道頓堀ダイブについて調べていたところ、今月初めに実にタイムリーに発売されたばかりのこの本を発見し速攻読了。著者の井上章一国際日本文化研究センター所長は自身幼少期からの阪神タイガースファン。「六甲おろし」を作詞したのは関西人ではなく関東人だった(「六甲おろし」が正式タイトルでないことを初めて知った)という話に始まり、戦後関西の野球史、そのチームを持っていた関西私鉄史、優勝パレード史、そしてダイビング史(大阪城の濠への飛び込みもあったそうな)が綴られ、最終的には道頓堀ダイブによる水都大阪のいささかの復権かというあたりにまで話が及び、切り口のユニークな大阪論という感じで非常におもしろく。そもそも、宝塚歌劇の発展史とも絡む、関西モダニズムや鉄道、百貨店開発史といった分野が好きなのですが(『戦前大阪の鉄道とデパート 都市交通による沿線培養の研究』という400ページ超えの本を少しずつ楽しく読んでいる最中)、『阪神ファンとダイビング』に近鉄と南海の話も出てきたので、前から気になっていた『近鉄・南海の経営史研究 兼業をめぐって』という本も購入、読むのが楽しみ。
 藤川球児監督の優勝監督インタビューで涙(斎藤雅樹投手のファンだったんですね。同志)。
 阪神が優勝して、今宵も大阪ミナミの戎橋付近で道頓堀川に飛び込む人々が出たそうですが。戎橋近く、巨大なカニの看板のある「かに道楽 道頓堀本店」の前に「竹本座跡」の石碑があり、ここが人形浄瑠璃文楽の歴史の始まった場所。そんなことも考えながら、テレビを通じて阪神ファンの熱狂的応援を観ていたり。
 途中から観てました。新庄剛志監督のかけていた、サインの流れる電光サングラスはどこで売っているんでしょうか(笑)。リバン・モイネロ投手は左に加えて右でも投げるし、おもしろさもパ・リーグの勝ち。明日仕事で観られないのが残念。
 今宵の阪神・佐藤輝明選手のホームランのあざやかさには心を射抜かれた!
 今夜のサヨナラ勝ちは涙が出そうにうれしかった。
 というわけで、今シーズンは阪神タイガースの試合を中心に野球を楽しんでおり。日本野球の応援歌と歌舞伎の大向う(掛け声)に共通する効果に気づいたり、発見や学ぶこと多し。
 6人の投手リレーで“完全試合”〜。ということで、終盤ハラハラ見守っており。守備もよかった。井端ジャパンの今後も楽しみ!
 今年の3月以前、私は、大谷翔平選手がプレイしているところを観たことがなかった。二刀流で活躍しているのは知っていた。野球選手として非常に才能にあふれた人が、みんなに応援されて、キラキラ活躍している、そんな風に思っていた。
 WBCをきっかけに彼が所属するロサンゼルス・エンゼルスの試合を観るようになって、見方が変わった。二刀流をやることについてけっこうみんなにいろいろ言われていたんですね。知らなかった。それでさらに興味をもった。
 彼が二刀流で登場した開幕戦、途中で他の用事に入ってしまったのだけれども、後で負けたと知って、その晩、自分でも自分にびっくりするくらい、おいおい泣いた。悔しくて。……人のことだとこんなに悔しがれるのかなあ、自分、と思った。その後、ちょっとしてから気づいた。――悔しいって認めると悔しすぎるから、悔しくないということにしていただけじゃん、私!
 最初のうちは、「大谷くんが投げると、ボールに命が吹き込まれるのね……」てなことを考えていた。そこから、「翔平、ガンバ!」となるまでにそう時間はかからなかった。そして、いつしか思った。
 大谷翔平になりたい。
 投げてもみたいし打ってもみたい。でも、何だか一番心ひかれたのは、走塁である。ああいう風にしなやかに走ってみたい。何食わぬ顔でスライディングして、盗塁したい。
 それは、私にとって、過去との和解を意味していた。何だかずっと、女に生まれてきた意味を考えてきた。正直、つらかった。私の時代の就職活動なんてね(以下略)。でも、試行錯誤の果て、よき同時代人たちの励ましもあり、女に生まれてきた人生をちゃんとENJOYできるようになった今だからこそ、心に抱ける願望なのだと思った。

