藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
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文楽
江東区文化センターホールにて本日開幕。第一部、第二部、第三部を通しで観ましたが、部によってがらっと色合いが異なり、文楽の多彩な魅力が味わえて。休憩中にはロビーで深川めし弁当の販売もあり、地元の味も楽しめて。今年すばらしい文楽の舞台をたくさん観たのに全然書けておりませんが(気力と体力が要る)、年末までには必ず書きます!
じわじわ心にしみてくる『和田合戦女舞鶴』<市若初陣の段>。今ここに生きて在ることへの感謝の念が湧き上がってくる『近頃河原の達引』<堀川猿廻しの段>。
(5月20日16時半の部、シアター1010)
(5月20日16時半の部、シアター1010)
13日16時の部観劇。興奮したのかその夜、よく寝られませんでした(笑)。
16時の部観劇(有楽町よみうりホール)。紹介映像、ナビゲーター(本日はいとうせいこう)と文楽技芸員(本日は吉田簑紫郎)による解説と、アニメーション映像を背景美術に用いた『曾根崎心中』<天神森の段>という構成。いつもは顔を出している人形遣いの主遣いが頭巾をかぶっていたり、照明も通常より暗めの印象。<天神森の段>だけなのでいきなりクライマックスの心中場面からの上演なれど、三味線が鳴り、「この世の名残、夜も名残。」と太夫が語り出すと一気に引き込まれ――詐欺に遭って友人からお金を騙し取られた上に、騙りの汚名まで着せられ辱められたことが、主人公徳兵衛が恋人のお初と心中に至る大きな要因となる物語だった……と改めて。文楽では通常ないカーテンコールがあり、死んだ徳兵衛とお初(いずれも人形ですが)が甦って手を振ったりして去っていくのが新鮮。村野藤吾設計の読売会館の7階にある有楽町よみうりホールが実に村野藤吾らしい曲線、曲面にあふれていて、かつ非常に昭和な空間だったのもおもしろく。公演は29日まで。
「令和6年2月文楽公演」第二部と第三部の初日を観て日本青年館ホールから出てきたら、……え、ここ本当に東京? とびっくりするくらいの雪景色になっていました。そんな日に観た文楽もまた心に沁み。
……あのとき、私は自分の音を聴いたのだと思う。そして、……自分、まだまだだ、と思った。
(5月29日14時の部、国立劇場小劇場)
(5月29日14時の部、国立劇場小劇場)
初代国立劇場建て替えのため、都内のさまざまな劇場で公演を行うことになった文楽。本日、北千住の「シアター1010」(「1010」で「センジュ」と読みます)にて、12月文楽鑑賞教室『団子売』『解説 文楽の魅力』『傾城恋飛脚』(14時の部、Aプロ)と12月文楽公演『源平布引滝』(17時の部)をダブルヘッダー。客席に傾斜がついているので、後ろの方の座席に座っても非常に見えやすく。楽しい『団子売』を観て団子を食べたくなった人への心遣いか、劇場を出たところにあるカフェで団子を売っていたのもいい感じ。『解説 文楽の魅力』がためになり、『傾城恋飛脚』と『源平布引滝』を堪能、……よくまあこんなに体内に涙があるな……と自分で自分にびっくり(笑)。最近文楽を観ると本当にほっとして心が落ち着くので、年の瀬にその奥深い魅力にふれられてよかった! 公演は明日14日まで。
割といろいろなことが本当にどうでもよくなるくらい、[四段目]<寺子屋の段>の「いろは送り」の鶴澤清治の三味線がすごかった……。そこに至るまでにも言えることなのだけれども、人間一人一人のあれやこれやに細かくツッコミを入れつつ優しさで包み込む、そんな音色が、米粒一粒一粒をパラパラに仕上げつつ卵でふわっとコーティングした、名人の作る炒飯を思わせた。しばらく余韻に浸っていたいので今宵はこれにて。
(15時の部、国立劇場小劇場)
(15時の部、国立劇場小劇場)
近松門左衛門の魂を近くに感じた。
(9月19日19時の部、国立劇場小劇場)
(9月19日19時の部、国立劇場小劇場)
5月公演より続く完全通し上演の[三段目][四段目]を観劇。
[三段目]<桜丸切腹の段>(太夫:竹本千歳太夫/三味線:豊澤富助)。鎖国を終えた日本が西洋文化をいかに受容したかを映し出す、明治以降昭和の第二次世界大戦終戦の時期までの近代建築がとりわけ好きである。そして、以前は、……よくぞ空襲を乗り越えて……とか、……高度成長期やバブル時代を生き延びてきたんだな……と思って眺めていたのが、十年ほど前から、……この建物は、私の命を越えて永らえていくんだな……と感じるようになった。この切を聞いていて、それと同じ感慨を作品に対して抱いた――偶然だけれども、この演目が前回完全通し上演されたのは、私が生まれた昭和47年(1972年)である。
[四段目]<天拝山の段>のラストでは、雷神となった菅丞相(菅原道真)の人形がシャーッと火花を吹いたりして、大スペクタクルでした。
(10時45分の部、国立劇場小劇場)
[三段目]<桜丸切腹の段>(太夫:竹本千歳太夫/三味線:豊澤富助)。鎖国を終えた日本が西洋文化をいかに受容したかを映し出す、明治以降昭和の第二次世界大戦終戦の時期までの近代建築がとりわけ好きである。そして、以前は、……よくぞ空襲を乗り越えて……とか、……高度成長期やバブル時代を生き延びてきたんだな……と思って眺めていたのが、十年ほど前から、……この建物は、私の命を越えて永らえていくんだな……と感じるようになった。この切を聞いていて、それと同じ感慨を作品に対して抱いた――偶然だけれども、この演目が前回完全通し上演されたのは、私が生まれた昭和47年(1972年)である。
[四段目]<天拝山の段>のラストでは、雷神となった菅丞相(菅原道真)の人形がシャーッと火花を吹いたりして、大スペクタクルでした。
(10時45分の部、国立劇場小劇場)