石田三成役で登場の中村七之助の優しい声色。真田昌幸役の佐藤浩市のさわやかな声――本多正信(松山ケンイチ)とのトボけ合いが楽しかった。
 徳川家康(松本潤)の悪夢に登場する際の凄み。大坂で静かに過ごす際の背中。妻と酒を酌み交わす際の顔。石川数正(松重豊)の多彩な表情を楽しむ。
 本多正信(松山ケンイチ)が見せる、生き抜こうとする力みたいなものが好き。
 「どうする家康ツアーズ」に、数正ゆかりの国宝松本城――数年前に取材で松本を訪れた際、松本城の横を通過して同じ国宝の「旧開智学校校舎」を観に行ったことを思い出し、何だか数正に申し訳なくなり――明治9年(1876年)完成の「旧開智学校校舎」は、和と洋が不思議に混ざり合った擬洋風建築の代表格の一つで、車寄せのところにある「エンジェル」というよりは「エンゼル」と呼びたい超和風顔の天使二人の装飾がチャームポイント。現在耐震工事で休館中なので、開館の折には松本城共々訪れたく。
 浮世からどこか飄々と超越しているような本多正信(松山ケンイチ)がとてもいい。金(きん)を見てさっと手を伸ばすのも、自身が金が欲しいというよりも、人間ってそんなものでしょみたいなところを表しているというか、みんな俺のことをそういう人間だと思ってるんでしょみたいなところを演じているというか、どこか覚めた風なのが。……どういう日々を送ってきたんだろう、どういう人生観なんだろう……と、何だか毎週正信に思いを馳せており。
 石川数正(松重豊)、出奔――切々としたセリフにあふれる、無念の思い。その役者人生、信念を感じさせる、芯の通った演技。
 数正の出奔を知った正信の横顔のさみしさにキュンと来た。
 石川数正(松重豊)の表情の変化。
 本多正信(松山ケンイチ)の、人生のいろいろなことを飲み込んだ上でENJOYしている感がとてもいい。物をもぐもぐ食べながらの、井伊直政(板垣李光人)とのやりとりも、自然とそこにいて相手を受け止めているような風情がとても素敵。
 石川数正役の松重豊のどっしりとした芯。本多正信役の松山ケンイチの、主演の立場で大河ドラマを知る人の明るい胆力。
 本多正信役松山ケンイチのとぼけ具合がとてもいい。出てくると芝居が弾む。
 柴田勝家役吉原光夫の男のやせ我慢(涼やかな声!)。それを受けてのお市役北川景子の女のやせ我慢。甲冑姿でセリフをりりしく決める様がオスカル(『ベルサイユのばら』)を思わせて(さすが宝塚好き!)。それを受けてさっとひざまずく吉原の勝家がアンドレに見え。
 久々登場の本多正信役の松山ケンイチの肩から力が抜けた感じの演技が軽妙でおもしろく。
 死の覚悟を決めた瀬名(有村架純)。そこにやって来るものの、瀬名を翻意させられない家康(松本潤)。瀬名の覚悟を受け入れ介錯を引き受ける大鼠(松本まりか)。――何とはなしに、宝塚の名作『ベルサイユのばら』の牢獄の場面におけるマリー・アントワネット&フェルゼン&ロザリーを思い出し。
 有村架純の瀬名の、いろいろなことを飲み込んでそれでも浮かべる微笑み、その微笑みがどこかさみしそうなところ、好きでした。
 話には……となってしまったけれども、有村架純の瀬名は一段と美しかった――顔も目もキラキラと光り輝いていた。
 有村架純の瀬名が魅力的。