 朝、起きると、テレビのスイッチを入れて、「エンゼルス、ガンバ!」から一日がスタートする、そんな日々が始まった。私は夜型人間である。万全の体調で客席に座るためにも8〜9時間は睡眠時間を確保すべく、11時くらいまでは寝ている。それが、野球応援生活が始まって、ちょっと朝型になった(野球シーズンが終わったら夜型に戻ったけれども)。
 最初のうちこそ、……どうしよう、野球が楽しすぎて他のことができない……と思った。でも、自分は、好きなものを観ることでこれまでもやってきた人間だから、と。そうして、可能な限り、大リーガーたちが繰り広げるドラマを日々観ていた。球種が全然わからないので、それにまつわるドラマの方は全然わからないのだけれども、さっきこういうことがあったからこういうことになって……みたいな流れはわかる。すると。……あれ、何だか、オペラとか戯曲とか、前よりわかるようになった? と――無論、大リーグ効果だけではないと思うけれども。それと、アメリカで作られたミュージカル作品には野球が出てくることも多いし、球場ごとに応援のちょっとした出し物やダンスもあったりして、野球を通じてアメリカ文化を吸収することができた。
 大リーガーたちの姿を通じて、闘う姿勢も学んだように思う。耐える姿勢も学んだように思う。前よりオープンな感じになったということなのか、雰囲気が変わったと言われることも何度かあった。

 一年を通じて応援していたから、今年ロサンゼルス・エンゼルスにいた選手には愛着が生まれて、全員のことを書けなかったのが心苦しいのだけれども、なかでも、マイク・トラウト選手がいなかったら、ここまで野球に熱中していなかったかもしれない。
 WBCの最後の何試合かを観る前、私は、出場している人のうち、栗山英樹監督とダルビッシュ有と大谷翔平と佐々木朗希しか知らなかった。「トラウトってすごいの?」と決勝の後に夫に聞いたところ、半ばキレ気味にいかにすごいか滾々と説明された(夫が大リーグのニュースをけっこう追いかけていることも、今年初めて知った)。そして、エンゼルスの試合を観るうち、……素敵な野球選手だな、と思った。日本にはこういう伝統芸能があるんですよと、何だか彼に伝えたいなと思った(日本の伝統芸能に興味があるかわからないけれども)。今年、彼が途中でケガをしてしまったのが残念である。
 そうして、私は、日本時間3月22日のWBC決勝のあのマジカルな瞬間の背景を学んでいった。実のところ、生で観ていたときは、とにかく最後まで観なくてはの一心しかなかった。後で映像で観て、……ああ、これは、芸術の場でもたまさか訪れる、あのマジカルな一体感の瞬間なのだな、とわかった。そうしたマジカルな瞬間は、劇場で、いかにして起こり得るのか――例えば、戯曲や演出上、どう表現し得るのか。そんな意識が今の自分にある。

 好きな試合はいっぱいあるけれども、録画で観た4月27日の対アスレチックス戦は忘れられない。高校2年か3年のとき、体育の授業でソフトボールをして、学校の球場近くに友達と腰を下ろしていた日のことを思い出した。他愛のない思い出だけれども、何だか無邪気な日の自分がそこにはいる。そんな自分を今年、どこか取り返した思い。そして、6月中旬の対レンジャーズ4連戦。どうしたら相手より1点でも多く点を取って勝つという目標に近づき得るのかを察知して瞬時に身体で表現することに長けている人なんだな……と、改めて圧倒された――ライブ・パフォーマンスの場でも大切な能力だと思った。
 好きなホームランもいっぱいあるけれども、第41号ホームランには、そのころ、自分が若干体調を崩していたというのもあって、心励まされたな……と。それと、第43号満塁ホームランには、打ったときから「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」みたいになっており。

 ロサンゼルス・ドジャーズに行っても、無理しないでくださいね。大谷翔平選手、ガンバ!
 胴上げされるヴィジョンが浮かんで、――それが最後の一球になった。
 1点差に詰め寄られたとき、結末がわかった――違う競技でそういう試合を観たことがあった。勝つとわかるんじゃない。失敗しないことがわかる試合。
 ……もっと上に行きたい……という思いに心を動かされた。
 テレビ朝日で映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』が放送されます!
 ロサンゼルス・ドジャースのファンにもなりました!