4年後はなかった。次のオリンピックはなかった。
 …心にずーんと来過ぎて、涙さえ出なかった。
 でも。人見絹枝が跳び、走る姿に励まされた多くの人たちの心に、彼女は生きる。そして、彼女に励まされて己の人生を闘った人たちの姿もまた、多くの人たちの心を励まして…。そう考えると、死とは決して終わりではない…と思う。闘って生き、そして死んだ人たちのように、自分も闘い、そして生きようと思う。闘う多くの仲間と共に。
 だから。
 ありがとう、宮藤官九郎!
 それにしても第二部、ますますスピードアップしてスパーク! 観返してもやっぱり、泣いて笑って…。おもしろい! まーちゃんを演じる阿部サダヲの演技に、心地よく軽快なリズムがある。言いたい放題言っていてもどこか憎めない男の愛嬌。「化け物」も、阿部まーちゃんが言うと「あんた、すげえよ」という賛辞にも感じられて。水泳競技でのメダル獲得に、宙を平泳ぎして祝う姿もいとキュート。松澤一鶴を演じる皆川猿時――舞台でのイメージとは何だかちょっと違うハンサムぶりに、ドキ!――との掛け合いのはずむことと言ったら! 絹枝さんにまーちゃんが「化け物」言ったら一鶴さんが即座にペチと頬を張っていた(笑)。
 元気出た! 明日も取材!
2019-07-07 23:35 この記事だけ表示
 今宵から第二部! 18時からのNHKBSプレミアムでの放送を、久しぶりに実家でゆっくりご飯を食べながら見よう…と思いきや。阿部サダヲ演じる“まーちゃん”こと主人公田畑政治のキャラが超ハイテンション過ぎて強烈過ぎて、そんな主人公を得た宮藤官九郎の脚本のスピードがさらに加速していて、途中から口あんぐり。そして、あまりの情報量に、20時からの総合チャンネル見返しました…。
 何なのこの人〜〜〜!
 「口から先に生まれてきた」を絵に描いたような…。五りん(神木隆之介)の語りや孝蔵(森山未來)の噺さえ追っつかない。人が話しているそばからひたすらつっこみまくる。嘉納治五郎先生(役所広司)には、「彼は口が“いだてん”だね」と評されていましたが。こんな強烈な人、実人生でもあまり会ったことがなく…。
 第一部の残りのお話。パリ・オリンピックの予選会。後輩たちを励ましながら一緒に走っていたら、一位でゴールしてしまった金栗四三(中村勘九郎)。結果、三度目となるパリ・オリンピックにも出場することに。
 関東大震災後の日本橋。焼け野原になった街、でも、日本橋のたもとの赤レンガの「大栄ビル」(設計:辰野金吾)は残っている。そんな中を、田畑政治は朝日新聞社の面接へ。新聞社名物の伝書鳩が羽ばたく中、廊下を進む。入社試験でしゃべりまくるまーちゃん。「違う! そう!」と、まずは間髪入れずとりあえず否定してからすぐさま肯定する芸風? の人。入社後は、政治部なのに、運動部の記事の書き方を批判。陸上ばっかり持ち上げやがって!
 パリ・オリンピック報告会。またもや意識を失い、途中棄権した金栗四三。四三を面と向かって批判、体協の陸上贔屓に業を煮やした末、まーちゃんは体協からの水連の独立を宣言! 初対面の嘉納治五郎先生に背負い投げされても、そのときは一瞬ビビるけれども、あとあと「箔がついた」と豪語する始末。
 当時の日本は温水プールがないから、水泳は夏しか練習できない。それ以外の季節は、東京帝国大学工学部でマージャンに馳せ参じる水連の人々。しかし。彼らは見つけてしまう。床の下に、船舶実験用の水槽があるのを――関東大震災後の帝大は、工学部教授にして営繕課長の内田祥三が安田講堂はじめ今も残る多くの建物を設計してキャンパスを復旧させたのですが、そんなキャンパス内に、こんな秘密基地みたいな空間があったとは。
 日本橋のバー「ローズ」のママ・マリー(薬師丸ひろ子)に手相を見られ、「30で死ぬと出ています」と告げられて、「あと2年しかないじゃんねー」と悲観するまーちゃん。おかげで、日日新聞の記者が書き残していった新元号、忘れちゃった! あれ、何だったっけ? このくだり、志ん生(ビートたけし)の語りとまーちゃんの悩みっぷりがマッチして大爆笑! でも、おかげで新元号、「光文」と誤報せずに済んでよかった! それにしても。「普通選挙法」のスクープにも改元のスクープにも関係せず、水泳界の発展に駆けずり回っているけれども、…あの、仕事の方は?
 工学部地下にめでたく温水プール完成! 次のアムステルダム・オリンピックには水泳部のみんなを連れていっちゃる! …だが、またもや体協にはお金がない。「金がなくてやっとられん!」と治五郎先生。もう、オリンピックに参加するの、やめちゃう? そこに、まーちゃんが大金6万円を持ってくる。高橋是清(萩原健一)に直談判して、国から特別予算、ぶんどってきちゃった♡、と。スケール、デカ。口八丁手八丁、生来せわしない上に短き? 余命を生き急ぐ男、田畑政治のこれからに注目! …あ、まーちゃんが訪れた高橋是清邸は、東京小金井の「江戸東京たてもの園」(あひる大好きスポット!)に復元されていますぞ〜。
2019-06-30 23:02 この記事だけ表示